財務省は10月21日、9月の貿易統計(速報)を発表した。輸出額は10兆9,723億円で前年同月比16.7%増、13カ月連続の増加だった。ロイター通信がまとめた市場予想の中央値20.1%増には届かず、数量指数の伸びは1.9%にとどまった。
輸入額は11兆5,088億円で18.9%増。差し引きの貿易収支は5,365億円の赤字で、5カ月連続の赤字となった。赤字幅は8月の1兆1,056億円からほぼ半分に縮んだが、前年同月比では93.2%拡大している。
同日発表の2026年度上半期(4〜9月)の貿易収支は2兆8,184億円の赤字だった。半期ベースで11期連続の赤字である。
9月の主要数値
| 項目 | 9月の値 | 前年同月比 | 市場予想(ロイター調査) | 8月の値 |
|---|---|---|---|---|
| 輸出額 | 10兆9,723億円 | +16.7% | +20.1% | +19.3% |
| 輸出数量指数 | 105.9 | +1.9% | — | +2.5% |
| 輸入額 | 11兆5,088億円 | +18.9% | +19.6% | +28.0% |
| 輸入数量指数 | 103.0 | −1.6% | — | +2.7% |
| 貿易収支 | −5,365億円 | 赤字93.2%拡大 | −1,810億円 | −1兆1,056億円 |
| 季節調整済み輸出額 | 10兆7,561億円 | 前月比−1.1% | — | 前月比+0.3% |
| 季節調整済み輸入額 | 11兆4,601億円 | 前月比−1.9% | — | 前月比+1.7% |
| 税関長公示レート平均 | 157円43銭/ドル | 6.7%の円安 | — | — |
金額16.7%増、数量1.9%増
輸出額の伸びと数量の伸びには14.8ポイントの開きがある。金額を数量で割ると、輸出の価格は前年同月比で約14.5%上昇した計算になる。この間の円相場は1ドル=147円61銭から157円43銭へ6.7%の円安だった。円安分を除いたドル建ての価格上昇は約7.4%となる。いずれも本誌の試算である。
9月の輸出入:金額・数量・価格(前年同月比、%)
読み方:輸出額の伸び16.7%のうち、数量の伸びは1.9%にとどまる。価格の伸びは金額÷数量から本誌が試算した近似値。出所:財務省「令和8年9月分貿易統計(速報)の概要」、本誌計算。
輸入側は数量が1.6%減り、金額が18.9%増えた。輸入価格は約20.8%上昇した計算になる。輸出価格の上昇率14.5%を6ポイント余り上回る。輸出より輸入の値上がりが大きい状態が、赤字が続く背景にある。
品目別:半導体と自動車、原油
| 区分 | 品目 | 金額の前年同月比 | 全体への寄与度 |
|---|---|---|---|
| 輸出 | 半導体等電子部品 | +49.4% | +3.3ポイント |
| 輸出 | 自動車 | +15.1% | +2.4ポイント |
| 輸出 | 半導体等製造装置 | +43.9% | +1.8ポイント |
| 輸入 | 原粗油 | +51.1% | +3.9ポイント |
| 輸入 | 半導体等電子部品 | +51.4% | +2.1ポイント |
| 輸入 | 液化天然ガス | +39.2% | +1.7ポイント |
輸出の上位3品目の寄与度は合計7.5ポイント。全体の伸び16.7%の約45%を占める。輸出額全体は9月としては1979年以降で最高、全月では過去3番目の水準である。
輸入では原粗油が51.1%増え、寄与度3.9ポイントで最大の押し上げ要因となった。液化天然ガスも39.2%増。中東情勢を受けた原油高が輸入額を押し上げた。原油市況の足元の動きは同日の原油の記事にある。
地域別:対米輸入は原油が8倍超
| 地域 | 輸出額 | 輸出の前年同月比 | 輸入の前年同月比 | 収支 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | 1兆9,630億円 | +22.9% | +44.8% | +3,928億円(黒字23.4%縮小) |
| アジア | 6兆736億円 | +17.5% | +22.2% | +471億円(黒字80.2%縮小) |
| うち中国 | 1兆7,300億円 | +8.6% | +16.4% | 赤字 |
| EU | 9,854億円 | +10.5% | −0.1% | −1,409億円 |
対米輸出は22.9%増で、自動車が31.0%増、寄与度7.1ポイントだった。医薬品は157.7%増、半導体等製造装置は93.1%増。
対米輸入は44.8%増と、輸出の伸びのほぼ2倍だった。原粗油の対米輸入は819.7%増で、寄与度は31.4ポイント。液化天然ガスは541.6%増。原油の調達先が米国に広がった結果、対米黒字は3,928億円と前年同月比23.4%縮小し、10カ月連続の減少となった。
上半期の累計
2026年度上半期の輸出額は63兆4,570億円で18.4%増、輸入額は66兆2,754億円で20.4%増だった。いずれも半期として過去最高。輸出数量は2.3%増、輸入数量は1.1%減である。税関長公示レートの平均は159円54銭で、前年同期より9.2%の円安だった。
上半期の輸出の伸び18.4%に対し、数量の伸びは2.3%。9月単月と同じく、伸びの大半は価格と円安によるものだった。
財務省の説明
「輸出は半導体等電子部品、自動車等が増加し、対前年同月比+16.7%となった。また、輸入は原粗油、半導体等電子部品等が増加し、+18.9%となった」
財務省「令和8年9月分貿易統計(速報)の概要」
市場の反応
発表時刻の8時50分、ドル円は158円29銭前後だった。発表後の5分間の値幅は158円28銭〜158円31銭で、反応は限られた。9時20分には158円39銭まで円安が進んだ。15時30分時点は158円12銭前後。数値はヤフー・ファイナンスの5分足と15分足で、取引時間中の値である。
日経平均は前日比545円82銭高の6万4,621円24銭で取引を終えた。日中は上げ幅が一時1,329円に達した。輸出関連ではトヨタ自動車(7203)が3,094円で引け、前日比8円安だった。半導体関連は東京エレクトロン(8035)が0.7%高、アドバンテスト(6857)が1.7%高。株価はヤフー・ファイナンスの終値である。ドル円の見通しは同日のドル円の記事、半導体各社の決算日程は半導体決算プレビューにある。
今後の日程
- 10月29〜30日:日銀金融政策決定会合、経済・物価情勢の展望(展望リポート)
- 11月中旬(予定):7〜9月期の国内総生産(GDP)1次速報(内閣府)。純輸出の寄与が焦点になる
- 11月下旬(予定):10月分の貿易統計(速報)
貿易統計の公表日程は財務省税関のウェブサイトで確認できる。為替取引の仕組みはFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 9月分の輸出入額、数量指数、品目別・地域別の内訳、税関長公示レート/財務省(令和8年9月分貿易統計速報の概要)
- 8月分の輸出入額と季節調整値/財務省(令和8年8月分貿易統計速報の概要)
- 2026年度上半期の輸出入額と数量指数/財務省(令和8年度上半期分貿易統計速報の概要)
- 市場予想(輸出20.1%増、輸入19.6%増、収支1,810億円の赤字)/ロイター通信(Investing.com掲載)
- ドル円と個別株の値動き/ヤフー・ファイナンス
- 公表予定/財務省税関、日本銀行
データ基準日:2026年10月21日。貿易統計は速報値で、確報で改定される場合がある。輸出入の価格上昇率(輸出約14.5%、輸入約20.8%、ドル建て輸出約7.4%)は金額と数量指数の伸びから本誌が試算した近似値で、財務省の価格指数とは一致しない。ドル円は取引時間中の値で、終値ではない。株価は10月21日の東京市場の終値。日程のうち「上旬」「中旬」「下旬」と記したものは公表機関の予定にもとづく目安で、変更される場合がある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















