東京が文化の日で休んでいるあいだに、ドル円は静かに一段上へ動いた。3日のニューヨーク市場で一時158.764円まで上げ、10月14日以来の高値を付けた。終値は158.69円。始値157.94円から75銭の上げで、ほぼ高値引けである。休場明けの東京は、9月下旬から何度も跳ね返されてきた200日移動平均線、158.60円付近のすぐ上から始まることになる。
筆者の見立てを先に言う。今週のドル円は、159円台を一度は試しにいくとみている。ただし159円から上は、当局の口先と10月高値の売りが重なる。159円台に乗せても深追いはせず、158円割れまでの押し目を拾う、という構えだ。逆になったら、の線は後で明示する。
休場日のテープ:ドル高ではなく円安だった
3日のテープを振り返る。MINKABU PRESSの集計で、ドル円の四本値は始値157.94円、高値158.77円、安値157.75円、終値158.69円だった。安値と高値の差は1円02銭。休場日にしては値幅が出た。
日本時間0時の米9月求人件数(JOLTS)は750万件と、8月の720万件(上方修正後)から増えた。ドル円はニューヨーク時間の後半にかけて上値を追った。ただ、正直に言えば、この上げはドル高だけでは説明がつかない。同じ日のユーロドルは1.1193ドルで引け、ドルはユーロに対してほとんど動いていない。一方でユーロ円は177.62円まで上げた。MINKABU PRESSのNY概況も、上げの主因は円安で、円を売る直接の材料は見当たらないと書いている。
材料なき円安は、需給で動いていることが多い。東京の参加者が不在の日に、海外勢が円売りの持ち高を積み増した可能性がある。そうであれば、休場明けの東京で国内の輸出企業のドル売りがどの水準で出るかが、最初の試金石になる。
需給の解剖:金利差は上値を追う理由を与えていない
米財務省の公表で、3日の米10年債利回りは4.95%、2年債は4.61%。2日はそれぞれ4.91%と4.59%だった。動いたのは4bpと2bpで、金利差がドル円を押し上げたと言える幅ではない。10月28日の10年債は5.05%で、そこから見ればむしろ低い。
政策の構図も、片側に傾いてはいない。米連邦準備制度理事会(FRB)は10月28日、政策金利を3.75〜4.00%に据え置いたが、2人が利上げを主張して反対した。日銀は10月30日、政策金利を1.25%に据え置き、高田創審議委員が1.5%への利上げを提案して反対した。8対1である。日米とも、次の一手は利上げという議論が中で起きている。どちらの利上げ論が先に現実になるかで、金利差は動く。
当局はどうか。片山財務相は2日午前、「無秩序な動きや過度に投機的な動きがあれば行動する」と述べた。同じ日には、為替相場は以前より改善しているとの認識も示している。158円台後半は、当局がまだ「改善している」と言える水準であり、介入の射程に入ったとは筆者はみていない。ただ、159円台後半から160円にかけては話が違う。
水準の地図:158.60円を終値で守れるか
ドル円の水準の地図(円)
読み方:オレンジは筆者が判断に使う水準、青は現在値、灰色は参考水準。出所:MINKABU PRESS、外為どっとコム総合研究所、筆者。
地図を読む。いちばん大事なのは158.60円付近の200日移動平均線だ。9月下旬から、ここで何度も上値を抑えられてきた。3日の終値158.69円は、わずかにその上にある。日柄で言えば、1日上に抜けただけでは抜けたとは言えない。東京とロンドンを通過して、4日の終値でもこの上にいられるかを見たい。
上は、10月14日に付けた10月の高値158.949円、そして心理的な節目の159円。ここを抜けると、筆者の想定では159円台半ばまでは戻り売りの壁が薄い。下は、3日の安値圏157.75円が最初の支え。10月の値幅は156.078〜158.949円の2円87銭で、月間の値幅が3円以内に収まったのは2022年2月以来だった。この箱の上限を試す局面が、今まさに来ている。
筆者の見立て:159円台は試す、ただし追わない
強気に寄せる根拠は3つある。第一に、200日線の上で引けたこと。数週間抑えられてきた線の上で引けた事実は軽くない。第二に、米国の雇用指標が崩れていないこと。JOLTSで求人は増え、FRBの中には利上げ論が残る。第三に、円を買う材料が見当たらないこと。日銀は10月に据え置き、次の会合は12月17〜18日と先だ。
今週の確率で言えば、159円台に一度は乗せる確率を55%、158円割れで終わる週になる確率を30%、どちらでもなく158円台で行き来する確率を15%と置く。中期、つまり12月の日米の会合までの1カ月半では、157〜160円の範囲を想定する。160円は当局が動きやすい水準で、ここを素直に抜けるとはみていない。
中間選挙の開票は、東京時間の4日午前から本格化する。外為どっとコム総合研究所の黒川健氏は、共和党が上下両院を維持すれば159円台の突破を試し、民主党が上下両院を制すれば157円台前半への下押しリスクがあると整理している。下院だけ民主党が取る「ねじれ」なら、158円割れまで押される局面を想定するという。筆者は、開票速報の一喜一憂で出た値幅は、6日の米雇用統計までに半分は戻るとみている。選挙の値幅に乗るより、その戻りを取りにいくほうが分がいい。
逆になったら:157.70円の終値割れで撤退
この見立てが外れる形ははっきりしている。終値で157.70円を割り込めば、3日の安値を下に抜け、200日線の上抜けは「だまし」だったことになる。その場合は押し目買いの構えを捨て、10月の安値方向、156円台への戻りを視野に入れる。もう一つは、159円台後半で当局の発言が「注視」から一段強い言葉に変わった場合だ。そのときは上を追うのをやめ、利食いを優先する。
明日からの監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 11月4日 午前〜 | 米中間選挙の開票 | 上下両院の勢力。159円か157円台か |
| 11月4日 9時〜15時30分 | 休場明けの東京市場 | 158.60円の上を東京時間で保てるか、国内勢のドル売り水準 |
| 11月4日 22時15分 | 米10月ADP雇用統計 | 雇用統計の前哨戦 |
| 11月5日 0時 | 米10月ISM非製造業景況指数 | 景気の底堅さ |
| 11月6日 22時30分 | 米10月雇用統計 | 今週最大の材料。弱ければドル安シナリオ |
| 12月10日 4時 | FOMCの結果発表 | FRBが利上げを再開するか |
| 12月17〜18日 | 日銀の金融政策決定会合 | 高田委員以外にも利上げ提案が広がるか |
10月の値幅の狭さについては11月2日のドル円見通しで、原油安でも円高にならなかった理由は11月3日の記事で書いた。今回はその箱の上限を試す局面の続編である。海外FX業者の選び方はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 11月3日の四本値(ドル円・ユーロドル・ユーロ円)/MINKABU PRESS(4日7時15分)
- NY為替概況(200日線158.60円付近、円安主導)/MINKABU PRESS(4日6時40分)
- 高値158.764円、中間選挙の筋書き別の見通し(黒川健氏)/外為どっとコム総合研究所(4日7時19分)
- 10月の値幅(156.078〜158.949円)/外為どっとコム総合研究所(2日)
- 9月の求人件数(JOLTS)/米労働省
- 米国債利回り/米財務省
- FOMCの声明(10月28日)/米連邦準備制度理事会
- 金融政策決定(10月30日)/日本銀行、決定会合の日程/日本銀行
- 片山財務相の発言(2日9時57分ごろ)/MINKABU PRESS(行動する)、MINKABU PRESS(改善している)
データ基準日:2026年11月3日のニューヨーク市場の終値(日本時間4日早朝)。四本値と200日移動平均線の水準は情報ベンダーの集計で、ベンダーにより数銭の差が出る。米国債利回りは米財務省の公表値(引け)。中間選挙の開票結果は本稿執筆時点で判明しておらず、反映していない。確率、想定レンジ、撤退の水準は筆者の見立てであり、将来を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















