先週、ポンド円の211円手前で売り向かった向きは、週明けの東京で少し肩が重くなっただろう。19日のポンド円は210円台後半まで買われ、株探によると13時30分時点で1ポンド=210円68銭前後と、前週末17時から37銭のポンド高・円安だった。日経平均が一時1,490円超下げた日に、ポンドは円に対しても、ドルに対しても下がらなかった。
結論から書く。筆者は、ポンド円は今後2〜4週間で211円台前半の上値を抜けて213円を試すとみている。根拠は英国の利上げ観測、21日の英消費者物価指数(CPI)、日英の金利差の3つだ。ただし208円50銭を終値で割り込んだら、この見立ては引っ込める。
テープ:株安の日に崩れなかったポンド
この日の東京は荒れた。日経平均は寄り付き直後に6万3,831円台まで売られ、最後は407円安の6万4,916円70銭で引けた。普段なら、こういう日は円が買われ、ポンド円のようなクロス円は売られやすい。ところがポンド円は高値圏を保った。ヤフー・ファイナンスでは15時40分時点で210円59銭、日中の高値は210円84銭だった。
フィスコは15時台の記事で、英中銀の来月の利上げ観測が急に強まるなか、今週の英CPIは伸びの加速が予想されていると伝えた。足元のポンドはドル、円、ユーロ、スイスフラン、豪ドルのいずれに対しても下げづらいとも書いている。ポンドドルも同時刻に1.3330ドルと、前週末の1.32ドル台後半から上げた。ポンドドルの見通しは16日の記事で扱っている。
円の側は動いていない。ドル円は15時時点で158円10銭前後と、前週末からほぼ横ばいだった。つまりこの日のポンド円の上げは、円売りではなくポンド買いで説明がつく。ドル円の水準は同日のドル円見通しにある。
需給:利上げを9割織り込んだ先の勝負
英中銀(イングランド銀行)の政策金利は3.75%で、2025年12月18日の利下げ以来据え置かれている。次の金融政策委員会の発表は11月5日だ。ロイター通信が10月12〜14日に実施したエコノミスト調査では、63人中54人が11月に0.25%の利上げで4.00%に上がると予想した。前月の調査から大きく見方が変わった。英国のニュースサイト、パウンド・スターリング・ライブは10月9日、短期金融市場が11月の利上げをおよそ9割の確率で織り込んでいると伝えている。
ここが需給の肝だ。9割織り込んだ利上げは、実際に決まっても大きな買い材料にはならない。値幅が出るのは、その先の利上げの回数が変わるときである。同じロイター調査では、2027年1〜3月期にもう1回の利上げを見込むエコノミストは61人中30人と、ちょうど半分に割れた。21日のCPIがこの割れた見方をどちらに傾けるかで、ポンドの次の値幅が決まる。
英国家統計局によると、8月のCPIは前年同月比3.1%上昇で、7月の2.9%から伸びが高まった。食品とエネルギーなどを除くコア指数は2.6%、サービス価格は3.4%で、いずれも7月と同じだった。ロイター調査のCPI予想の平均は、7〜9月期が3.6%、10〜12月期が3.8%である。総合の伸びは高まっていくが、コアとサービスはまだ動いていない。筆者が21日に一番見るのは、総合ではなくサービス価格の数字だ。
円側の金利は上がってはいるが、英国とはまだ距離がある。日銀は9月18日の会合で政策金利を1.25%程度に引き上げた。英中銀との差は2.5ポイントある。長期金利では、フィスコによると19日の新発10年国債利回りは2.898%、英10年国債は5.37%近辺で、差はおよそ2.5ポイントだった。この差が縮まらないかぎり、ポンド円を持つ側は金利を受け取り続けられる。
水準の地図
ポンド円の水準の地図(10月19日15時40分時点)
読み方:9月中旬から1カ月は207〜211円のレンジ。211円25銭を抜ければ、75日線(213円25銭)と200日線(212円98銭)が重なる213円前後が次の目安になる。出所:ヤフー・ファイナンスの日足から本誌計算。
9月中旬から1カ月、ポンド円はほぼ207円から211円のあいだで行き来してきた。下は9月末の206円90銭、上は9月中旬の211円25銭である。10月半ばの押し目は208円60銭前後で止まった。ヤフー・ファイナンスの日足終値から計算すると、25日移動平均線は209円25銭で、相場はその上にある。一方、75日線は213円25銭、200日線は212円98銭で、どちらも上にかぶさっている。
上の目安はふたつある。まず211円25銭。ここを抜ければ1カ月続いたレンジの上抜けになる。次に213円前後で、75日線と200日線が重なる。7月中旬につけた年初来高値219円52銭までは、そこからさらに6円ある。今回の見立てで、そこまでは見ていない。
筆者の見立て:2〜4週間で213円試し
筆者はポンド円を強気でみている。根拠は3つある。1つ目は、株安の日にもポンドが崩れなかったことだ。リスク回避で売られない通貨は、地合いが戻ったときに素直に上がりやすい。2つ目は、21日の英CPIで伸びの加速が予想されていることだ。予想どおりでも、利上げを2回織り込む方向に傾けば、ポンドの下値は堅くなる。3つ目は金利差である。日銀の利上げで円金利は上がっているが、2.5ポイントの差はすぐには埋まらない。
| シナリオ(11月5日の英中銀会合まで) | 筆者の確率 | ポンド円の目安 | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 上抜け:レンジを上に抜ける | 45% | 211円25銭を抜けて213円前後 | 英CPIでサービス価格が加速、利上げ2回の織り込みが進む |
| もみ合い:レンジにとどまる | 35% | 208円50銭〜211円25銭 | 英CPIが予想どおり、28日の英予算案待ち |
| 下抜け:レンジを下に抜ける | 20% | 206円90銭を割り込み205円台 | 英CPIの下振れ、日銀の追加利上げ観測、円買い介入 |
正直、1カ月先の数字を言い切るのは怖い。それでも上抜けを本線に置くのは、下抜けのきっかけが今週は見当たらないからだ。日銀の会合は29〜30日で、そこまで円金利に大きな動きは出にくい。英国の予算案は28日に出る。英政府が7月31日に日程を公表した。財政への不安でポンドが売られる場面はありうるが、それは来週の話になる。
逆になったら:208円50銭が撤退線
見立てが外れる形は2つある。ひとつは21日の英CPIが予想を下回り、とくにサービス価格が鈍る場合だ。利上げ2回の議論が消えれば、9割まで積み上がった11月利上げの織り込みそのものが削られる。もうひとつは円の急騰である。ドル円は158円台で膠着しており、同日のドル円見通しは159円台を売り場とみている。ドル円が急落すれば、ポンド円も一緒に下がる。
撤退線:208円50銭(終値ベース)。10月半ばの押し目208円60銭のすぐ下である。ここを終値で割り込んだら、筆者は上抜けの見立てを取り下げ、206円90銭までの下げを想定し直す。レバレッジをかけた取引では、英CPI発表の前後にスプレッドが広がりやすい点に注意が要る。
今週から来月の監視リスト
| 日時(日本時間) | イベント | 見るところ |
|---|---|---|
| 10月20日15時 | 英国の雇用統計 | 賃金の伸び。英CPIの前哨戦になる |
| 10月21日15時 | 英9月CPI | サービス価格が8月の3.4%から上がるか |
| 10月28日 | 英国の予算案 | 財政への不安でポンドが売られるか |
| 10月29〜30日 | 日銀の金融政策決定会合 | 12月の追加利上げを示唆するか |
| 11月5日 | 英中銀の政策金利発表 | 4.00%への利上げと、次の利上げの示唆 |
ポンドの構造的な弱点、つまり財政と政治の問題はポンドドルの分析記事に、円の金利の見通しはユーロ円の記事にまとめている。FX取引の仕組みや業者選びはFX解説ページにある。
主な参照
- ポンド円の気配(10月19日13時30分)/株探
- 英利上げ観測とポンドの地合い(10月19日15時4分)/株探(フィスコ)
- ドル円の水準(10月19日15時)/株探(みんかぶ)
- 日英の10年国債利回り(10月19日)/株探(フィスコ)
- エコノミスト調査(10月12〜14日実施)/ロイター(Investing.com掲載)
- 11月利上げの織り込み(10月9日)/Pound Sterling Live
- 政策金利の推移/イングランド銀行、会合日程は同行
- 英8月CPIと次回公表日/英国家統計局
- 英予算案の日程(2026年7月31日公表)/英政府
- 日銀の利上げ(2026年9月18日)/共同通信(熊本日日新聞掲載)、会合日程は日本銀行
- ポンド円・ポンドドルの日足と移動平均の計算/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月19日(日本時間15時40分)。為替は取引時間中の値で、終値ではない。移動平均と高値・安値はヤフー・ファイナンスの日足から本誌が計算した。シナリオの確率は筆者の見立てであり、将来の値動きを保証するものではない。外国為替証拠金取引は元本を上回る損失が出ることがある。売買の判断は読者自身の責任で行ってほしい。
















