ソニーグループは11月5日15時30分、2026年度(2027年3月期)の営業利益の見通しを1兆7,200億円から1兆8,700億円に引き上げた。上積みは1,500億円で、7月時点の見通しより9%多い。いちばん多く上積みしたのは、ゲームではなく映画である。同社株はこの日、発表前の時点で7.07%高の4,211円で取引を終えていた。
まず下の4つの数字を見てほしい。そのあとで、上積みの内訳、上期の進み具合、あすの株価の筋書きを順に図で確かめる。
1,500億円の上積みはどこから来たか
営業利益見通しの上積み:分野別(7月時点→11月時点、億円)
読み方:棒の長さが上積みの額である。合計は1,500億円で、映画とゲームの2分野で6割を占める。家電を含む分野だけは据え置きだった。出所:ソニーグループ「2026年度 第2四半期連結業績概要」。
上積みの最大は映画分野の500億円で、見通しは1,500億円から2,000億円に33%増えた。会社は理由として「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」の劇場興行収入を挙げている。7〜9月期の映画分野の営業利益は926億円で、前年同期の139億円から6.7倍になった。1本のヒット作が、グループ全体の見通しを動かした形である。
ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は400億円の上積みで、見通しは7,000億円になった。自社制作以外のソフト販売の増加とコストの改善が理由だ。一方で、自社制作ソフトの一部は発売日を変更しており、会社はこれを減益要因に挙げている。半導体のイメージング&センシング・ソリューション分野は300億円、音楽分野は250億円の上積みだった。家電を含むエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野だけは据え置かれた。
7〜9月期は営業利益45%増
7〜9月期の分野別営業利益(億円、前年同期→今期)
読み方:棒は今期の営業利益、小さな文字が前年同期の値である。伸び率が最も大きいのは映画で、6.7倍になった。ゲームの増益には前年の減損などの反動498億円が含まれる。出所:ソニーグループ「2026年度 第2四半期連結業績概要」。
7〜9月期だけを見ると、売上高は10%増の3兆4,294億円、営業利益は45%増の6,223億円だった。営業利益率は前年同期の13.8%から18.1%に上がった。ただしG&NS分野の増益997億円には、前年の特殊要因の反動が含まれる。前年同期には、Bungieの無形資産などの減損315億円と、開発費の計上の修正183億円を計上していた。この2つを足すと498億円で、増益の半分にあたる。
為替も追い風だった。7〜9月期の平均レートは1ドル159.3円で、前年同期の147.4円より円安である。会社は、前年同期のレートで換算した場合の増収率は約4%にとどまると説明している。数字の伸びの一部は、円安が運んだものだ。
上期で通期の59%を稼いだ
上期の進み具合(4〜9月期の実績÷通期の見通し)
読み方:営業利益は上期で58.8%を稼いだ。下期は前年度の下期より14%多く稼げば見通しに届く。自社株買いは枠の61.8%を使った。出所:ソニーグループの決算短信と自己株式の取得状況に関するお知らせ、本誌計算。
4〜9月期の営業利益は1兆988億円で、上方修正後の通期見通し1兆8,700億円の58.8%にあたる。下期に必要な営業利益は約7,712億円だ。前年度の下期は約6,786億円だったので、14%増えれば届く。株予報(アイフィス)によると、上期の税引前利益は1兆1,006億円で、IFISコンセンサスの9,851億円を11.7%上回った。
見通しの前提も控えめに見える。下期の想定為替レートは1ドル153円前後だが、5日15時31分の円相場は1ドル157.90円だった(株探、取引時間中の値)。円安が続けば、為替は下期も利益を押し上げる方向に働く。逆に円高に振れれば、この余裕は消える。自社株買いは5,000億円の枠のうち、10月末までに約3,090億円を使った。年間配当は1株35円の予定で、変更はない。
あす6日の筋書き
本誌は前日の決算番付で、ソニーの決算翌日の上昇確率を60%とした。過去8回の決算では6勝2敗だった。今回の数字はその見立てを支える。ただし5日の株価は発表前にすでに7.07%上げていた。決算の好材料の一部は、先に値段に入っている可能性がある。
| 筋書き | 確率(本誌の見立て) | 起きる条件 | 見る数字 |
|---|---|---|---|
| 続伸 | 55% | 上方修正の幅とコンセンサス超えが素直に評価される | 4,274円(5日の高値)を上回るか |
| もみ合い | 30% | 前日の7%高で好材料が出尽くし、利益確定売りと拮抗する | 4,131円〜4,274円(5日の値幅)の中にとどまるか |
| 反落 | 15% | 映画のヒット頼みと見られる、または円高や米株安が重なる | 4,131円(5日の安値)を割るか |
前回の番付で示した60%から、続伸の確率を55%に下げた。理由は、発表前の上げで好材料の一部が織り込まれたとみるからだ。この日の東京市場ではAI・半導体株が売られ、資金が娯楽や内需の大型株に向かった。その流れは寄り付き1時間の記事で追っている。流れが続くかどうかも、あすの値動きを左右する。
個人投資家のチェックリスト
- 映画の持続性:上積み500億円は1本のヒット作に負う部分が大きい。来期の映画の公開予定と比べて読む。
- ゲームの発売日:自社制作ソフトの発売日変更が、来期の利益にずれ込むのか、消えるのかを決算説明会の発言で確かめる。
- 為替の前提:下期の想定は1ドル153円前後。円相場がこれより円安か円高かで、見通しの余裕は変わる。
- 自社株買い:5,000億円の枠のうち残りは約1,910億円。期限は2027年5月10日である。
- 撤退の目安:短期で買う場合、5日の安値4,131円を終値で割ったら筋書きの見直しどき、というのが本誌の考えだ。
主な参照
- 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(2026年11月5日)/TDnet(ソニーグループ)
- 2026年度 第2四半期連結業績概要(決算説明会資料、分野別の見通しと変動要因)/TDnet(ソニーグループ)
- 自己株式の取得状況(2026年10月末時点の累計)/TDnet(ソニーグループ)
- 上期の税引前利益とIFISコンセンサスの比較/株予報(アイフィス)
- 11月5日の株価(終値・高値・安値)と円相場/株探
- IR資料の掲載ページ/ソニーグループ
データ基準日:2026年11月5日。株価は同日の東京市場の終値で、決算発表(15時30分)より前の値動きである。円相場の157.90円は同日15時31分時点の取引時間中の値で、終値ではない。下期の必要営業利益と前年度下期の営業利益、自社株買いの残り枠は、会社の開示数値から本誌が計算した。前年度の純利益と比較は、金融事業を除く継続事業の数値である。コンセンサスはアイフィスの集計で、ほかの集計とは差が出ることがある。筋書きの確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














