11月6日金曜の米国株は、前日の急落から半導体株が買い戻され、ナスダック総合指数が1.09%高の2万4,579.42で取引を終えた。それでも週間では3.4%安、S&P500は2.7%安で、木曜の下げを埋めるには遠い。まず下の1枚を見てほしい。金曜の反発は、木曜の下げ幅に対して小さい。
本稿では、週末時点の米国株の位置を図で整理したうえで、来週に向けて見ておきたい2銘柄を取り上げる。売られすぎの水準にあるマイクロチップ・テクノロジー(MCHP)と、決算で急騰したIonQ(IONQ)である。
金曜の反発は木曜の下げをどこまで戻したか
金曜の終値は、S&P500が0.32%高の7,376.86、ダウ工業株30種平均が237.33ドル安(0.46%安)の5万1,285.73だった。前日5日はナスダックが5.52%安、S&P500が4.36%安と、中間選挙後のAI株売りが一気に進んだ日である。金曜はその反動で、木曜に大きく売られた半導体株ほど大きく戻した。
水曜4日終値から金曜6日終値までの騰落率
読み方:金曜に大きく戻した銘柄も、木曜の下げを含めた2日間ではほとんどがマイナスにある。例外は決算で急騰したIonQで、マイクロチップは決算の見通しで2日続けて売られた。出所:stockanalysis.comの日足終値、本誌計算。
図の数字は、水曜4日の終値から金曜6日の終値までの騰落率である。AMDは金曜に11.04%上げたが、木曜に17.26%下げていたため、水曜の水準にはまだ8.13%届かない。マイクロンは金曜5.19%高でも13.18%安、マーベル・テクノロジーは11.68%安のままだ。半導体株のETFであるiシェアーズ半導体ETF(SOXX)も9.13%下にいる。金曜の上げは「戻り」であって、下げ止まりの確認にはまだ足りない。
週間で見ると、下げはハイテクに集中した
週間の騰落率(10月30日終値→11月6日終値)
読み方:大型株全体の下げは3%弱だが、半導体株は13%、個別では2〜3割下げた銘柄もある。出所:stockanalysis.comの日足終値、本誌計算。ETFの騰落率は指数そのものとわずかに異なる。
週間の騰落率を並べると、下げの偏りがはっきりする。ダウ平均に連動するETF(DIA)は0.94%安にとどまり、S&P500連動のSPYは2.70%安、ナスダック100連動のQQQは4.97%安、SOXXは13.20%安だった。CNBCによると、S&P500の業種別ではエネルギーが週間で約12%安と最も弱く、情報技術がそれに続いた。原油の急落とAI株の売りが、同じ週に重なった形である。
金利の側にも逆風があった。6日発表の米10月雇用統計は非農業部門雇用者数が16万5,000人増と、ダウ・ジョーンズ集計の市場予想5万9,000人を大きく上回り、失業率は4.1%に下がった。CMEのフェドウオッチに基づく12月8〜9日の会合での0.25ポイント利上げの確率は、CNBCが約70%、インベストメントニュースが76.8%と伝えた。集計の時点で差はあるが、7〜8割が織り込まれた計算になる。米10年債利回りは4.86%前後で週を終えた。ミシガン大学の11月の消費者信頼感指数(速報)は51.0と予想の47.5を上回ったが、1年先の予想物価上昇率は4.3%と高い。雇用統計の中身とドル円の反応はドル円の記事で詳しく扱った。
恐怖指数と呼ばれるVIXは25.49で終わり、木曜の28.18から下がった。ただ、20を上回る水準は、市場がまだ大きな値動きを警戒していることを示している。
注目株1:マイクロチップ、2日で22%安の売られすぎ
マイクロチップ(MCHP)の価格の地図(11月6日終値時点)
読み方:終値は20日移動平均の2割以上下にあり、短期的には売られすぎの水準にある。下の目安は金曜安値の54.83ドル。出所:stockanalysis.comの日足、MarketBeat(目標株価)、本誌計算。
マイクロチップ(MCHP)は5日の引け後に7〜9月期決算を発表した。売上高は16億2,150万ドルで前年同期比42.2%増、会社の計画の上限を上回った。問題は10〜12月期の見通しである。売上高は15億7,300万〜16億3,800万ドルで、中央値は前期比で約1%減。調整後の1株利益は0.87〜0.95ドルと、7〜9月期の0.97ドルを下回る。サンギCEOは「供給網全体でリードタイム(受注から納品までの期間)が延びている」と述べ、ウエハーの確保に動いていると説明した。
株価は木曜に13.92%、金曜に10.18%下げ、水曜終値75.34ドルから58.25ドルまで22.68%安くなった。金曜の安値54.83ドルは、本誌が確認できる8月6日以降で最も低い。本誌がstockanalysis.comの日足から計算した14日RSI(相対力指数)は27.0で、売られすぎの目安とされる30を下回っている。20日移動平均は74.50ドルで、終値はその22%下にある。
本誌の見方では、短期の自律反発は起こり得るが、反発を「買いの合図」とみるのは早い。見通しが鈍った理由が需要ではなく供給の制約であれば、次の決算で数字が戻る余地はある。一方、シティは目標株価を95ドルから75ドルへ、トゥルーイストは90ドルから62ドルへ引き下げた。週明けに58ドル台を保てず金曜安値54.83ドルを割り込めば、売りが一巡していないと判断する。配当は1株45.5セントで、権利確定日は11月23日である。
注目株2:IonQ、決算で23%高の過熱
IonQ(IONQ)の価格の地図(11月6日終値時点)
読み方:決算の上げで20日線は回復したが、50日線の36.93ドルが次の関門になる。出所:stockanalysis.comの日足、本誌計算。
量子コンピューターのIonQ(IONQ)は5日に7〜9月期決算を発表した。売上高は1億7,380万ドルで前年同期比336%増、受注残にあたる残存履行義務は12億ドルと倍以上に増えた。2026年通期の売上高見通しは5億500万〜5億1,500万ドルに引き上げた。株価は金曜に23.34%上げて32.60ドルで終わった。
ただ、数字には注意点が2つある。1つ目は、売上高のうち8,350万ドルが買収したスカイウォーター(半導体の受託製造)の部門によるもので、量子事業だけの伸びではない。2つ目は、7〜9月期の純利益5億6,400万ドルが、ワラント(新株予約権)の評価益という現金を伴わない利益によるものだという点だ。本業の実力に近い調整後EBITDA(利払い・税・償却前利益)は1億3,360万ドルの赤字である。
株価の位置も確かめておく。金曜の終値は20日移動平均の31.47ドルを上回ったが、50日移動平均の36.93ドルには届いていない。14日RSIは48.5で、1日の上げ幅ほどには過熱していない。8月13日の高値47.95ドルからは32%安い。本誌は、50日線の36.93ドルを終値で超えられるかを上昇の持続を判断する目安とみる。超えられずに木曜の安値24.92ドル方向へ押し戻されれば、決算の上げは一時的だったことになる。
来週のシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌) | 条件 | S&P500の目安 |
|---|---|---|---|
| 戻りが続く | 35% | 米消費者物価指数(CPI)が予想どおりで、12月利上げの確率が下がる。半導体株が木曜の安値を割らない | 水曜の水準(約7,689)への戻りを試す |
| もみ合い | 45% | CPIは強めでも想定内。AI関連株の決算で強弱が分かれる | 7,300〜7,550の往来 |
| 下げ再開 | 20% | CPIが上振れし利上げ確率が9割に近づく。SOXXが木曜安値を割る | 7,250割れ、木曜安値の更新 |
来週の米国では10月のCPIに加え、シスコシステムズ、コアウィーブ、ネビウス・グループ、アプライド・マテリアルズの決算が控える。AIへの投資がまだ続くのかを、売られた後の株価で試す週になる。各社の決算の見どころと上昇確率は来週の米決算の記事にまとめた。
週明けまでのチェックリスト
- SOXXが木曜安値131.90ドル(終値)を保つか。割れれば金曜の戻りは否定される。
- 12月利上げの確率。7〜8割の織り込みが上がるか下がるかで、ハイテク株の評価が変わる。
- MCHPの54.83ドル。金曜安値を割らずに推移すれば、売られすぎからの反発が視野に入る。
- IONQの36.93ドル。50日移動平均を終値で超えるかが、決算の上げが続くかの分かれ目になる。
- 東京への波及。6日の日経平均は約6%安の5万7,434.77で終わった。週明けの東京は金曜の米半導体株の戻りを織り込む。前日の東京の動きはこちらで扱った。
主な参照
- 主要指数の終値、週間騰落率、個別株の値動き、雇用統計の市場予想、フェドウオッチ(11月6日)/CNBC
- 主要指数の終値、VIX、米10年債利回り(11月6日)/JournalArta
- 雇用統計とフェドウオッチの利上げ確率(11月6日)/InvestmentNews
- マイクロチップの7〜9月期決算と10〜12月期見通し(11月5日)/マイクロチップ発表資料(StockTitan掲載)
- マイクロチップの目標株価の引き下げ/MarketBeat
- IonQの7〜9月期決算(11月5日)/米証券取引委員会への提出書類
- 個別株とETFの日足(8月6日〜11月6日)/stockanalysis.com
データ基準日:2026年11月6日(米東部時間)の終値。指数・個別株・ETFの数値はいずれも同日の終値で、取引時間中の値は含まない。米10年債利回りは同日夕方の値である。移動平均とRSIはstockanalysis.comの日足終値から本誌が計算したもので、8月6日以降のデータに限られる。雇用統計の市場予想は集計元によって異なり、ダウ・ジョーンズは5万9,000人、ファクトセットは6万5,000人としている。シナリオの確率は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















