けさ7時、豪州の10月のPMI速報値が50を割り込んだのを見て、豪ドルを投げた向きは拍子抜けしただろう。豪ドル米ドルは0.70ドル台を割り込まず、日本時間16時台も0.7020ドル前後で踏みとどまっている。景気の数字は悪いのに、通貨が崩れない。筆者はこのちぐはぐさにこそ、次の値幅のヒントがあるとみている。
結論から書く。筆者の見立ては「押し目は買い、28日の豪消費者物価(CPI)で0.71ドル台を試す」だ。短期(1〜2週間)の想定レンジは0.6960〜0.7120ドル、終値で0.6960ドルを割ったらこの見立ては撤回する。中期(1〜3カ月)は、11月3日の豪準備銀行(RBA)の決定次第で0.72ドル台の戻りもあり得るが、50日移動平均線を抜けるまでは強気に傾けない。
テープ——景気は崩れ、通貨は崩れず
まず値動きを確認する。豪ドル米ドルの日足終値は、10月15日に一時0.6895ドルまで売られて3カ月ぶりの安値を付けた後、16日0.6919ドル、19日0.6972ドル、20日0.6983ドル、21日0.7007ドル、22日0.7029ドルと4日続けて切り上げた。21日と22日の高値はいずれも0.7038ドルで、ここが今週の天井になっている。
そこへ23日朝、S&Pグローバルが豪州の10月の総合PMI速報値を47.7と発表した。9月の51.3から大きく落ち、5カ月ぶりに好不況の分かれ目の50を割った。サービス業は51.9から47.8へ悪化し、製造業は49.7で横ばいだった。普通なら豪ドルは売られる場面だ。実際、23日の安値は0.7008ドルまで下がったが、0.70ドルの大台は守った。
崩れなかった理由ははっきりしている。同じPMIで、仕入れ価格の上昇ペースが5月以来の速さになったからだ。景気が冷えても物価は冷えていない。市場はこれを「RBAは利上げをやめられない」と読んだ。
需給の解剖——金利差が豪ドルの側に傾いた
今週、相場の土台を変えたのは豪州ではなく米国である。22日の米国では、AI関連株の急落を受けて米10年債利回りが米財務省の公表値で5.13%から4.96%へ17bp下がった。2年債も4.81%から4.65%へ16bp低下した。米国の利上げ観測が後退すれば、ドルを持つ利点は薄れる。詳しくは米長期金利の解説にまとめた。
一方のRBAは、9月30日に政策金利を0.25%引き上げて4.60%とした。今年4回目の利上げである。米国の政策金利は3.75〜4.00%だから、豪州のほうが上にある。そのうえで21日、RBAのハウザー副総裁がシドニーの講演で「インフレの見通しは8月の報告で示したより大幅に悪化している」と述べた。7〜9月期の物価についても、8月時点の想定を上回りそうだとの見方を示している。
11月3日の利上げを市場がどこまで織り込んでいるかは、報道によって4割台から6割台まで幅がある。正確な数字は確認できないが、ハウザー発言の前後で大きく上がったことは複数の報道が一致して伝えている。正直、この織り込みの幅の広さ自体が値幅の燃料だ。28日のCPIで、どちらかに一気に寄る。
逆風もある。豪ドルは株価と一緒に動きやすい通貨で、AI関連株の売りが世界に広がれば、金利差に関係なく売られる。9月の雇用統計では失業率が4.7%へ上がり、ハウザー副総裁自身も「労働市場は緩んでいる」と認めた。景気の弱さを理由にRBAが利上げを見送れば、今週の戻りはそっくり吐き出しになる。
水準の地図
豪ドル米ドルの水準の地図(ドル)
読み方:現在値は20日線の上、200日線と50日線の下にある。短期は上向き、中期は下向きという並びだ。0.7038〜0.7048ドルの関門を越えると50日線、その上に戻り売りの帯が待つ。損切りは終値で0.6960ドル割れ。出所:Yahoo Financeの日足から本誌計算(10月22日終値まで)。
移動平均線の並びを見ると、20日線が0.6977ドル、200日線が0.7048ドル、50日線が0.7077ドルにある。今の0.702ドル台は20日線の上だが、200日線と50日線の下だ。つまり短期の流れは上向きに変わったが、中期の流れはまだ下向きのままである。上の0.7038〜0.7048ドルには今週の高値と200日線が重なっており、最初の関門になる。
その上の0.7077ドルの50日線を抜けると、9月下旬に崩れた0.7110〜0.7120ドルの帯が戻り売りの待ち構える場所になる。9月22日の終値は0.7119ドルで、翌23日から一気に0.70ドル台へ落ちた。あの日に買って捕まった向きの戻り売りが出る値段だ。下は20日線の0.6977ドルと19日安値の0.6962ドルが一つ目の受け皿で、ここを割ると10月の二番底の0.6895〜0.6905ドルまで支えが薄い。
筆者の見立て——押し目買い、根拠は3つ
筆者は豪ドル米ドルを強気でみる。根拠は3つだ。第一に、金利差が豪ドルの側に傾いた。RBAが利上げを続ける一方で、米国の利上げ観測は22日の債券高で後退した。第二に、悪いPMIを0.70ドルで受け止めた。悪材料で下げない相場は、売り手が尽きかけている合図である。第三に、10月15日の0.6895ドルで二番底を付けてから、日足が4日連続で切り上がった。日柄の上でも戻りの初動とみてよい。
| 期間 | 想定レンジ | 筆者の確率 | 前提 |
|---|---|---|---|
| 短期(〜11月6日)・本線 | 0.7040〜0.7120ドル | 50% | 28日の豪CPIが上振れ、11月3日の利上げ観測が強まる |
| 短期・横ばい | 0.6960〜0.7050ドル | 30% | CPIが予想並み、RBAの判断待ちでもみ合い |
| 短期・下振れ | 0.6890〜0.6960ドル | 20% | AI株安が再燃、またはCPI下振れで利上げ観測が後退 |
| 中期(〜12月末) | 0.6950〜0.7240ドル | — | RBAが11月と12月のどちらかで利上げすれば上半分、見送りが続けば下半分 |
逆になったら——損切りは0.6960ドル
見立てが外れたときの線を先に決めておく。終値で0.6960ドルを割ったら、押し目買いの見立ては撤回する。19日の安値0.6962ドルの少し下で、ここを割れば今週の戻りがすべて消えたことになる。その場合の次の受け皿は10月の二番底の0.6895〜0.6905ドルで、そこも割れれば0.68ドル台半ばまで値幅が出かねない。
上の撤退条件も書いておく。28日のCPIが強くても、0.7077ドルの50日線で2日続けて跳ね返されたら、戻り売りに押し返されたと判断して利食いを急ぐ。中期の強気に切り替えるのは、終値で50日線を上抜けてからだ。
監視リスト(日本時間)
| 日時 | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 10月23日 22時45分 | 米国の10月PMI速報値 | 米国の景気減速が確認されれば米金利低下が続く |
| 10月28日 9時30分 | 豪州の7〜9月期CPI | ハウザー副総裁の「8月想定を上回る」が当たるか |
| 10月29日 3時 | FOMCの結果発表(27〜28日開催) | 追加利上げの有無と、議長会見での年内見通し |
| 10月29日 21時30分 | 米国の7〜9月期GDP速報値、9月のPCE物価指数 | 米国の物価の勢い |
| 11月3日 | RBAの政策金利発表(2〜3日開催) | 4.60%からの追加利上げの有無 |
今週前半の値動きとハウザー発言直後の織り込みの変化は、21日の豪ドル米ドル見通しで扱った。円で豪ドルを持つ人は豪ドル円見通しも参考になる。FX口座の選び方や取引の基本は、本誌のFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 豪ドル米ドルの日足(高値・安値・終値)と移動平均線(本誌計算)/Yahoo Finance
- 豪州の10月のPMI速報値(S&Pグローバル発表)/investingLive
- ハウザー副総裁の発言(10月21日、シドニー)/豪準備銀行
- 政策金利の推移(9月30日に4.60%)/豪準備銀行、会合日程/豪準備銀行
- 9月の労働力調査(失業率4.7%)とCPIの公表日程/豪統計局、公表予定
- 11月の利上げ確率の報道/Pound Sterling Live
- 米国債利回り/米財務省、米国の政策金利とFOMC日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:豪ドル米ドルの終値は2026年10月22日(ロンドン時間の日足)まで、23日の値は日本時間16時台の取引時間中の値である。移動平均線は22日までの日足終値から本誌が計算した。為替の日足はデータの提供元により数値が異なることがある。PMIは速報値で、11月上旬の確報で改定される場合がある。11月の利上げ確率は報道による推計で、一次情報(ASXの金利見通し)では確認できていない。見立て、レンジ、確率、損切りの水準は筆者(編集部)の整理であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。外国為替証拠金取引は元本を上回る損失が生じる可能性がある。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















