三菱商事(8058)は11月4日14時、上限1兆円・4億2,000万株の自己株式取得と、2027年3月期の純利益予想の1兆1,000億円から1兆2,000億円への引き上げを発表した。株価は同日、前営業日比376円高(7.88%高)の5,148円で取引を終え、高値引けとなった。同じ日に決算を発表した三井物産、伊藤忠商事、丸紅はいずれも前営業日比で横ばいから下落だった。
4社の4〜9月期(中間期)の純利益は、いずれも前年同期を上回った。三井物産と丸紅は通期予想を引き上げ、丸紅は増配も決めた。それでも株価が上がったのは、新たな自社株買いを出した三菱商事1社だけだった。日経平均株価は同日、米中間選挙の開票を受けて893円23銭安(1.42%安)の6万2,188円63銭で取引を終えている。
4社の中間決算と通期予想
| 会社 | 発表時刻 | 中間期純利益 | 前年同期比 | 通期予想(修正前→修正後) | 進捗率 | 株主還元の変更 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 三菱商事(8058) | 14:00 | 6,196億円 | +74.2% | 1兆1,000億円→1兆2,000億円 | 51.6% | 自社株買い上限1兆円(全株消却予定) |
| 三井物産(8031) | 12:00 | 5,748億円 | +35.7% | 9,200億円→1兆500億円 | 54.7% | なし(年間配当140円は据え置き) |
| 伊藤忠商事(8001) | 13:00 | 5,804億円 | +16.0% | 9,500億円(据え置き) | 61.1% | なし(年間配当44円は据え置き) |
| 丸紅(8002) | 11:00 | 3,380億円 | +10.6% | 5,800億円→6,300億円 | 53.7% | 年間配当を115円→125円に増額 |
三菱商事の中間期純利益は6,196億9,600万円で、前年同期の3,557億9,600万円から74.2%増えた。通期予想の1兆2,000億円は、前期比49.9%増にあたる。営業キャッシュフローの通期見通しも1兆2,500億円から1兆3,800億円へ引き上げた。年間配当予想は125円で据え置いた。
三井物産の中間期純利益は5,748億6,200万円、前年同期比35.7%増。通期予想は9,200億円から1兆500億円へ14.1%引き上げ、前期比では25.9%増となる。基礎営業キャッシュフローの通期見通しは1兆500億円から1兆1,200億円に上げた。8月に決めた上限2,000億円の自社株買い(2027年1月29日まで)は継続中で、今回の追加はない。
伊藤忠商事の中間期純利益は5,804億7,200万円、前年同期比16.0%増。通期予想9,500億円は据え置いた。進捗率は4社で最も高い61.1%だった。丸紅は中間期純利益3,380億2,700万円(10.6%増)。通期予想を5,800億円から6,300億円へ上げ、年間配当予想を115円から125円に増やした。
三菱商事の自社株買いの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得総額の上限 | 1兆円 |
| 取得株数の上限 | 4億2,000万株 |
| 規模 | 発行済株式総数(自己株式を除く)の約6%(11月2日終値で取得した場合) |
| 取得期間 | 2026年11月5日〜2027年7月31日 |
| 取得方法 | 東京証券取引所での市場買付 |
| 消却 | 取得した全株式を2027年8月31日に消却予定 |
会社は取得の理由を「『経営戦略2027』における株主還元及びキャッシュフロー配分の考え方に基づき、資本効率の向上を図るもの」と説明している。同時に「財務健全性を維持しつつ、成長戦略の実現に向けた規律ある投資について引き続き積極的に検討していく方針」としている。取得は発表翌日の11月5日から始まる。
11月4日の株価
商社5社と日経平均の騰落率(11月4日終値、前営業日比 %)
出所:Yahoo!ファイナンス、株探(2026年11月4日の終値、前営業日は11月2日)。三菱商事は14時に上限1兆円の自社株買いを発表した。
| 銘柄 | 終値 | 前営業日比 | 日中安値 | 安値からの戻り |
|---|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 5,148円 | +376円(+7.88%) | 4,508円 | +14.2% |
| 伊藤忠商事 | 2,271円 | 0円(0.00%) | 2,184円 | +4.0% |
| 三井物産 | 4,900円 | −17円(−0.35%) | 4,680円 | +4.7% |
| 住友商事 | 1,654円 | −10.5円(−0.63%) | 1,585円 | +4.4% |
| 丸紅 | 4,754円 | −67円(−1.39%) | 4,557円 | +4.3% |
| 日経平均 | 62,188.63 | −893.23(−1.42%) | 60,030.10 | +3.6% |
5社の日中安値は、いずれも13時台に集中した。日経平均が前営業日比3,051円76銭安の6万30円10銭まで下げた時間帯と重なる。三菱商事も13時ごろに4,508円(5.5%安)まで売られていた。決算と自社株買いの発表は14時。そこから終値までに640円上げ、5,148円の高値で引けた。
三井物産は12時の発表後も下げ幅を広げ、13時ごろに4,680円(4.8%安)を付けた。日本経済新聞は「今期上方修正も売りに押される」と報じた。終値は4,900円で、下げ幅は17円まで縮小した。10月30日終値の5,006円と比べると2.1%安である。丸紅は11時の発表後、13時台に4,557円まで下げ、終値は67円安。材料出尽くしの売りとする報道がある。
業績を押し上げた前提:原油・銅・為替
三井物産の決算資料によると、中間期の原油価格(日本向け原油平均価格、JCC)の実績は1バレル114ドルで、5月時点の前提84ドルを30ドル上回った。下期の前提は110ドル、通期では112ドル。銅(ロンドン金属取引所)の中間期実績は1トン1万3,088ドルで、期初前提の1万2,000ドルを上回った。下期前提は1万4,060ドル。為替の中間期実績は1ドル160.04円、下期前提は155円である。同社は中東情勢の通期純利益への影響を、差し引き400億円のプラスと示している。
丸紅は通期の前提を、銅が1万2,000ドルから1万3,446ドルへ、WTI原油が60ドルから87ドルへ、為替が150円から157円へと見直した。伊藤忠商事の通期前提はブレント原油80ドル(中間期実績93.94ドル)、為替150円(同159.49円)。4社のなかで最も円高・原油安寄りの前提である。三菱商事の決算短信には商品価格の前提は記載されていない。
為替の前提が実勢と離れている点は共通する。ドル円は11月4日の日本時間15時47分時点で158円台前半だった。伊藤忠商事の150円、三井物産の下期155円、丸紅の157円はいずれもこの水準より円高側にある。
関連記事と今後の日程
決算前の論点は11月3日の記事で整理した。同日の相場全体の動きは中間選挙の記事と寄り付き1時間の記事にある。
- 11月5日:三菱商事の自社株買い開始(市場買付、2027年7月31日まで)
- 11月5日:トヨタ自動車、ソニーグループ、任天堂が決算発表
- 11月13日:三井物産が半期報告書を提出予定
- 12月2日:三井物産の中間配当の支払開始予定
- 2027年1月29日:三井物産の自社株買い(上限2,000億円)の取得期限
主な参照
- 11月4日の適時開示一覧(各社の決算短信と発表時刻)/東京証券取引所 TDnet
- 三井物産 2027年3月期第2四半期決算説明資料(商品価格・為替の前提、中東情勢の影響)/三井物産
- 伊藤忠商事 2027年3月期第2四半期決算短信/伊藤忠商事、決算説明資料/伊藤忠商事
- 各社の株価と日中安値/株探、Yahoo!ファイナンス
- 三井物産株の値動きに関する報道/日本経済新聞
- 日経平均の終値と日中安値/株探
データ基準日:2026年11月4日の東京市場の終値。決算の数値は各社が同日に開示した決算短信・説明資料による。日中安値の時刻はYahoo!ファイナンスの5分足からの読み取りで、おおよその時刻である。ドル円は同日15時47分時点の取引時間中の気配値。市場予想(コンセンサス)との比較は、本稿執筆時点で数値を確認できなかったため載せていない。三井物産と丸紅の株価の値動きの理由は報じられている見方で、会社による説明ではない。住友商事は11月2日に決算を発表しており、本稿では株価のみを参考に掲載した。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












