米中首脳会談の不発と株価急騰の温度差
中国最大手のファウンドリー(半導体受託製造)企業である中芯国際集成電路製造(SMIC、香港:981)を巡る投資家の関心が一段と高まっています。米中首脳会談が対中半導体販売の進展なく終了したことに加え、同社が2026年第1四半期決算を発表したタイミングが重なったためです。
半導体を巡る米中の政策対立は依然として続いており、輸出規制の緩和も期待されていましたが、今回の会談では具体的な突破口は得られませんでした。にもかかわらず、SMICの株価は強い上昇基調を維持しています。具体的には以下の通りです。
- 1日リターン:+7.61%
- 30日リターン:+34.65%
- 1年トータルリターン:+90.80%
短期・長期いずれの時間軸でもモメンタムが積み上がっており、政策面の逆風にもかかわらず、中国国内の半導体国産化テーマが買いを集めていることが鮮明です。
バリュエーション分析:現在価格は7%の割高水準
直近の終値はHK$79.85ですが、市場で広く参照されているフェアバリュー推計はHK$74.97となっており、現在の株価はこの水準を約7%上回る位置にあります。このフェアバリューは、成長率・利益率・割引率に関する詳細な前提に基づいて算出されたものです。
ブル(強気)シナリオの根拠としては、SMICが進めているウェハー製造能力の積極的な拡張、特に8インチおよび12インチノードでの増産が挙げられます。これにより、自動車向け半導体やアナログ半導体といった中国国内の川下市場からの需要を取り込む体制が整いつつあります。高い稼働率と数量成長が、長期的な売上拡大と粗利益率の安定化を支える構図です。
ただし、このフェアバリュー水準を正当化するには、競合他社を上回る利益成長の加速、利益率の改善、そして将来の予想PERの上昇という3点が同時に実現する必要があります。市場の期待値はかなり高いと言えるでしょう。
見落とせないリスク要因
もっとも、強気シナリオは複数の前提に依存しており、これらが崩れれば株価は調整を余儀なくされる可能性があります。主なリスクは以下の通りです。
- 中国国内需要への高い依存度 — 経済減速時に売上が直撃を受ける構造
- ファウンドリー業界全体の価格下落圧力 — 競争激化による単価下落
- 米国の追加輸出規制リスク — 先端ノード投資の足かせ
- 設備投資負担の重さ — フリーキャッシュフローを圧迫
特に、価格競争の激化や中国マクロ経済の鈍化により、想定以上に売上成長と利益率が圧迫されるシナリオには注意が必要です。
日本の投資家への影響と市場インプリケーション
SMICの動向は、日本の半導体関連株にも波及します。同社が国産化を加速させれば、東京エレクトロン(8035)、SCREENホールディングス(7735)、アドバンテスト(6857)といった製造装置メーカーは中国向け売上の動向に影響を受けます。米国規制で先端装置の対中輸出が制限される一方、成熟ノード向けの装置需要は底堅く推移する可能性があります。
また、SMICの設備投資拡大はシリコンウェハーや材料メーカー(信越化学、SUMCO等)にとってもプラス材料となり得ます。一方で、ファウンドリー業界全体の価格下落は、台湾TSMCや日本のラピダスといった競合勢力の収益にも影響を与えるため、セクター全体のマージン動向を注視する必要があります。
短期モメンタムに乗るか、割高水準での調整を待つかは、投資家のリスク許容度次第と言えるでしょう。
ボトムライン
SMICは強い株価モメンタムを示すものの、現在価格はフェアバリューを上回っており、新規参入は押し目を待つ慎重な姿勢が賢明です。













