ユーロ円が176円を割り込んだ。日本時間22日19時59分時点で175.91円と、取引時間中の水準である。この日の始値177.50円から1.58円、0.89%の下落だ。欧州中央銀行(ECB)の参照レートでは、終値ベースで176円を下回ったのは2025年10月22日の175.92円が最後である。まず下の数字を見てほしい。
結論から書く。今回の下げはユーロ安ではなく、円高である。円はユーロだけでなく、ドル、ポンド、豪ドルに対しても同じ幅で上がった。来週29日にECB、29〜30日に日本銀行の会合が控える。それまでの本誌の基本シナリオは174.5〜178円のレンジ内の下値試しで、20日平均の177.82円を終値で回復すればこの見方を撤回する。
7月の187円から、10月の176円へ
ユーロ円の推移(2026年7月1日〜10月22日)
読み方:7月末の高値から下げが続き、10月7日の安値で一度止まったが、22日にこれを下回った。10月21日までは各営業日のECB参照レート、22日は19時59分の取引時間中の値(Yahoo!ファイナンス)。
ユーロ円は7月30日の186.99円(参照レート)を境に、ほぼ一方向に下げてきた。10月7日の176.85円で一度止まり、16日には177.82円まで戻した。しかし戻りはそこまでで、22日の下げで10月7日の安値を下回った。年初来の高値は4月17日の187.73円で、そこからの下落率は6.3%になる。
移動平均はすべて現在値の上にある。20日平均が177.82円、50日平均が180.57円、200日平均が183.57円である。短い平均ほど低く、長い平均ほど高い。教科書どおりの下落局面の並びで、このかたちが崩れるまでは戻り売りが優勢と見るのが自然だ。
円が全面高、ユーロの責任は1割
主要な円相場の変化率(22日、始値比)
読み方:高金利の通貨ほど円に対して大きく下げ、同じく安全資産とされるスイスフランの下げは小さい。ユーロドルはほとんど動いておらず、ユーロ円の下げは円高が主因である。出所:Yahoo!ファイナンス(日本時間22日19時59分時点、始値比、本誌計算)。
同じ時刻の主要な円相場を並べると、理由ははっきりする。豪ドル円が0.99%安、ユーロ円が0.89%安、ポンド円が0.86%安、ドル円が0.76%安だった。下落幅がほぼそろっている。一方、ユーロドルは0.07%安と、ほとんど動いていない。ユーロ円の下げを分解すると、ユーロドルの寄与が約0.07%、ドル円の寄与が約0.76%で、9割前後は円の側の要因である。
スイスフラン円の下げは0.34%と、他の半分以下にとどまった。円とスイスフランは、ともに危機時に買われやすい通貨である。両者の差が小さく、高金利通貨ほど大きく下げた。これは安全資産への逃避の典型的なかたちだ。ロイターは、円が1カ月で最大の上昇に向かったと伝え、背景に株安、原油高、中東の戦闘、AI投資の採算への疑問を挙げた。大和キャピタル・マーケッツのクリス・シクルーナ氏は、AI不安、原油、フランスの3つを挙げている。東京市場で日経平均が1,713円下げた経緯はこちらにまとめた。
節目の地図:次の下値は174円台
ユーロ円の節目(円)
読み方:現在値は全ての移動平均の下にある。20日平均の177.82円を終値で回復すれば、本誌の下値試しの見方を撤回する。出所:ECB参照レート(Frankfurter経由)から本誌計算、現在値はYahoo!ファイナンス。
176円を割った先に、近い節目は多くない。参照レートの記録をさかのぼると、2025年10月中旬に175.7円台、9月29日に174.38円がある。175円台は1年前に通過した水準で、売り買いの記憶が薄い。下げが続けば、174円台前半までは目立った支えがないと考えておきたい。
上値の節目は20日平均の177.82円である。10月16日の戻り高値177.82円とほぼ同じ水準で、ここを終値で回復すれば、10月7日から続く下値の切り下がりがいったん止まる。50日平均の180.57円は、その先の大きな壁だ。
来週は日銀とECBが同じ週に並ぶ
ユーロ円を動かす日程(日本時間)
読み方:日銀とECBの結果が1日違いで出る。いずれも据え置きが予想され、焦点は次の利上げの時期の示し方にある。出所:日本銀行、欧州中央銀行の公表日程、ロイター。発表時刻は目安。
ロイターによると、日銀は来週の会合で政策金利を1.25%に据え置くと予想されている。市場は2027年末までに2%前後まで段階的に上がると見る。ECBも中銀預金金利2.5%で据え置きが予想される一方、年末までの利上げはほぼ完全に織り込まれている。つまり、両中銀とも「据え置き、ただし先は利上げ」という同じ型である。
金利の面では、両中銀の政策金利の差は1.25%あり、ユーロ円の買い手は今も金利差を受け取る側にいる。だが、リスク回避の局面では金利差の魅力は後回しになる。ユーロ円を左右するのは、会合の結果より先に株式市場と原油の値動きだ。日銀の判断材料になる9月の全国消費者物価指数(CPI)の見どころはこの記事で扱っている。
シナリオ:日銀・ECBまでの1週間
| シナリオ | 本誌の確率 | ユーロ円の目安 | 引き金 |
|---|---|---|---|
| A:レンジ内の下値試し | 45% | 175〜178円で上下し、会合を待つ | 株安・原油高が一服し、材料待ちに入る |
| B:円高が続く | 35% | 174.38円(2025年9月29日の水準)を試す | 株安の連鎖、中東情勢の悪化、日銀の利上げ前倒し観測 |
| C:反発 | 20% | 177.82円(20日平均)を回復し、179円台へ | 米テック株の切り返し、ECBの利上げ示唆の強まり |
Aを中心に置いたのは、両中銀の会合を前に大きな賭けを避ける参加者が多いと見るためである。Bの確率を35%と高めにしたのは、下げの原因が円の側にあり、株式市場の動揺が収まらない限り続きやすいからだ。Cは、米国株が持ち直してリスク回避が巻き戻された場合に限られる。
個人投資家のチェックリスト
| 確認すること | 目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 終値で177.82円を回復したか | 20日平均 | 回復なら本誌の下値試しの見方を撤回する |
| 174.38円に近づいたか | 2025年9月29日の参照レート | ここを割ると、2025年9月以前の水準に入る |
| ドル円とユーロドルのどちらが動いたか | ユーロドルが±0.3%以上 | ユーロ側の材料に変わったサイン |
| 日経平均と同じ方向に動いているか | 株安と円高が同時 | リスク回避が続いているサイン |
ドル円の節目は同日の記事で、ユーロ円の値幅の見積もりは20日の記事で扱った。FX口座の選び方はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 円が1カ月で最大の上昇、日銀・ECBの予想、ユーロドルの水準/ロイター(ユーロネクスト掲載)
- 主要通貨の円相場・始値・高値・安値(22日19時59分)/Yahoo!ファイナンス
- ユーロ円の参照レートの日次系列(高値・安値・移動平均の計算元)/Frankfurter(ECB参照レート)
- 金融政策決定会合の日程(10月29日・30日)/日本銀行
- ECB理事会の日程(10月28日・29日)/欧州中央銀行
データ基準日:2026年10月22日(日本時間19時59分)。現在値と当日の始値・安値は取引時間中の気配値で、終値ではない。ECBの参照レートは毎営業日の中欧時間14時15分の値で、本記事の移動平均と過去の水準はこれをもとに本誌が計算した。22日の参照レートは本記事の執筆時点では反映していない。ユーロ円の下げの分解は、ユーロドルとドル円の始値比の変化率を足し合わせた近似で、取得時刻の差などにより合計は実際の変化率と一致しない。日本時間の発表時刻は目安で、変更されることがある。シナリオの確率は本誌の判断で、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















