11月6日金曜、午前9時の台北。取引開始の合図から数分で、台湾加権指数は前日終値から3,737.67ポイント下の3万7,837.05まで沈んだ。台湾の中央通信社(CNA)は、これを取引時間中としては市場の歴史で最大の下げ幅だと伝えた。その1時間前、時計が台北より1時間進んだソウルでは、取引開始から3分で韓国総合株価指数(KOSPI)の売買が20分間止まっていた。
引けまでに、台北は下げの半分を取り戻した。終値は3万9,701.64、1,873.08ポイント安の4.51%安である。ソウルは戻りきれず、KOSPIは6.02%安の5,059.69で引けた。この日、東京の日経平均は5.96%安。3つの市場を同じ朝に襲ったのは、前夜の米国でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が12.2%崩れたという一つの知らせだった。
11月6日、アジアの朝の時刻表(日本時間)
読み方:時刻はすべて日本時間。台北の現地時刻は日本より1時間遅い(台北9時=日本10時)。出所:中央通信社、The Korea Times、ヘラルド経済、Yahoo Finance。
午前9時、TSMCに値幅制限の売り
台北の寄り付きは3万8,915.76。最初の数分で、台湾積体電路製造(TSMC)は値幅制限いっぱいの10%安、2,020台湾ドルまで売られた。CNAによれば、株価の下げ幅としては同社の取引時間中の記録である。TSMCは台湾証券取引所の時価総額の4割超を占める。この1銘柄が値幅制限まで売られれば、指数の下げが歴史的な幅になるのは避けられない。
売りはTSMCにとどまらなかった。聯発科技(メディアテック)、台達電子(デルタ電子)、南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)、日月光(ASE)が、いずれも取引中にストップ安を付けた。アップルの組み立てで知られる鴻海精密工業も、一時は9%を超えて下げた。指数は一時、過去240営業日の平均線(3万8,827前後)を割り込んでいる。
為替も揺れた。台湾ドルは取引中に1ドル=33.040台湾ドルまで売られ、節目の33を割り込んだ。ところが台北の終値は32.768で、前日の32.876からむしろ台湾ドル高で引けている。同じ日に公表された10月末の外貨準備は5,964億3,700万ドルで、6,000億ドルを割った。中央銀行が10月にドルを売って相場の振れを抑えたためだとCNAは伝えている。
午前9時3分、ソウルの20分間
ソウルのKOSPIは5,263.26と、2.24%安で始まった。売りは止まらず、午前9時3分ごろに第1段階のサーキットブレーカーが発動して、売買は20分間止まった。韓国紙ヘラルド経済は、KOSPIのサーキットブレーカーは今年11回目で、前回は10月15日だったと報じている。再開後の午前9時34分には、プログラム売買を一時止める売りのサイドカーが2日続けて発動した。
指数は一時4,911.28まで下げた。下落率は8.78%、5,000割れは2月6日以来、約9カ月ぶりである。主役はメモリーの2社だった。SKハイニックスは終値で10.44%安の113万2,000ウォン、サムスン電子は6.35%安の18万8,700ウォン。SBSによれば、外国人投資家はこの日KOSPIで2兆7,690億ウォンを売り越し、6営業日続けて売り越した。そのうち1兆9,205億ウォンがSKハイニックス1銘柄である。
KOSPIは前日にも5.28%下げており、2日間の下げは10.98%に達した。週間では11.71%安。SBSは、6月22日に付けた高値9,114.55からの下げが44.5%になったと伝えている。新興市場のKOSDAQも5.03%安の644.27で引けた。
巻き戻し:火曜の投票から金曜の朝まで
話は11月3日の米中間選挙にさかのぼる。民主党が上下両院を押さえたことで、市場ではAI規制の強化とデータセンター投資の減速を心配する声が広がった。この経緯と、それが本当に株を売る理由になるのかは中間選挙の記事で検証している。
台北の加権指数は10月30日の終値4万5,211.83から、5営業日続けて下げた。週間の下げは5,510.19ポイント、12.19%である。台湾証券取引所の集計では、外国人投資家はこの1週間で毎日売り越し、合計は約5,244億台湾ドルに上った。6日だけで911億9,000万台湾ドルである。CNAによれば、10月の外国人の資金引き揚げは280億ドルと過去最大だった。
決定打は5日の米国市場だった。SOXは1日で12.2%下げ、ナスダック総合指数は5.5%安で引けた。その数時間後に東京、ソウル、台北が順に開いた。最初に開いた東京の日経平均は3,643円安の5万7,434円77銭で引け、終値で弱気相場の入り口に立った。その一日の勝敗は東京市場の番付にまとめた。
11月6日の終値と取引中の最大下落率(前日終値比)
読み方:取引中の下げは台北が最も深く、終値の下げは台北が最も浅い。ソウルと東京は安値からの戻りが小さかった。出所:台湾証券取引所、中央通信社、SBS、Yahoo Finance。日経平均の率は本誌計算。
止めに入った人々
台北では、卓榮泰(たく・えいたい)行政院長が金融監督管理委員会に市場を注意深く見守り、安定のために柔軟に動くよう指示した。台湾の経済の基礎条件は健全だ、とも述べている。金融監督管理委員会は同日、市場の支援策を話し合う会合を開くとし、株価を買い支える国家金融安定基金の委員会も臨時会合を開く可能性があるとCNAは報じた。本稿執筆時点で、基金の出動は伝えられていない。
ソウルでは、経済政策の司令塔である李亨一(イ・ヒョンイル)氏が「基礎条件から外れた動きには、関係機関が速やかに対応する用意がある」と語った。韓国経済の基礎条件は「かつてなく堅固だ」とも言い切っている。SBSは、当局が証券会社に対し、信用取引の担保維持比率140%の規制を3カ月間免除したとも伝えた。ただしこの措置を報じたのはSBSだけで、本誌は当局の発表文を確認できていない。
市場の側に立った人々の動きは、数字に表れている。台湾では外国人が売った日に、投資信託は266億6,000万台湾ドルを買い越した。韓国では外国人の売りを、機関投資家の1兆7,041億ウォンと個人の6,010億ウォンの買い越しが受け止めた。売ったのは海外の資金で、買ったのは国内の資金だった。
引けの風景:台北は戻し、東京とソウルは戻せなかった
この日の物語の山場は、寄り付きではなく引けにある。台北の加権指数は安値から1,864ポイント戻し、終値ベースの下げ幅はCNAの集計で歴代4番目にとどまった。下落率の4.51%は、2025年4月7日に付けた9.7%の記録には遠く及ばない。TSMCも値幅制限から戻し、4.69%安の2,135台湾ドルで引けた。
ソウルの戻りは小さかった。KOSPIは安値4,911.28から148ポイント戻しただけで、6.02%安で引けた。東京も同じだ。日経平均の日中安値は5万6,745円81銭で、終値はそこから689円上にすぎない。下落率で比べれば、この日いちばん傷が深かったのはソウル、次が東京で、取引中に歴史的な下げを記録した台北は、終値では3市場のうち最も浅かった。
なぜ台北だけが戻せたのかについて、確かな答えはまだない。国内の投資信託の買い、政府による安定化の発言、台湾ドルの持ち直しが重なった時間帯だったことは記録として残る。だが、どれが決め手だったかを示す一次情報は見当たらない。
エピローグ:今夜22時30分から
週末を前に、残された問いは3つある。1つ目は、米国の半導体株が今夜止まるかどうかだ。日本時間6日22時30分に米10月雇用統計が出て、23時30分に米国市場が開く。前夜のSOXの12.2%安に続きがあれば、月曜のアジアはもう一度同じ朝を迎える。
2つ目は、台湾の国家金融安定基金が動くかどうかだ。委員会の結論は、本稿執筆時点で出ていない。3つ目は、韓国の外国人売りが7営業日目に入るかどうかである。SKハイニックス1銘柄に2兆ウォン近い売りが集中した構図は、日本のメモリー・半導体製造装置株とも地続きだ。東京の値がさ半導体株を誰が売り、誰が買ったのかは、週明けの東京市場の記事で改めて追う。
主な参照
- 台湾加権指数の取引中の下げ幅(過去最大)、TSMCの値幅制限、ストップ安銘柄/中央通信社(Focus Taiwan)
- 台湾加権指数の終値、歴代4番目の下げ幅、個別株の終値、外国人の売り越し額、売買代金、安定化策の会合/中央通信社(Focus Taiwan)
- 台湾ドルの相場(取引中の高値33.040、終値32.768)/中央通信社(Focus Taiwan)
- 10月末の外貨準備、10月の外国人の資金引き揚げ/中央通信社(Focus Taiwan)
- 台湾加権指数の日中の推移と週間の終値/台湾証券取引所
- 外国人・投資信託の売買動向(11月2〜6日)/台湾証券取引所
- 卓榮泰行政院長の指示/Taipei Times
- KOSPIの終値と寄り付き、サーキットブレーカーの時刻、李亨一氏の発言/The Korea Times
- KOSPIの日中安値、個別株の終値、投資主体別の売買、高値からの下落率、担保維持比率の免除/SBS
- サーキットブレーカーの年間回数、サイドカーの時刻、5,000割れの時期/ヘラルド経済
- 日経平均、SOX、ナスダック総合指数の終値と日中安値/Yahoo Finance
データ基準日:2026年11月6日の台北・ソウル・東京市場の終値。台北は現地13時30分(日本時間14時30分)、ソウルと東京は15時30分の終値である。取引中の安値や時刻は報道と台湾証券取引所の集計による。日経平均の下落率は前日終値6万1,077円90銭から本誌が計算した。米国の指数は11月5日の終値。台湾加権指数の終値の下げ幅順位は中央通信社の集計による。韓国の投資主体別の売買、担保維持比率の免除、高値からの下落率はSBSのみが報じたもので、本誌は当局の発表文を確認できていない。サーキットブレーカーの年間回数はヘラルド経済の報道による。為替は各市場の公表時刻の値で、日本時間の同時刻の値ではない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















