クアルコム(QCOM)の株価が、決算発表を受けて米国の時間外取引で7.47%下げた。11月4日の通常取引を5.33%高の173.19ドルで終えたあと、米東部時間19時59分には160.25ドルを付けている。7〜9月期の売上高は会社見通しの上限に届いたが、スマートフォン向けが26%減り、メモリーなど部材コストの上昇が利益率を削った。問われているのは、スマホ依存から抜け出す道筋が株価の下げを止められるかである。要点は次の5つだ。
- スマホ向け26%減:7〜9月期のスマートフォン向け半導体売上は51.37億ドル。前年同期の69.61億ドルから大きく減った。
- 利益率5ポイント低下:半導体事業(QCT)の税引前利益率は24%。前年同期の29%から下がった。
- 車載89%増:車載向けは19.90億ドルで、初めて1四半期で20億ドル規模に届いた。
- 次の四半期は104億〜112億ドル:非GAAPの1株利益は2.15〜2.35ドルの見通し。
- 部材高の転嫁は2027年度後半:値上げの効果が粗利益率に出そろうのは、会社自身の説明で2027年度の下半期である。
1. スマホ向け26%減:売上の主役が細った
結論:減収の原因はほぼスマホ1本である。7〜9月期の売上高はGAAPで103.22億ドル、前年同期比8%減。半導体事業の売上90.15億ドルのうち、スマホ向けは51.37億ドルで26%減った。
根拠:スマホ向けが半導体事業に占める比率は、前年同期の70.9%から57.0%へ下がった。2026年度通期でもスマホ向けは240.72億ドルと13%減である。
次:報道各社はメモリー不足がスマホの生産を抑えたと伝えている。メモリーの供給が戻るまで、スマホ向けの回復は見込みにくい。
クアルコム半導体事業の用途別売上:前年同期からの増減(億ドル)
読み方:車載とIoTで約10億ドル増やしたが、スマホ向けの18億ドル超の減少を埋めきれず、半導体事業は8億ドル減った。出所:クアルコムの決算資料(2026年7〜9月期、米証券取引委員会への提出書類)から本誌計算。
2. 利益率5ポイント低下:部材高が直撃
結論:売上の減り方より、利益の減り方が大きい。非GAAPの税引前利益は26.66億ドルで30%減、1株利益は2.17ドルで28%減だった。
根拠:会社は決算資料で、ウエハー製造、組み立て、検査、先端パッケージ、メモリーなど幅広い部材のコストが上がっていると明記した。半導体事業の税引前利益率は29%から24%へ5ポイント下がった。
次:日本の投資家にとっては、裏返しの意味がある。メモリーが高いことは、キオクシアなどメモリー各社には追い風、それを買う側には逆風である。同じ「メモリー高」で明暗が分かれる構図は続く。
3. 車載89%増:スマホ以外は伸びている
結論:脱スマホの芽ははっきり出ている。車載向けは19.90億ドルで89%増、IoT(モノのインターネット)向けは18.88億ドルで4%増だった。
根拠:車載とIoTの合計は38.78億ドルで、前年同期の28.60億ドルから36%増えた。クリスティアーノ・アモン最高経営責任者(CEO)は、2027年度のスマホ以外の売上が60%超伸びるとの見通しを示した。データセンター事業の売上目標50億ドルも据え置いた。
次:アマゾンとのAIデータセンター向けの協業も発表された。ただし米中間選挙のあと、データセンター投資そのものへの逆風が意識されている。目標50億ドルの実現度は、四半期ごとに確かめるしかない。
4. 次の四半期は104億〜112億ドル
結論:10〜12月期の見通しは、売上高104億〜112億ドル、非GAAPの1株利益2.15〜2.35ドル。中央値はそれぞれ108億ドルと2.25ドルである。
根拠:半導体事業は90億〜96億ドル、ライセンス事業(QTL)は13億〜15億ドルの見通し。ブルームバーグは利益見通しを「さえない」と報じ、時間外の株価もそれに反応した。
次:米国時間5日の通常取引が本番である。時間外の160.25ドルは52週高値259.92ドルを38.3%下回る。日本時間5日23時30分の寄り付きで、下げが広がるか縮むかを確かめたい。
5. 値上げの効果は2027年度後半
結論:利益率の回復には時間がかかる。会社は部材高を製品価格に反映させていると説明し、その効果が粗利益率に出そろうのは2027年度の下半期(2027年4〜9月)だとした。
根拠:株主還元は手厚い。2026年度は自社株買い78.17億ドルと配当38.54億ドルで、合計116.71億ドルを株主に返した。アップル、ファーウェイ、トランシオンとのライセンス契約の長期更新も決めている。
次:それでも半年以上は利益率の重しが残る。本誌は今週の決算番付でクアルコムの決算翌日の上昇確率を35%と見積もり、「×」と判定した。時間外の値動きはその見立てに沿っている。同じ夜に決算を出したアームの影響はソフトバンクグループの記事で扱った。
数字のまとめ
| 項目 | 7〜9月期 | 前年同期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高(GAAP) | 103.22億ドル | 112.70億ドル | −8% |
| 1株利益(非GAAP) | 2.17ドル | 3.00ドル | −28% |
| スマホ向け | 51.37億ドル | 69.61億ドル | −26% |
| 車載向け | 19.90億ドル | 10.53億ドル | +89% |
| IoT向け | 18.88億ドル | 18.07億ドル | +4% |
| ライセンス事業(QTL) | 13.04億ドル | 14.09億ドル | −7% |
| 半導体事業の税引前利益率 | 24% | 29% | −5ポイント |
30秒まとめ:スマホ向けが26%減り、部材高で利益率が5ポイント下がった。車載とIoTは36%伸びたが、スマホの穴を埋めるにはまだ小さい。値上げの効果が出る2027年度後半までは、利益率の回復を待つ局面だ。
主な参照
- 2026年度第4四半期と通期の決算、10〜12月期の見通し/米証券取引委員会(クアルコムの提出書類)
- 11月4日の終値と時間外の株価、52週高値/Google Finance、日足/stockanalysis.com
- メモリー不足とスマホ販売、時間外の下落についての報道/CNBC、ブルームバーグ、ロイターの見出し(Google News)
データ基準日:2026年11月4日の米国市場の終値と、同日米東部時間19時59分の時間外取引の株価。時間外の株価は取引時間中の値で、終値ではない。米国時間11月5日の通常取引の値動きは反映していない。メモリー不足がスマホ生産を抑えたという説明と見通しへの評価は報道によるもので、市場予想(コンセンサス)の数値は本誌では一次情報で確認できなかったため掲載していない。上昇確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














