金曜の寄り付きで投げた向きは、10時半からの戻りを見て歯噛みしただろう。11月6日の前場、日経平均株価は10時25分に5万6,745円81銭まで売られ、前日比の下げ幅は4,332円に達した。そこから1,100円あまり戻して、前引けは3,219円29銭安の5万7,858円61銭。筆者が見ているのは、この前引けの値そのものより、そのすぐ上にある5万7,893円という線である。
日経平均の終値の最高値は6月25日の7万2,366円34銭だ。その2割安が5万7,893円07銭になる。一般に、高値から2割下げた相場は「弱気相場」と呼ばれる。前引けはこの線を34円46銭下回った。大引けがこの下で終われば、終値ベースで最高値から2割安の相場に入ったことになる。
テープ:寄りから1時間半で4,300円
値動きを順に追う。寄り付きは703円55銭安の6万374円35銭で、これが前場の高値になった。5日の安値は6万786円だったから、6日は窓を開けて始まったことになる。9時20分には5万7,100円台、10時25分に安値を付けた。高値と安値の差は3,628円54銭。1日の値幅としては、正直、ここ数年の東京でも数えるほどしかない大きさだ。
戻りを主導したのは、売りの主役だった半導体株である。アドバンテストは前場安値2万4,655円(前日比16.38%安)から、前引けは2万8,135円(同4.58%安)まで戻した。東京エレクトロンも14.29%安から3.23%安へ下げ幅を縮めた。一方でTOPIX(東証株価指数)は10時の3,726.09に対し前引けが3,726.50と、ほとんど戻っていない。日経平均の戻りは値がさ半導体の買い戻しで作られたもので、市場全体の買いではない。前場の数字は寄り付き1時間のまとめに並べてある。
需給:投げと買い戻しが同じ日に出た
投げの規模を示す材料は前夜からそろっていた。5日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は12.25%安、ナスダック総合指数は5.52%安。恐怖指数と呼ばれるVIXは16.61から28.18へ跳ねた。大阪取引所の夜間取引で、日経平均先物12月物は5万7,400円で引けている。寄り付きの6万374円は先物より3,000円近く高く、寄ったあとに現物が先物にさや寄せした形だ。
買い戻しのきっかけも海の向こうから来た。米ナスダック100指数先物(12月物)は、日本時間9時の0.48%安から11時30分時点で1.30%高に切り返した。韓国総合株価指数(KOSPI)は10時に8.43%安まで売られたあと、11時30分時点で4.43%安まで戻した。アジアの半導体株が同じ時間帯にそろって買い戻されている。踏み上げとまでは言えないが、売り方の利食いが一斉に出たとみるのが自然だ。
問題は、半導体以外が戻っていないことだ。10時から前引けにかけて、トヨタ自動車は2.97%安から6.06%安へ、中外製薬は3.31%安から6.34%安へ、三井物産は6.33%安から8.97%安へと下げを深めた。持ち高を落とすための売りが、値がさ株から内需株や景気敏感株へ移ってきている。投げが一巡したと判断するには、TOPIXの戻りを見たい。
水準の地図
日経平均の水準の地図(円)
読み方:200日線のすぐ下に半値戻し(61,715円)がある。赤の太線が終値の最高値(6月25日、72,366円)から2割安の水準で、前引けはそのわずか下にある。点線の56,233円を終値で割れば本誌の戻り予想は撤回する。押し・戻しは3月31日の終値安値51,064円から6月25日の終値高値までの上げ幅で計算。出所:共同通信、Yahoo Financeの日足から本誌計算。
上から見ていく。6万1,937円は200日移動平均(5日まで)で、3月31日の終値安値5万1,063円72銭から6月の最高値までの上げ幅の半値戻し、6万1,715円もほぼ同じ場所にある。その下の6万786円は5日の安値で、6日の寄り付きで開けた窓の上限だ。窓は埋められやすいと言われるが、前引けからそこまでは2,900円以上ある。
5万9,201円は上げ幅の61.8%押しの水準である。前場の戻りの次の目安はここになる。5万7,893円が弱気相場の線で、前引けはそのすぐ下だ。下は前場安値の5万6,746円。4月13日の高値5万6,766円と4月14日の安値5万7,010円の間に空いていた窓を、6日の安値でちょうど埋めた。その下は4月13日の安値5万6,233円、さらに4月8日に空けた窓(5万3,916〜5万4,380円)の上限、5万4,380円と続く。
25日線から11%下:過去の17回
下げの速さも数字にしておく。前引けの値を入れて計算した25日移動平均は6万5,282円で、日経平均はそこから11.4%下にある。14日間のRSI(相対力指数)は26.7と、売られすぎの目安とされる30を下回った。2000年以降の日足で、終値が25日移動平均を10%以上下回った日を拾うと、30営業日以上の間隔を空けて17回ある。
| 主な局面 | 終値 | 25日線からの乖離 | 5営業日後 | 20営業日後 | その後20日間の最安値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2008年10月6日(金融危機) | 10,473円 | −12.6% | −9.8% | −9.1% | −31.6% |
| 2011年3月15日(東日本大震災) | 8,605円 | −18.1% | +9.8% | +12.0% | 0.0% |
| 2020年3月9日(コロナ危機) | 19,699円 | −13.0% | −13.7% | −3.8% | −16.0% |
| 2024年8月5日(円キャリー巻き戻し) | 31,458円 | −20.4% | +15.2% | +23.0% | 0.0% |
| 2025年4月7日(米関税ショック) | 31,137円 | −15.1% | +9.1% | +18.6% | 0.0% |
| 17回の中央値 | — | — | +4.6% | +6.3% | −0.2% |
| 上昇した回数 | — | — | 17回中14回 | 17回中13回 | — |
ここまで売られた相場は、多くの場合1カ月以内に戻している。20営業日後に上げていたのは17回中13回、中央値は6.3%高だ。ただし例外の2回が重い。2008年10月はそこからさらに31.6%、2020年3月は16.0%下げた。どちらも、金融システムや実体経済そのものが壊れかけた局面である。今回の売りの材料はAI投資の先行きと米国の政治で、銀行の連鎖破綻や世界的な外出制限とは性質が違う、と筆者はみている。
なお、6日の乖離は前引けの値で計算しており、終値ではない。自分の持ち株が高値から何%下げ、元の値に戻るには何%の上昇が要るのかは、パーセント計算ツールで確かめておくとよい。2割下げた株が元に戻るには25%の上げが要る。
筆者の見立て:短期は戻り、ただし戻り売りの相場
筆者は、1〜2週間の時間軸で日経平均は5万9,200円から6万800円まで戻ると見る。強気といっても、ここから上は戻り売りが待つ相場であり、新たな上昇相場の始まりとは考えていない。根拠は3つある。
- 売られすぎの度合い。25日線から11.4%下、RSIは26.7。過去17回の8割近くは20営業日後に上げていた。
- 売りの主役の反転。前場安値からアドバンテストは14%、東京エレクトロンは13%戻した。同じ時間帯に米ナスダック100先物とKOSPIも切り返している。
- 前場安値で4月の窓を埋めた。5万6,746円は4月13日の高値とほぼ重なり、下げの目安を一度達成した形だ。
上値を6万800円までと見るのは、5日の安値6万786円が6日に開けた窓の上限で、そこまで戻れば前日に買った向きのやれやれ売りが出るからだ。さらに上の6万1,700〜6万1,900円台には半値戻しと200日線が重なる。ここを抜けるには、AI関連の売りの材料そのものが消える必要がある。
逆になったら:5万6,233円で降りる
この見立ては、終値で4月13日の安値5万6,233円を割り込んだ時点で撤回する。前場安値を割って4月の安値まで抜ければ、6日の戻りは一時的な買い戻しに過ぎなかったことになる。その場合の次の目安は、4月8日に空けた窓の上限5万4,380円だ。そこまで行けば最高値からの下げは約25%になる。
もう一つの撤回条件は、今夜の米国市場でSOXが5日の安値8,997を割り込むことだ。東京の半導体株の戻りは、米国の半導体株が下げ止まるという前提に立っている。前提が崩れれば、週明けの東京は6日の安値を試しにいく公算が大きい。
監視リスト
| 時刻(日本時間) | 対象 | 見る点 |
|---|---|---|
| 6日15時30分 | 日経平均の大引け | 5万7,893円の上で終われるか。下なら終値で最高値から2割安 |
| 6日15時30分 | TOPIX | 前引け3,726.50から戻るか。戻らなければ投げは内需株に移っている |
| 6日後場 | アドバンテスト(6857) | 前引け2万8,135円。5日終値2万9,485円を回復できるか |
| 6日22時30分 | 米10月雇用統計 | 市場予想は6万5,000人増(ファクトセット集計)。強ければ利上げ観測で株に逆風 |
| 6日夜 | SOX | 5日安値8,997を守れるか |
| 7日早朝 | 大阪の日経平均先物(夜間取引) | 5万6,233円を割らずに引けるか |
5日の東京の下げはアドバンテスト1銘柄で説明できる相場だったが、6日はTOPIXも5%超下げた。下げの性格が変わった日に、指数が2割安の線をはさんで週末を迎える。大引けの位置が、来週の東京の地合いを決める。
主な参照
- 6月25日の終値の最高値7万2,366円34銭/共同通信(秋田魁新報)
- 3月31日の終値5万1,063円72銭/共同通信(熊本日日新聞)
- 6日の寄り付き/ザイFX!
- 6日10時と前引けの日経平均・TOPIX/共同通信(琉球新報)、日本経済新聞
- 日経平均の日足・5分足、個別銘柄、先物、アジア株/Yahoo Finance
データ基準日:2026年11月6日の東京市場の前引け(11時30分)。6日の乖離率とRSIは前引けの値で計算しており、終値で計算すると変わる。移動平均、RSI、押し・戻しの水準、過去の局面の騰落率は、Yahoo Financeの日足から本誌が計算したもので、算出方法やデータ提供元により差が出る。米国株価指数先物とアジア株は取引中の値で、終値ではない。米国株価指数とVIXは11月5日の米国市場の終値。見立ての価格帯と撤回条件は本誌の見方であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















