中東情勢の急激な悪化を受け、原油価格は当面高水準で推移するとの見方が市場で支配的になっている。世界の石油供給の20%以上が通過するホルムズ海峡を巡る供給途絶リスクが急速に高まっており、トレーダーは地政学プレミアムを織り込む動きを強めている。イスラエルと米国によるイラン関連標的への攻撃を契機に湾岸地域全体で攻撃の応酬が発生し、イラン国営メディアはイスラム革命防衛隊(IRGC)高官の発言として「海峡は閉鎖された」と報道。通過を試みる船舶には攻撃の可能性があると警告した。
主要金融機関が原油見通しを一斉に上方修正
地政学リスクの高まりを受け、ウォール街の主要金融機関が相次いで原油価格予想を引き上げている。各社の最新見通しは以下の通り。
- ゴールドマン・サックス:2026年第2四半期のブレント原油平均価格予想を10ドル引き上げ1バレル76ドル、WTIは9ドル引き上げ71ドルへ修正。2026年第4四半期予想もブレント66ドル、WTI 62ドルへ上方修正
- UBS:ブレントの第1四半期平均を71ドル(3月時点では約80ドル)、2026年通年では従来予想から10ドル引き上げて72ドルと予測
- JPモルガン:ホルムズ海峡の閉鎖が続けば、イラクとクウェートからの原油供給が数日以内に停止する可能性を指摘し、最大日量470万バレルの供給喪失を試算
- ANZ:2026年第1四半期のブレント平均予想を90ドル、LNG価格予想を100万BTU当たり17ドルへ引き上げ
特にANZの90ドル予想は市場の中でも強気側に位置し、海峡封鎖が長期化するシナリオを織り込んでいる。
ホルムズ海峡封鎖の現実味と供給インパクト
ホルムズ海峡はサウジアラビア、UAE、クウェート、イラク、イランからの原油・LNG輸出の大動脈であり、ここが完全に封鎖されれば世界エネルギー市場に深刻な衝撃が走る。JPモルガンの試算する日量470万バレルの供給喪失は、世界の石油需要の約5%に相当する規模であり、戦略石油備蓄(SPR)の放出だけでは十分にカバーできない水準だ。
もっとも、水曜日の原油価格上昇は約1%にとどまり、過去数日と比べて上昇ペースは鈍化した。背景には、トランプ大統領が米海軍によるホルムズ海峡通過船舶の護衛を示唆したことがある。これにより、市場は完全封鎖シナリオを最悪ケースと位置付けつつも、米国の軍事的プレゼンスによる一定の供給確保を期待している。
日本の投資家への市場インパクト
日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡情勢は日本経済とマーケットに直接的な影響を及ぼす。原油高が長期化すれば、以下のセクターで明暗が分かれる展開が想定される。
- 恩恵を受ける銘柄:INPEX(1605)、石油資源開発(1662)、ENEOSホールディングス(5020)、出光興産(5019)、コスモエネルギーHD(5021)など資源・石油元売り株
- 逆風となる銘柄:航空(ANA、JAL)、海運、電力会社、化学、紙パルプなど燃料コスト上昇に弱いセクター
- 為替への影響:資源高は貿易赤字拡大を通じて円安要因となる一方、リスクオフによる円買いも交錯し、ドル円のボラティリティが高まる可能性
また、原油高はインフレ再加速要因となり、日銀の追加利上げ観測を強める可能性もある。長期金利の上昇は銀行株(三菱UFJ、三井住友FGなど)の追い風となる一方、グロース株や不動産株には逆風となりやすい。
今後の注目ポイント
投資家が注視すべきは、(1)ホルムズ海峡における実際の船舶通航状況、(2)米軍の護衛オペレーションの実施有無、(3)イラン側の追加報復の有無、(4)OPECプラスの増産対応、の4点だ。とりわけサウジアラビアやUAEが東西パイプライン経由で海峡を迂回した輸出をどこまで増やせるかが、供給逼迫の度合いを左右する。
短期的には地政学プレミアムが剥落するリバーサルにも警戒が必要で、休戦・停戦観測が出れば原油価格は急落するリスクもある。ポジションは過度に偏らせず、エネルギー関連ETF(1671など)や個別資源株でヘッジを取りつつ機動的に対応することが重要だ。














