米大手金融機関Bank of America Global Research(BofA)は、EUR/USDに対して弱気の見方を維持しています。
BofAは、2026年8月20日満期の「1.15/1.13プットスプレッド」を通じて、戦術的にEUR/USDの下落を狙うポジションを継続しているとしています。
簡単に言えば、BofAは「ユーロドルは短期的に上値が重く、1.13方向への下落余地がある」と見ているということです。
ただし、これはユーロが一方的に弱いという単純な話ではありません。現在のEUR/USD相場では、ECBの利上げ観測、FRBの政策姿勢、米欧の実質金利差、エネルギー価格、投資家ポジションなど、複数の材料が絡み合っています。
この記事では、BofAがなぜEUR/USDに弱気なのか、そして個人FXトレーダーはこの見方をどう受け止めるべきかを解説します。
BofAはEUR/USDの戻り売りを意識
BofAは、EUR/USDに対して「戦術的なショート」を維持しています。
具体的には、1.15のプットを買い、1.13のプットを売る形のプットスプレッドです。
これは、EUR/USDが大きく暴落するというよりも、「1.15付近から1.13方向への下落を狙う」比較的限定的な弱気戦略と考えられます。
通常のショートポジションと違い、オプションのプットスプレッドは損失と利益の範囲がある程度限定されます。そのため、BofAの見方は「ユーロドルの中期的な大崩れを狙う」というより、「夏場にかけてユーロドルの上値は重くなりやすい」という戦術的な判断に近いです。
BofAがEUR/USDに弱気な理由
BofAがEUR/USDに弱気な理由は、主に以下の3つです。
| 材料 | EUR/USDへの影響 |
|---|---|
| 米国の経済指標が相対的に強い | ドル買い材料 |
| FRBの利下げ期待が後退しやすい | ドル金利の高止まりにつながる |
| 米欧の実質金利差がドル有利 | EUR/USDの上値を抑えやすい |
特に重要なのは、単純な政策金利差ではなく「実質金利差」です。
実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた金利のことです。為替市場では、単に政策金利が高いか低いかだけkésőではなく、インフレを考慮した後の実質的なリターンが意識されます。
BofAは、米欧の中期ゾーン、いわゆる「ベリー」の実質金利差がEUR/USDを見るうえで特に重要だと指摘しています。
つまり、ユーロ圏でECBの利上げ観測が出ていても、米国側の実質金利がより高く維持されるなら、ドルの魅力は残りやすいということです。
ECBの利上げ観測はユーロを十分に押し上げていない
現在のユーロ圏では、インフレ圧力が再び意識されています。
エネルギー価格の上昇や賃金上昇の影響により、ECBはインフレ見通しを上方修正しています。市場でも、ECBが追加利上げに動く可能性が意識されています。
通常であれば、中央銀行の利上げ観測はその国・地域の通貨にとって買い材料になります。ECBの利上げ観測が強まれば、ユーロ買いにつながってもおかしくありません。
しかし、BofAは「ユーロはECBの利上げナラティブから十分な恩恵を受けていない」と見ています。
その理由は、ユーロ買い材料が出ていても、同時にドル側の材料も強いからです。
FRBの利下げ期待が後退し、米金利が高止まりするとの見方が強まれば、ECBの利上げ観測だけではEUR/USDを大きく押し上げにくくなります。
為替は「ユーロが強いか」だけで決まるのではなく、「ユーロとドルのどちらが相対的に強いか」で動きます。現在の相場では、ユーロの買い材料よりも、ドルの金利面での優位性が意識されやすい局面だと言えます。
FRBの再評価がドルを支える可能性
BofAは、FRBに対する市場の見方がさらにタカ派方向へ修正される余地があると見ています。
これは、EUR/USDにとって重要なポイントです。
市場が「FRBは近いうちに利下げする」と見ているときは、ドルの上値は重くなりやすくなります。反対に、「FRBは利下げを急がない」「場合によっては再び利上げもあり得る」と見られると、ドルは買われやすくなります。
現在の米国では、インフレや雇用、景気指標の内容次第で、FRBの政策見通しが大きく変わりやすい状況です。
もし今後の米経済指標が底堅く、インフレも高止まりするようであれば、市場はFRBの利下げ期待をさらに後退させる可能性があります。
その場合、米金利は上昇しやすく、ドル買いが進み、EUR/USDには下落圧力がかかりやすくなります。
ユーロドルの投資家心理はまだ「極端な弱気」ではない
BofAは、EUR/USDのセンチメントやポジションがかなり調整されたものの、2022年や2024年に見られたような極端な水準には達していないとも指摘しています。
これは重要です。
もし市場参加者の多くがすでにユーロ売り・ドル買いに大きく傾いているなら、逆にショートカバーによるEUR/USDの反発リスクが高まります。
しかし、BofAの見方では、現在のポジションはそこまで極端ではありません。つまり、「すでに売られすぎだから反発しやすい」と判断するにはまだ早いということです。
この点も、BofAがEUR/USDの下落余地を見ている理由の一つです。
BofAの見方に対するリスク
もちろん、BofAの弱気シナリオにもリスクがあります。
BofA自身も、主なリスクとして以下を挙げています。
| リスク要因 | EUR/USDへの影響 |
|---|---|
| 米国経済指標の悪化 | ドル売り・EUR/USD上昇要因 |
| エネルギー供給の正常化 | ユーロ圏のインフレ懸念後退、景気支援材料 |
| ECBの利上げ期待がさらに強まる | ユーロ買い要因 |
| 地政学リスクの後退 | ドルの安全資産需要が弱まる可能性 |
特に注意したいのは、米国経済指標です。
BofAの弱気シナリオは、米国の相対的な経済指標が底堅く、FRBがタカ派方向に再評価されることを前提にしています。
もし今後、雇用統計、消費者物価指数、PCEインフレ、PMI、小売売上高などが弱い内容となれば、FRBの利上げ観測は後退し、逆に利下げ期待が再び高まる可能性があります。
その場合、ドルは売られやすくなり、EUR/USDは1.15台を回復する展開も考えられます。
エネルギー価格はユーロにとって両刃の剣
ユーロ圏にとって、エネルギー価格は非常に重要な材料です。
エネルギー価格が上昇すると、ユーロ圏のインフレ圧力が強まり、ECBの利上げ観測が高まりやすくなります。一見すると、これはユーロ買い材料です。
しかし、エネルギー高は同時にユーロ圏経済への負担にもなります。
特に欧州はエネルギー輸入への依存度が高いため、エネルギー価格の上昇は企業コストや家計負担を押し上げ、景気の重しになりやすいです。
つまり、エネルギー高はECBのタカ派姿勢を強める一方で、ユーロ圏経済の成長にはマイナスに働く可能性があります。
このため、エネルギー要因は単純なユーロ買い材料とは言えません。
BofAが「エネルギーフローの正常化」をリスクとして挙げているのは、エネルギー供給の改善がユーロ圏経済に安心感を与え、EUR/USDの反発材料になる可能性があるためです。
EUR/USDの注目水準
BofAのオプション戦略から見ると、注目水準は1.15と1.13です。
| 水準 | 見方 |
|---|---|
| 1.15付近 | BofAのプットスプレッド上限。戻り売りが意識されやすい水準 |
| 1.13付近 | BofAが下落ターゲットとして意識している水準 |
| 1.16台 | ユーロ反発が強まった場合の上値確認ゾーン |
| 1.12台 | 1.13割れなら下落トレンド継続の可能性 |
現在のEUR/USDは、1.15前後の攻防が重要になっています。
1.15を明確に上回って定着できれば、BofAの弱気シナリオはやや後退します。一方、1.15付近で上値を抑えられ、1.13方向へ下落するなら、BofAの見方に沿った展開になります。
短期トレーダーにとっては、1.15を上回った後に維持できるか、それとも再び押し戻されるかが重要です。
個人FXトレーダーはどう見るべきか
個人FXトレーダーにとって大切なのは、BofAの見通しをそのまま真似することではありません。
大手金融機関のレポートは参考になりますが、実際の相場は経済指標や中央銀行発言によってすぐに変わります。
特にEUR/USDでは、以下の材料を確認する必要があります。
| 確認すべき材料 | 理由 |
|---|---|
| 米CPI・PCEインフレ | FRBの利上げ・利下げ観測に直結 |
| 米雇用統計 | 米景気の強弱を判断する重要材料 |
| ECB関係者の発言 | 追加利上げ期待に影響 |
| 米欧の国債利回り | EUR/USDの方向感に影響 |
| 原油・天然ガス価格 | ユーロ圏インフレと景気に影響 |
BofAの見方を踏まえるなら、EUR/USDは短期的に戻り売りが意識されやすい局面です。
ただし、米国指標が弱くなれば、ドル売りによってEUR/USDが急反発するリスクもあります。
そのため、ショートを狙う場合でも、米経済指標の発表前後やFOMC、ECB理事会前後ではポジション管理を慎重に行う必要があります。
まとめ:EUR/USDは1.15前後の上値が重くなりやすい
BofAは、EUR/USDに対して弱気見通しを維持しており、1.15/1.13プットスプレッドを通じて戦術的なショートを取っています。
その背景には、米国経済指標の相対的な底堅さ、FRBのタカ派再評価、米欧の実質金利差、そしてユーロの上値の重さがあります。
ECBの利上げ観測はユーロにとって支援材料ですが、それだけではドルの金利優位を打ち消しきれていないというのがBofAの基本的な見方です。
今後のEUR/USDでは、1.15付近を明確に上抜けられるか、それとも1.13方向へ再び押し戻されるかが焦点になります。
個人FXトレーダーは、BofAの見通しを一つのシナリオとして参考にしつつ、米国指標、FRB見通し、ECBの発言、エネルギー価格の変化を確認しながら、柔軟に対応することが重要です。
よくある質問(FAQ)
BofAはなぜEUR/USDに弱気なのですか?
米国経済指標の相対的な底堅さ、FRBのタカ派方向への再評価、米欧の実質金利差によるドルの金利優位を背景に、ユーロの上値が重いと見ているためです。
BofAが注目しているEUR/USDの水準はどこですか?
2026年8月20日満期の1.15/1.13プットスプレッドを用いており、1.15付近を戻り売りの上限、1.13付近を下落ターゲットとして意識しています。
ECBの利上げ観測があってもユーロが上がりにくいのはなぜですか?
ユーロ買い材料が出ても、同時に米金利の高止まりというドル買い材料が強いため、相対的にドルの優位が意識されやすいからです。
ユーロドルが下落する理由は何ですか?
ユーロドルが下落する主な理由は、米国金利の高止まりやFRBのタカ派姿勢によってドルが買われやすくなるためです。加えて、ユーロ圏の景気不安やエネルギー価格の上昇、米欧の実質金利差がドル優位に傾くと、ユーロドルには下落圧力がかかりやすくなります。
ユーロドルは今後さらに下落する可能性がありますか?
ユーロドルは、米経済指標が強く、FRBの利下げ期待が後退する場合、さらに下落する可能性があります。特に米欧金利差が縮まらない局面では、ドル買いが続きやすくなります。ただし、米国指標が悪化した場合やECBの利上げ観測が強まった場合は、ユーロドルが反発する可能性もあります。
















