アパレル大手のワールド(3612)とTSIホールディングス(3608)が、10月14日15時30分に経営統合を発表した。2027年3月1日に共同持株会社「インフィニティ・ユナイテッド」を設け、両社はその傘下に入る。TSI株1株には新会社株0.8株が割り当てられる。株主にとっての問いは一つである。この0.8は、TSI株を持つ人にどれだけ有利なのか。
要点5つ
- 比率:ワールド1株に新会社1株、TSI1株に0.8株。14日終値で計算した比率は0.769である。
- 上乗せ:0.8はTSI株の終値に対して約4.0%の上乗せになる。市場株価による算定幅0.77〜0.78の上限も超える。
- 配当:統合前の期末配当の上限はTSIが70円、ワールドが36円である。配当まで含めると、差は約90円に広がる。
- 規模:直近通期の売上高を足すと約4,511億円。営業利益は計約203億円で、売上高の4.5%にとどまる。
- 日程:12月24日に両社の臨時株主総会がある。両社株の上場廃止は2月25日、新会社の上場は3月1日の予定だ。
1. 比率は1対0.8、新会社の4割弱をTSI株主が持つ
結論:統合は株式移転で行い、現金は動かない。ワールド株1株は新会社株1株に、TSI株1株は新会社株0.8株に替わる。新会社の単元は100株である。
根拠:両社の発表資料によると、新会社が交付する株数は1億2,185万8,487株の予定だ。8月末時点の自己株式を除いて算出している。内訳を本誌で計算すると、ワールド株主の分が約62.6%、TSI株主の分が約37.4%となる。
次:TSI株を100株持つ人には新会社株80株が割り当てられる。単元に満たないため、市場では売れない。100株以上を受け取るには、TSI株を125株以上持つ必要がある。資料もこの点を明記している。会社への買取請求や、買い増しの制度は設ける予定だ。
2. 終値比で約4.0%の上乗せ、算定幅の上限より上
結論:14日の終値はワールドが1,571円、TSIが1,208円だった。ワールド株0.8株分の値段は1,256.8円で、TSI株の終値を約4.0%上回る。算定基準日である13日の終値で計算しても、約4.0%で変わらない。
根拠:ワールド側の算定は野村證券、TSI側はみずほ証券が担った。市場株価による比率は、どちらも0.77〜0.78だった。DCF法の幅は野村が0.72〜1.19、みずほが0.35〜1.28と広い。0.8は市場株価の幅の上にあり、DCFの幅の中に収まる。
次:発表後のPTS(私設取引)では、19時24分時点でワールドが1,614円、TSIが1,244円をつけた。それぞれ終値比2.7%高、3.0%高である。この時点でも0.8との差は約3.8%残っている。15日の東証で、この差がどこまで縮むかを見たい。
3. 配当の差を足すと、TSI株の「差」は約90円
結論:統合契約では、2027年2月28日までを基準日とする配当に上限を定めた。TSIは1株70円、ワールドは1株36円が上限である。TSIは14日の決算短信でも、期末70円の予想を据え置いた。
TSI株1株の値段と、0.8株分の新会社株の見合い(円)
読み方:ワールド株0.8株分の値段はTSI株の終値を48.8円(約4.0%)上回る。統合前の期末配当の上限差41.2円を足すと、差は約90円(約7.5%)になる。配当は上限どおりに支払われた場合の試算で、統合が承認されない場合や比率が見直される場合の損失は含まない。出所:両社の経営統合の発表資料(2026年10月14日)、株探の終値、本誌計算。
根拠:ワールド株0.8株が受け取る配当は、上限どおりなら28.8円だ。TSI株1株は70円を受け取る。この差41.2円を足すと、TSI株の見合いの値段は約1,298円になる。終値1,208円との差は約90円、比率にして約7.5%だ。
次:この差は利益の約束ではない。統合が承認されない場合や、比率が見直される場合がある。資料も、前提条件に重大な変更があれば協議のうえ比率を変えうると明記している。配当もあくまで上限であり、実際の金額は各社の決議で決まる。
4. 売上高4,511億円、利益率はまだ低い
結論:2026年2月期の売上高はワールドが2,840億円、TSIが1,671億円である。単純に足すと約4,511億円になる。WWDJAPANは、国内アパレルで3位の規模になると報じた。
| 項目 | ワールド | TSI |
|---|---|---|
| 売上高(2026年2月期) | 2,840億円 | 1,671億円 |
| 営業利益(同) | 160億円 | 43億円 |
| 営業利益率(本誌計算) | 5.6% | 2.6% |
| 14日終値 | 1,571円 | 1,208円 |
| 時価総額(株探) | 1,212億円 | 766億円 |
| PBR(株探) | 1.20倍 | 0.74倍 |
根拠:営業利益は合計で約203億円、売上高の4.5%である。会計基準が違うため、合計は目安にとどまる。TSIのPBRは0.74倍で、市場は純資産より低く評価してきた。資料はシナジーの金額を示していない。
次:統合の狙いは、物流やシステムなど重複する費用の削減だ。資料は、両社のブランドは顧客層や販路がほとんど重ならないと説明する。削減額を数字で示すかどうかが、次の材料になる。ファーストリテイリングの来期予想と並べると、規模の差はなお大きい。
5. 12月24日に総会、TSIは下期に利益の9割近く
結論:総会の権利を決める基準日は10月31日、臨時株主総会は両社とも12月24日だ。両社株は2027年2月25日に上場廃止となる。新会社は3月1日に東証プライムへ上場する予定である。
根拠:TSIの3〜8月期の営業利益は9億9,500万円だった。4月の予想12億円を17.0%下回った。6月以降の天候不順で夏物が伸びなかったという。通期予想75億円は据え置いたため、下期だけで約65億円を稼ぐ前提になる。通期の約87%にあたる。
次:比率0.8は決まったが、TSIの下期が崩れれば見直しの議論は起こりうる。株主優待は、両社とも2027年2月28日までを基準日とする分は実施する予定だ。統合で銘柄が一つになる点では、東北3地銀の経営統合と同じ構図である。
30秒まとめ。TSI株1株は新会社株0.8株になり、終値比で約4.0%の上乗せだ。期末配当の上限差41.2円を足すと、差は約90円に広がる。ただし承認前の比率であり、TSIの下期と12月24日の総会が次の関門となる。
参照・免責
- 経営統合の発表資料(比率、日程、算定結果、配当の上限、財務数値、2026年10月14日)/東証適時開示(ワールド・TSIホールディングス)
- TSIの2027年2月期中間決算短信(2026年10月14日)/東証適時開示
- TSIの中間期の予想と実績の差異(2026年10月14日)/東証適時開示
- 株価(終値、PTS、時価総額、PBR)/株探(ワールド)、株探(TSIホールディングス)
- 投資家向け情報/ワールド
- 国内アパレル3位の規模との報道/WWDJAPAN
データ基準日:2026年10月14日。株価は東証の終値(15時30分)で、PTSは同日19時24分時点の値であり、終値ではない。上乗せ率、持ち分比率、配当込みの差は本誌の計算である。配当込みの差は、両社が上限どおりに配当した場合の試算だ。売上高と営業利益の合計は、IFRSと日本基準を単純に足した目安である。国内3位という順位はWWDJAPANの報道にもとづき、本誌は独自に確かめていない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。










