10月16日金曜、東京・永田町。参院予算委員会で、国民民主党の浜口政調会長が高市早苗首相に問いを向けた。食料品の消費税を下げれば、持ち帰りと店内飲食の税率の差が広がり、外食離れが進むのではないか。支援策を予算に盛り込む考えはあるのか。首相の答えは短かった。「そういうことでございます」。
テレビ朝日によると、首相はこの日、外食産業の支援策として、プレミアム付き商品券や「Go To Eat」も含めて検討していることを明らかにした。週末をはさんだ19日月曜の東京市場で、グルメサイトのRettyはストップ高の160円で引け、ぐるなびは一時44%高まで買われた。サイゼリヤ、吉野家ホールディングス、ゼンショーホールディングスも上げた。日経平均が407円安で引けた日のことである。
金曜の委員会室:税率の差という問い
浜口氏が持ち出したのは、消費税の「2つの税率」の話だった。いまの消費税は、持ち帰りの食料品が軽減税率の8%、店内での飲食が標準税率の10%である。政府の法案どおりに食料品が1%へ下がれば、店内飲食は10%のまま残る。差は2ポイントから9ポイントに広がる。
1,000円の定食で考えると分かりやすい。いまは持ち帰りなら1,080円、店で食べれば1,100円で、差は20円だ。減税後は持ち帰りが1,010円、店内は1,100円のままで、差は90円になる。毎日の昼食で90円の差が続けば、弁当を買って職場で食べる人が増えてもおかしくない。浜口氏の問いは、その心配を国会の場に持ち込んだものだった。
共同通信は同日16時すぎ、首相が「税率10%が維持される外食産業の需要喚起に向け、プレミアム付き商品券の活用に言及した」と速報した。テレビ朝日によると、農林水産相も同じ場で、支援は飲食店の資金繰りや持ち帰りへの多角化にも及ぶとし、詳細はこれからの予算編成で詰めると述べた。
巻き戻し:8月から続く減税の道のり
ここに至るまでの道のりは、夏から始まっていた。秋田魁新報が掲載した共同通信の記事によると、政府は8月5日の臨時閣議で、飲食料品の消費税を来年4月から2年間1%に下げる方針を決めた。9月15日には税制改正の大綱を決め、10月9日には関連法案を閣議決定した。1989年の消費税導入以来、初めての税率引き下げになる。
食料品の消費税1%と外食支援:ここまでの年表
読み方:外食支援策の規模と財源は、これからの予算編成で決まる。出所:共同通信、テレビ朝日、NHK、ヤフー・ファイナンス。
ただ、財源の話はまだ決着していない。熊本日日新聞が掲載した共同通信の記事によると、2年間で約10兆円規模になる財源は、閣議決定の時点で具体化が見送られた。片山財務相は、今後の予算編成で示すと述べている。外食への支援策も、同じ予算編成のなかで中身が決まる。10月9日の閣議決定の朝に出た家計調査の数字は、同日の記事で取り上げた。
月曜9時:Rettyに買いが殺到した
19日の朝、東京の取引が始まると、Rettyにはまず買い注文が積み上がった。トレーダーズ・ウェブは11時すぎ、同社株がストップ高の買い気配にあると伝えている。前週末の終値は110円で、ストップ高の上限は50円上の160円だった。株価はそのまま160円で引けた。上昇率は45%を超える。
同じ頃、ぐるなびの板も熱を帯びていた。前週末114円の株価は一時164円まで上がった。出来高はおよそ2,380万株に膨らんだ。しかし午後にかけて売りが出て、終値は134円だった。日中の上げ幅50円のうち、引けまで残ったのは20円である。株探は、Go To Eatがコロナ禍に実施された外食の需要喚起策であり、当時の株式市場でグルメサイト関連株がたびたび人気化した経緯があると書いた。
| 銘柄(コード) | 10月19日終値 | 前週末比 | 日中高値 | 52週高値 |
|---|---|---|---|---|
| Retty(7356) | 160円 | +45.45% | 160円(ストップ高) | 228円 |
| ぐるなび(2440) | 134円 | +17.54% | 164円 | 212円 |
| サイゼリヤ(7581) | 7,550円 | +7.55% | 7,590円 | 8,420円 |
| FOOD & LIFE COMPANIES(3563) | 6,041円 | +4.62% | 6,043円 | 6,135円 |
| 吉野家ホールディングス(9861) | 4,293円 | +3.30% | 4,309円 | 4,309円 |
| すかいらーくホールディングス(3197) | 3,549円 | +3.11% | 3,558円 | 3,764円 |
| ゼンショーホールディングス(7550) | 12,315円 | +2.97% | 12,360円 | 12,360円 |
| 日本マクドナルドホールディングス(2702) | 8,040円 | +1.64% | 8,090円 | 8,780円 |
表の並びには、ひとつの温度差がある。上げ幅が大きいのは、株価が100円台で、思惑で動きやすいグルメサイトの2社だった。外食大手の上げは3〜8%にとどまる。一方で、吉野家とゼンショーは19日の日中に52週高値をつけた。値動きの大きさではグルメサイトが目立つが、高値の更新という点では外食大手のほうが先を走っている。
2つの読み方:需要の下支えか、税率差の痛みか
市場の買い手が描いたのは、商品券やGo To Eatで外食の需要が下支えされる絵である。19日の東京では、AI・半導体株から内需やディフェンシブ株へ資金が移る流れも重なった。株探によると、オリエンタルランドはこの日10連騰で、連日の年初来高値更新となった。外食株への買いは、政策の思惑と資金の移動が同じ日に重なった結果でもある。
もうひとつの読み方は、浜口氏の問いそのものから出てくる。支援策が検討されるのは、外食が減税で不利になるからだ。税率差が9ポイントに広がる痛みは2027年4月から2年間続く。商品券やGo To Eatがどれだけの規模で、いつまで続くのかは、まだどこにも書かれていない。テレビ朝日の報道でも、詳細は予算編成で決まるとされている。
つまり19日の株価は、支援策の「中身」ではなく、「検討している」という一言に反応した。ぐるなびが日中の上げ幅の6割を手放したことは、その一言の重さを市場がまだ測りかねていることを映す。外食大手の株価が高値圏にとどまるのか、グルメサイト株がもう一段買われるのかは、次の材料が出るまで分からない。
エピローグ:20日の衆院本会議から
舞台は国会に戻る。NHKによると、自民党と民主改革の会の国対委員長は16日に会談し、食料品の消費税減税関連法案を20日の衆院本会議で審議入りさせ、高市首相の出席を求めて質疑を行うことで合意した。外食への支援策が、どの議員の質問で、どれだけ具体的に語られるか。それが次の場面になる。
その先には年末に向けた予算編成があり、支援策の規模と財源はそこで数字になる。減税そのものの開始は2027年4月だ。外食大手にとっては、その時までに客足を守る仕組みが用意されるかどうかが問われる。グルメサイト2社にとっては、Go To Eatという名前が、もう一度予約の画面に戻ってくるかどうかが問われる。
19日の東京市場全体の動きは同日の大引けの記事に、減税をめぐる7月の攻防は7月末の記事にある。
主な参照
- 首相答弁と質問の内容(2026年10月16日19時50分配信)/テレビ朝日(Yahoo!ニュース掲載)
- 首相のプレミアム付き商品券への言及(2026年10月16日16時14分配信)/共同通信(Yahoo!ニュース掲載)
- 関連法案の閣議決定と財源(2026年10月9日)/共同通信(熊本日日新聞掲載)
- 基本方針と税制改正大綱の決定/共同通信(秋田魁新報掲載、8月5日)、同(9月15日)
- 衆院本会議での審議入りの合意(2026年10月16日)/NHK
- ぐるなび・Rettyの動きとGo To Eatの経緯(10月19日大引け)/株探(みんかぶ)
- 外食大手とオリエンタルランドの動き(10月19日昼)/株探
- Rettyのストップ高買い気配(10月19日)/トレーダーズ・ウェブ
- 各銘柄の終値・高値・出来高/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月19日(東京市場の大引け)。株価は終値。定食の税込み価格は、税率だけを変えた単純な計算であり、実際の店頭価格を示すものではない。外食支援策は検討段階で、規模・時期・財源は決まっていない。本記事は情報提供を目的とし、特定銘柄の売買を勧めるものではない。
















