11月6日、欧州株寄り付き1時間の番付を発表する。東の横綱はASMLホールディング、前日に6.55%売られた半導体製造装置の大手が、ロンドン10時半には2.75%高まで戻した。西の序二段に落ちたのは防衛電子機器のヘンゾルト、5.35%安。アジアで半導体株が総崩れになった同じ朝、欧州では半導体が買い戻され、売られたのは医薬品、保険、高級ブランド、そして防衛だった。
指数は負け越しである。STOXX欧州600指数は寄り付き直後の8時5分(ロンドン時間、以下同じ)に1.52%安、1時間後の9時5分には1.18%安まで下げ幅を縮めた。ところが10時29分には1.67%安の643.93と、朝の安値を割り込んでいる。寄り付きで売られ、いったん戻し、もう一度売られた。この1時間半の形が、今日の欧州を要約している。
欧州の主な銘柄、寄り付きから1時間半の騰落率(11月5日終値比)
読み方:上の5銘柄はいずれも前日に6.5〜9.3%下げた半導体・通信機器株で、今朝は買い戻された。下は医薬品、高級ブランド、情報サービス、防衛。値はロンドン10時29分〜10時45分の取引中の値。出所:Yahoo Finance、本誌計算。
番付表——寄り付き1時間半の勝敗
| 番付 | 銘柄 | 5日の値動き | 9時台 | 10時半前後 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | ASML(オランダ) | −6.55% | +2.46% | +2.75%(1,284.4ユーロ) | ◎ |
| 西の横綱 | ノキア(フィンランド) | −7.51% | +1.84% | +3.04%(7.054ユーロ) | ◎ |
| 東の大関 | インフィニオン(ドイツ) | −8.54% | +1.92% | +2.60%(47.145ユーロ) | ○ |
| 西の大関 | STマイクロ(仏伊) | −9.34% | +1.09% | +2.17%(37.87ユーロ) | ○ |
| — | (以下、負け側) | ||||
| 東の幕下 | アストラゼネカ(英国) | — | −2.92% | −3.67% | × |
| 西の幕下 | RELX(英国) | — | −2.59% | −3.93% | × |
| 東の序二段 | ラインメタル(ドイツ) | −16.14% | −3.33% | −4.82%(800.9ユーロ) | × |
| 西の序二段 | ヘンゾルト(ドイツ) | +1.40% | −4.48% | −5.35%(78.16ユーロ) | × |
表の要点は一つだ。前日に最も深く売られた銘柄ほど、今朝は上位にいる。ASML、インフィニオン、STマイクロはいずれも5日に6.5〜9.3%下げ、今朝は2〜3%戻した。逆に前日に下げなかった、あるいは上げていた銘柄が今朝は売られている。土俵の上で起きているのは、半導体の見直し買いというより、前日の勝ち組と負け組の入れ替えである。
東の横綱・ASML——◎
寄り付きは前日終値と同じ1,250.0ユーロ。8時10分に1,233.0ユーロ、1.36%安の安値を付けてから切り返し、取引中の高値は1,295.6ユーロだった。アジアの朝を見ていた投資家には意外な一番だろう。同じ日、台北ではTSMCが一時値幅制限まで売られ、東京では値がさ半導体株が指数を押し下げていた。
判定は◎。ただし取組の中身は「前日の負けを少し取り返した」にとどまる。5日の6.55%安に対し、戻したのは3%足らずである。同じオランダの半導体装置株BEセミコンダクター(+1.99%)とASMインターナショナル(+1.79%)も同じ形で、業界全体の買い戻しとみるのが自然だ。アジアの総崩れの経緯は東京市場の番付に書いた。
西の序二段・ヘンゾルトとラインメタル——×
防衛株は2日続けて土俵際に追い込まれた。ラインメタルは5日に16.14%安の841.5ユーロで引け、今朝も10時20分に798.0ユーロまで下げて、800ユーロを一時割り込んだ。前日に1.40%高と踏みとどまったヘンゾルトは、今朝になって5.35%安と崩れた。イタリアのレオナルド、英国のBAEシステムズ、スウェーデンのサーブも2%台の下げである。
今朝の防衛株安を説明する新しい発表は、本誌が確認した範囲では見当たらない。前日のラインメタル急落の流れが、遅れて同業に波及した形だ。判定は×。前日の経緯は5日の欧州株の記事で扱っている。
負け越した守りの銘柄——△から×
今朝の番付で目を引くのは、普段なら下げ相場の避難先になる銘柄の負けっぷりだ。英国の医薬品アストラゼネカが3.67%安、ドイツの再保険大手ミュンヘン再保険が3.67%安、アリアンツが3.03%安。スイスのネスレは2.73%安、ノバルティスは2.76%安、英国のユニリーバは2.91%安だった。高級ブランドではケリングが3.33%安、LVMHが3.21%安である。
情報サービスのRELX(3.93%安)とエクスペリアン(3.67%安)、ITサービスのキャップジェミニ(3.60%安)、ソフトウエアのSAP(2.60%安)も負け側にいる。AIに仕事を奪われる側とみなされてきた銘柄群であり、AI相場の巻き戻しで買い戻されてもおかしくない顔ぶれだ。それが売られているということは、今朝の売りは銘柄を選んでいない。持っているものを売っている。判定は守りの銘柄が△、情報サービスとソフトウエアは×とする。
銀行と資源株の下げは小さかった。HSBCは0.58%安、ウニクレディトは0.61%安、BNPパリバは0.11%高。資源ではBHPが0.78%安、アングロ・アメリカンは0.14%安にとどまる。英国の利上げを前に買われた銀行株の経緯は前日の記事のとおりで、今朝もその貯金が効いている。
殊勲賞・ドイツの鉱工業生産
寄り付き前に、明るい数字が一つあった。ドイツ連邦統計局によると、9月の鉱工業生産は前月比0.7%増、前年同月比0.4%増だった。自動車が17.1%増と押し上げた。前日発表の9月の製造業受注も前月比4.4%増である。ただし8月の生産は2.0%増から1.0%増へ下方修正され、7〜9月期では前期比0.4%減だった。株価を支えるほどの材料にはならず、DAXは10時29分に2.08%安と、この朝の安値圏にある。殊勲賞は数字に贈るが、相場への効き目は△だ。
技能賞・米国株を抜いたSTOXX600
年初来の成績で、欧州が米国を抜いた。Yahoo Financeの終値で計算すると、STOXX欧州600指数は5日終値で年初来10.47%高、S&P500種株価指数は7.42%高だった。4日時点ではSTOXX600が10.90%高、S&P500が12.32%高で、米国が上だった。一晩で順位が入れ替わったことになる。今朝の下げを入れても、STOXX600は10時29分時点で年初来8.63%高と、まだ米国の上にいる。
技能で勝ったと言うのは、欧州が上げて抜いたのではなく、米国が下げて抜かれたからだ。S&P500は5日に4.36%安、ナスダック総合指数は5.52%安だった。AIに賭けていない分だけ傷が浅い、という消極的な勝ち方である。
主要指数の星取表
| 指数 | 5日終値 | 8時5分ごろ | 9時5分ごろ | 10時29分 |
|---|---|---|---|---|
| STOXX欧州600 | 654.87 | −1.52% | −1.18% | 643.93(−1.67%) |
| ユーロ・ストックス50 | 6,231.54 | −1.34% | −0.89% | 6,142.09(−1.44%) |
| ドイツDAX | 26,325.01 | −1.67% | −1.36% | 25,776.65(−2.08%) |
| フランスCAC40 | 8,205.37 | −1.42% | −1.07% | 8,073.00(−1.61%) |
| 英FTSE100 | 10,782.70 | −1.46% | −1.43% | 10,575.26(−1.92%) |
来場所の注目取組
この先の勝敗を決めるのは、欧州の材料ではない。日本時間22時30分(ロンドン13時30分)の米10月雇用統計と、その1時間後の米国市場の寄り付きである。半導体株の買い戻しが米国でも続くなら、今朝のASMLの白星は本物になる。続かなければ、欧州の半導体株は2日連続の黒星に戻るだろう。その夜の米国株の勝敗は、寄り付き1時間後の記事で追う。
個別では、ラインメタルが800ユーロを終値で守れるかが目先の土俵際だ。ロシア事業をめぐる報道で5日に17.88%下げたコカ・コーラHBCは、ロシア政府から事業の変更について通知は受けていないと説明し、今朝は小幅に反発している。週明けは米国でAI関連企業の決算が続く。
主な参照
- 欧州主要指数と個別株の5分足、5日終値、年初来の騰落率の計算元/Yahoo Finance
- 欧州の寄り付きの指数(8時8分)、コカ・コーラHBCの説明、IAGの決算/ハーグリーブス・ランズダウン(シェアキャスト)
- ロンドン市場の寄り付き(FTSE100、8時30分)/ハーグリーブス・ランズダウン(シェアキャスト)
- ドイツの9月鉱工業生産/ドイツ連邦統計局
- ドイツの9月製造業受注/ドイツ連邦統計局
- 米国株の5日終値(S&P500、ナスダック総合指数)/Yahoo Finance
データ基準日:2026年11月6日 ロンドン10時29分〜10時45分(日本時間19時29分〜19時45分)。指数と個別株の当日の値はすべて取引中の値で、終値ではない。Yahoo Financeのデータは約15分遅れで配信される。騰落率は11月5日の終値比で、本誌が計算した。年初来の騰落率は2025年末の終値を基準とする価格指数の値で、配当は含まない。業種別の騰落率は確認できなかったため掲載していない。今朝の防衛株安について、本誌は新たな発表を確認できていない。コカ・コーラHBCの説明は報道にもとづく。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















