30日の米国市場は、取引開始から1時間で半導体株の売りが一段と広がった。米東部時間10時36分(日本時間23時36分)時点で、インテルは前日比27.57%安の66.69ドル、レディットは25.71%安、コインベース・グローバルは14.28%安で取引されている。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は6.24%安、ナスダック総合指数は2.39%安だが、ダウ工業株30種平均は0.60%安にとどまる。売られているのは指数全体ではなく、決算で見通しを下げた銘柄と、その取引先や同業である。
まず下の1枚を見てほしい:1時間後の騰落率
取引開始1時間後の前日比(米東部時間10時36分)
読み方:上はエネルギーと決算で見通しを上げた銘柄、下は半導体・サーバーと暗号資産の関連株。前日終値比、取引時間中の値で終値ではない。出所:Yahoo Finance。
図の下半分に、半導体とその周辺が並ぶ。アームは10.22%安、AMDとクアルコムはそろって9.47%安、デル・テクノロジーズは9.19%安である。いずれも30日に自社の決算を出していない。前日の米国市場の取引終了後にインテルが示した10〜12月期の見通しが、パソコンとサーバー向けの部品を扱う同業と取引先にまで波及した形だ。エヌビディアは3.38%安で、SOX全体の6.24%安より下げは小さい。
上半分は逆の動きである。エクソンモービルは1.62%高、シェブロンは1.83%高だった。米国産WTI原油の先物は米東部時間10時24分に1バレル104.50ドルと、前日の清算値102.00ドルから2.5%上げている。電気自動車のリビアン・オートモーティブは4.89%高で、29日に発表した7〜9月期の決算で通期の見通しを引き上げたことが買われた。ダウ平均の下げが小さいのは、ハイテク株の比重が低く、エネルギー株が支えているためだ。
寄り付きの後、誰が買い戻され、誰がさらに売られたか
寄り付き値から1時間後までの値動き
読み方:プラスは寄り付きの後に買い戻された銘柄、マイナスは寄り付きの後も売られ続けた銘柄。寄り付き値と米東部時間10時36分の値の比較。出所:Yahoo Finance、本誌計算。
同じ1時間でも、寄り付き値からの動きは銘柄で分かれた。アマゾン・ドット・コムは寄り付きで前日比4.62%安の232.53ドルを付けた後、10時36分には238.54ドルまで戻り、下げ幅は2.15%に縮んだ。寄り付き値から2.58%の戻りである。デルも寄り付きの11.88%安から9.19%安まで戻した。前日の時間外取引から売られてきた銘柄の一部には、押し目買いが入っている。
反対に、寄り付き後に下げを広げたのが暗号資産の関連株とクアルコムである。コインベースは寄り付きの7.70%安から14.28%安へ、寄り付き値から7.13%下げた。クアルコムも寄り付きから3.99%安い。インテルの日中安値は64.12ドルで、前日終値の92.07ドルから一時30.36%安まで売られた。寄り付きで出尽くしたとは言えない銘柄が、まだ残っている。
インテル:売上高は21%増、それでも見通しで4分の1を失う
インテルの売上高:7〜9月期の実績と10〜12月期の見通し(億ドル)
読み方:見通しの上限160億ドルでも7〜9月期の165億ドルに届かない。伸びているのはデータセンターで、落ちているのはパソコン向けである。出所:インテルの決算発表(2026年10月29日)。
インテルの発表によると、7〜9月期の売上高は165億ドルで前年同期比21%増、データセンター・AI部門は73億ドルで78%増えた。売られた理由は10〜12月期の見通しにある。売上高は150億〜160億ドルで、中央値の155億ドルでも7〜9月期を約6%下回る。調整後の売上総利益率は38.0%、調整後の1株利益は0.25ドルにとどまる。パソコン向けの部門(CCPG)は7〜9月期に81億ドルと5%減っており、この落ち込みが同業のAMDやクアルコム、パソコン大手のデルの売りにつながった。
決算の中身と論点は、本誌のインテル急落とAI株の売りを検証した記事で詳しく扱った。ここで押さえておきたいのは、取引開始前の気配から1時間後までに、インテルの下げがさらに2ポイントほど広がった点である。悪材料を織り込み終えたとみる買い手は、少なくともこの1時間では多くなかった。
レディット:検索からの流入減を会社が自ら開示
レディットの7〜9月期は、数字だけ見れば好調だった。米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、売上高は8億9,500万ドルで53%増、10〜12月期の売上高見通しは10億〜10億3,000万ドルである。株価を4分の1押し下げたのは、利用者の数についての説明だ。1日あたりの利用者数(DAUq)は1億3,030万人で12%増えたが、米国に限ると5,070万人で2%減った。
会社は株主への書簡で、7〜9月期に検索エンジンからの流入が「大きく減った」と書いた。10月は週平均で100万件を超える流入が減っており、この傾向が続けば、10〜12月期の利用者数は現在の約1億3,000万人から1割台前半の減少になりうるという。会社は今後、ログインした利用者を中心とする形に移る方針も示し、10〜12月期に米国以外の一部の市場で試験を始める。広告の効果は高まる半面、ログインせずに訪れる利用者を手放す判断である。
コインベース:決算より、バイナンスの流出事件
コインベースは29日に7〜9月期の決算を出した。SECへの提出資料によると、純利益は7億1,870万ドルと前年同期の4億3,260万ドルを上回ったが、取引手数料による収入は5億9,020万ドルで、前年同期の約10億ドルから大きく減った。利益を押し上げたのは保有する暗号資産の評価益で、本業の取引は細っている。
寄り付き後の下げを広げたのは、決算よりも暗号資産交換所バイナンスからの巨額流出である。ブロックチェーン分析会社TRMラボは30日、流出額を約63億6,000万ドルと推計し、北朝鮮のハッカー集団の犯行と高い確度で判断した。ビットコインは日本時間23時40分に7万6,975ドル前後(クラーケン)で推移している。ビットコインを大量に保有するストラテジーも9.80%安だ。事件の詳細と日本の保有者への影響は、ビットコインの8万ドル割れを検証した記事でも扱っている。
日本の投資家への含み:週明けの東京は下げから始まる計算
日本関連の値動き(日本時間30日23時15〜24分)
読み方:先物は6万2,450円で、30日の日経平均終値6万3,290円11銭との比較。ADRは前日終値比。いずれも取引時間中の値。出所:Yahoo Finance、本誌計算。
東京市場は30日の取引を終えている。日経平均株価の終値は6万3,290円11銭だった。その後、米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の円建て日経平均先物は、米東部時間10時24分に6万2,450円で取引されている。終値より約840円、1.3%低い。米国の店頭市場で取引されるアドバンテストの米国預託証券(ADR)は米東部時間10時15分に7.84%安、ソフトバンクグループのADRは10時20分に7.36%安だった。ADRは取引が少なく値が飛びやすいが、方向ははっきりしている。
週明け11月2日の東京は、半導体の製造装置と検査装置、AI投資の関連株から売りが出やすい。30日の東京では日経平均が1,369円下げた一方で、値上がり銘柄が値下がり銘柄を上回った。指数を動かす一部の大型株に売りが集中する構図が、週明けも続くかが焦点になる。3日は文化の日で東京は休場となり、同じ日に米中間選挙とAMDの決算が重なる。日程は来週の決算と過去8回の値動きをまとめた記事にある。
きょうの引けまでのシナリオ
米国債の利回りは下がっている。10年国債の利回りは米東部時間10時19分に4.933%で、前日の4.989%から低下した。株から債券へ資金が逃げる、典型的な「質への逃避」の動きである。この地合いで、引けまでの道筋を本誌は次のように見る。
| シナリオ | 確率(本誌の見立て) | 何が起きるか | 見分ける目安 |
|---|---|---|---|
| 売りの持続 | 45% | SOXが6〜8%安で引け、ナスダックも2%超の下げで週を終える | インテルが日中安値64.12ドルを割り込む |
| 下げ幅の縮小 | 40% | アマゾンに続いて大型株に押し目買いが入り、ナスダックの下げが1%台に縮む | SOXが寄り付き値10,855を上回って推移する |
| 投げ売り | 15% | 暗号資産の関連株の売りが広がり、S&P500が2%超の下げに | ビットコインが7.5万ドルを割り込む |
「投げ売り」の確率を低めに置いたのは、債券が買われ、ダウ平均の下げが限られているからだ。売りの中心は決算で見通しを下げた銘柄とその周辺にとどまっており、市場全体から資金が一斉に逃げる局面にはまだ至っていない。ただし、週末を前に持ち高を減らす売りが午後に出やすい点には注意したい。
個人投資家のチェックリスト
- 持っている銘柄の下げが「自社の決算」によるものか、「同業の決算からの連想」によるものかを分けて考える。連想による売りは、自社の決算で反転することがある。
- CME日経平均先物は週明けの東京の目安になるが、2日朝までの米国の引けと為替で変わる。月曜朝に改めて確認する。
- インテルの64.12ドル、SOXの10,855、ビットコインの7.5万ドルの3つを、今夜の目安として控えておく。
主な参照
- 株価・指数・先物・利回りの値(米東部時間30日10時15〜36分)/Yahoo Finance
- インテルの7〜9月期決算と10〜12月期見通し(2026年10月29日)/インテル
- レディットの7〜9月期決算・株主への書簡(2026年10月29日)/SEC提出資料
- コインベースの7〜9月期決算(2026年10月29日)/SEC提出資料(四半期報告書)
- バイナンスからの流出の推計と犯行の特定(2026年10月30日)/TRMラボ
- ビットコインの価格(日本時間30日23時40分)/クラーケン
- リビアンの7〜9月期決算と通期見通しの引き上げ(2026年10月29日)/SEC提出資料
データ基準日:2026年10月30日(米東部時間10時36分、日本時間23時36分)。米国株と指数の値は取引時間中のものであり、終値ではない。WTI原油と日経平均先物は米東部時間10時24分、米10年国債利回りは10時19分、アドバンテストとソフトバンクグループのADRはそれぞれ10時15分と10時20分の値で、時刻が異なる。前日比は29日の終値との比較で、WTIは29日の清算値との比較である。日経平均先物とADRから計算した週明けの東京の水準は目安であり、2日の寄り付きを保証しない。クアルコム、アーム、デルの下げについて、本稿執筆時点で株価に影響する会社からの発表は確認できず、インテルの見通しからの連想とする説明は本誌の見方である。シナリオの確率は本誌の見立てである。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。
















