朝7時台にドル円を158円台後半で持っていた向きは、昼休みの東京で画面を見て眉をひそめただろう。米中間選挙の開票が進み、民主党の優勢が伝わるにつれて、ドル円は日本時間4日4時30分台の高値158.77円から、11時45分台に157.54円まで押し戻された。1円23銭の下げである。11時55分時点では157.68円。今朝のドル円見通しで筆者が引いた撤退線157.70円を、取引時間中に一度割り込んだことになる。
先に今朝からの変化を書いておく。朝の時点では「159円台を一度は試す」とみていた。開票の流れが変わった以上、この見立ては引っ込める。今週は157円台前半を試しにいく下向きの週とみて、158.60円の200日線を戻り売りの場所に置き換える。理由と、さらに逆になった場合の線を順に書く。
テープ:今日の下げは円高ではなくドル安だ
今朝の記事で、3日の上げは「ドル高ではなく円安だった」と書いた。今日はちょうどその裏返しになっている。ドル指数は日本時間0時15分台の101.94から10時45分台の101.25まで下げ、11時45分時点で101.32。ユーロドルは1.1178ドルから1.1264ドルまで上げた。一方で、ユーロ円は今日、177.14〜177.81円の範囲にとどまり、11時55分時点で177.44円。円が売られる日でも買われる日でもない値動きだ。
つまり、売られているのはドルで、円が全面的に買われているわけではない。日経平均株価が前場で2,246円安の6万835円まで下げ、ナスダック100先物が11時35分時点で1.94%安となったわりに、円買いは鈍い。リスク回避の円買いが主役なら、ユーロ円も下げているはずだ。ここは大事な点で、ドル円の下げはドル側の材料、つまり米国の政治と金利で決まる局面に入ったということである。
材料の中身も確認しておく。ロイターは日本時間4日10時すぎ、上院選でジョージア州など4州で民主党候補が勝ったと報じた。NHKの集計では、同日午前の時点で上院の当選確実は民主党9、共和党3。日本経済新聞は、東証で日経平均が一時6万2,000円を割った10時台の下げを「米中間選、民主優勢で」と伝えた。テレビ朝日系の報道は、民主党が議会を握ればAI関連の規制が強まるとの警戒が株売りの背景にあると伝えている。ただ、ロイターは上院について、接戦や法廷闘争などで大勢判明まで数日かかる可能性も指摘している。結果はまだ確定していない。
需給:上で買った玉の投げが残っている
3日のニューヨーク市場では、東京勢が休んでいる間に158円台後半まで買い上げられた。今朝の記事で書いたとおり、材料なき円安で、海外勢が円売りの持ち高を積み増した可能性が高い。その玉が、今日の東京で158円台後半から投げを強いられている。4時30分台の高値から昼までの値幅の大半は、9時以降、開票が本格化してからのものだ。日本時間8時台はまだ158.72円にいた。
投げは一度で終わらないことが多い。158円台で買った向きの損切りは、10月の値幅156.078〜158.949円の中で何段にも分かれて置かれているはずだ。正直、どこで売りが枯れるかは開票次第だが、157円台前半には10月下旬の押し目がある。欧州中央銀行(ECB)の参照レートでは10月30日が157.25円、10月23日が156.80円だった。ここが次の受け皿になる。
金利差の側からの支えは弱い。米財務省の公表で、3日の米10年債利回りは4.95%、10月28日は5.05%だった。米金利は下向きで、民主党の優勢が財政拡張の後退につながるとの見方が広がれば、長期金利はさらに下押しされやすい。日銀は10月30日に政策金利を1.25%で据え置き、次の会合は12月17〜18日。円金利が急に上がる日程はない。ドル円の行方は、米金利とドルの側にかかっている。
ドル円の水準の地図(11月4日昼、円)
読み方:オレンジは筆者が判断に使う水準、青は今日の安値、灰色は参考水準。11時55分時点の気配値は157.68円。出所:ヤフーファイナンス(15分足)、欧州中央銀行、外為どっとコム総合研究所、筆者。
水準の地図:157.70円の終値と158.60円の戻り
地図を読む。まず157.70円。今朝の撤退線で、3日の安値圏157.75円のすぐ下にある。今日の東京時間で一度割ったが、筆者が見るのは終値だ。4日のニューヨーク市場の終値でここを下回っていれば、200日線の上抜けは「だまし」だったと確定する。
下は、今日の安値157.54円、ECB参照レートで10月30日の157.25円、10月23日の156.80円、そして10月の安値156.078円。上は、158.60円付近の200日移動平均線と、今日4時30分台の高値158.77円。開票の結果が民主党寄りに固まるほど、200日線は上値を抑える線として意識されやすくなる。
筆者の見立て:今週は157円台前半、戻りは売り
見立てを言い切る。今週のドル円は弱気だ。根拠は3つある。第一に、下げの主因がドル安であること。ユーロ円が下げていない以上、円の材料ではなく米国の材料で動いており、開票が進むほどドル売りの理由は積み上がる。第二に、上で買った玉の投げがまだ残っていること。158円台後半の買いは、3日の休場日に積まれた分が大きい。第三に、外為どっとコム総合研究所の黒川健氏が今朝示した筋書きで、民主党が上下両院を制した場合は157円台前半への下押しリスクがあるとされ、市場はその方向に動き始めていることだ。
確率で置く。今週(6日の米雇用統計まで)の着地を、157円割れが35%、157〜158.6円の範囲内が45%、200日線158.60円を回復して終える週が20%とみる。今朝の確率(159円台に一度乗せる55%)からは大きく書き換えた。中期、12月の日米の会合までの1カ月半は、155.5〜159円の範囲を想定する。下限は今朝の想定より1円50銭下げた。
ただし、追いかけて売る場面ではない。開票速報の値幅は、結果が固まる前に一度戻されやすい。「人の行く裏に道あり花の山」という。民主党の勝利が誰の目にも明らかになった時点で、ドル売りは一巡するとみている。筆者は158円台前半への戻りを待って売る構えで、157円台前半での新規の売りは見送る。
逆になったら:158.60円の終値回復で撤退
弱気の見立てが外れる形は2つある。1つは、ニューヨーク市場の終値で158.60円の200日線を回復した場合だ。共和党が上院を維持するなど、開票の後半で流れが変われば十分にありうる。その場合は戻り売りの構えを捨て、10月高値の158.949円を再び視野に入れる。もう1つは、6日の米10月雇用統計が強く、米金利が上に跳ねた場合。選挙よりも景気の数字が勝つ形で、このときも売りは手仕舞う。
下に走りすぎた場合の目安も置いておく。156円台前半、10月安値の156.078円に近づけば、今週の下げとしては十分だ。そこまで行けば筆者は利食いを優先する。
今週の監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 11月4日 午後〜 | 米中間選挙の開票の続き | 上院の勢力。民主党が両院なら157円台前半 |
| 11月4日 22時15分 | 米10月ADP雇用統計 | 雇用統計の前哨戦。弱ければドル売りに拍車 |
| 11月5日 0時 | 米10月ISM非製造業景況指数 | 米景気の底堅さ |
| 11月5日 早朝 | 4日のニューヨーク市場の終値 | 157.70円を終値で割り込むか |
| 11月5日 21時 | 英中銀の政策金利発表 | ポンド高ならドル売りの連鎖 |
| 11月6日 22時30分 | 米10月雇用統計 | 今週最大の材料。強ければ弱気の見立てを撤回 |
| 12月10日 4時 | FOMCの結果発表 | FRBが利上げ論を残すか |
| 12月17〜18日 | 日銀の金融政策決定会合 | 利上げ提案が広がるか |
11月1日に米国が冬時間に切り替わり、米指標の発表は夏の間より1時間遅くなった。雇用統計の22時30分のように、自分の住む地域の時刻に直して確かめたいときはタイムゾーン変換ツールが手早い。
中間選挙の結果が資産ごとにどう効くかの整理は中間選挙の資産別の見通しで書いた。海外FX業者の選び方はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- ドル円・ユーロ円・ユーロドル・ドル指数の気配値(4日0時15分〜11時55分)/ヤフーファイナンス
- ドル円の参照レート(10月23日・30日)/欧州中央銀行(Frankfurter経由)
- 日経平均の前引け、米株価指数先物(11時35分)/株探(MINKABU PRESS)
- 上院選で民主党候補が4州で勝利/ロイター、上院の当選確実の集計/NHK
- 民主優勢で日経平均が6万2,000円割れ/日本経済新聞、AI規制への警戒/テレビ朝日系(Yahoo!ニュース)
- 米国債利回り/米財務省
- 金融政策決定と決定会合の日程/日本銀行、英中銀の会合日程/イングランド銀行
- 雇用統計の公表予定/米労働省
データ基準日:2026年11月4日の東京時間(為替は11時55分時点)。為替は取引時間中の気配値で、終値ではない。高値・安値は情報ベンダーの15分足にもとづき、業者によって数銭の差が出る。ECBの参照レートは毎営業日の欧州中部時間14時15分の値で、取引時間中の高値・安値とは異なる。中間選挙の開票は本稿執筆時点で続いており、当選確実の数は報道機関ごとに異なる。確率と価格の範囲は筆者の見立てで、将来の相場を保証するものではない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















