米雇用統計(NFP)が16万2000人増と予想の約3倍で着地した直後の寄り付きである。だが株価指数の先物は下げている。S&P500先物は0.24%安、ダウ先物は0.36%安、一方でナスダック100先物は0.06%高とほぼ変わらず。債券は動いたが、株はまだ判断を保留している。そして個別では、当サイトが直近に見立てを置いた2銘柄がきれいに明暗を分けた。
寄り付き前の数字
| 項目 | 水準 | 前日比 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| S&P500先物 | 7,736.50 | −0.24% | 前日は1.06%高。利益確定と金利上昇が重なる |
| ナスダック100先物 | 29,541.00 | +0.06% | ほぼ変わらず。ハイテクは崩れていない |
| ダウ先物 | 53,551.00 | −0.36% | 3指数で最も弱い |
| 米2年債利回り | 4.389% | +5.5bp | 利上げ観測の織り込みが進む |
| 米10年債利回り | 4.780% | +1.8bp | 短期ほどは動かない |
| 米30年債利回り | 5.242% | −0.1bp | むしろ小幅低下。カーブは平坦化 |
| ドル円 | 155.87円 | +0.08円 | 予想3倍の統計にしては小さい反応 |
| 金 | 4,430.50ドル | −2.41% | 本日いちばんの下落。金利上昇に素直 |
| WTI原油 | 90.23ドル | −1.17% | 90ドル台は維持 |
| 恐怖指数(VIX) | 14.12 | −1.40% | 低い。株式市場は警戒していない |
今朝の形をひとことで言えば、「短い金利は上がり、長い金利は動かず、金だけが大きく売られた」である。2年債が5.5bp上がる一方で30年債は0.1bp下げた。これは財政不安による長期債売りではなく、利上げ観測が短い年限を押し上げる形だ。金の2.41%安も、利息を生まない資産が金利上昇で不利になるという教科書どおりの反応である。
明暗が分かれた2銘柄——当サイトの見立ての答え合わせ
| 銘柄 | 9月3日終値 | 当サイトの見立て | 結果 |
|---|---|---|---|
| デル(DELL) | 516.39ドル(+4.91%) | 9月2日に「まず500ドル、52週高値514ドルを抜ければ530〜550ドル」と予想 | 514ドルを終値で突破。予想レンジの上段に入った |
| ブロードコム(AVGO) | 357.16ドル(−2.74%) | 9月1日に「2027年度のAI売上目標を引き上げるかが1番。数字の良し悪しではなく期待値を更新できるかで決まる」と指摘 | 決算は上振れ、それでも下落。指摘した構図どおりになった |
デルについては9月2日に強気へ転じ、「まず500ドル、514ドルを抜ければ530〜550ドル」と書いた。9月3日の終値は516.39ドルで、52週高値を終値で上抜けた。撤退ラインに置いた456.01ドルからは十分に離れている。次の関門は530ドル台である。
ブロードコムは逆になった。売上は前年比86%増の296億ドルで予想の294.5億ドルを上回り、調整後EPSも3.32ドルと予想3.23ドルを超えた。それでも下げたのは、次期の売上計画348億ドルが市場予想350.5億ドルに届かなかったからである。9月1日の番付記事で「1番の目標引き上げが、2番と3番より重い」「数字の良し悪しではなく、期待値を更新できるかどうかで判定が決まる」と書いた点が、そのまま出た形だ。
2銘柄から引き出せる共通点。デルは通期EPS計画を17.90ドルから25.50ドルへ42%引き上げて買われ、ブロードコムは実績で上回りながら次期計画が届かず売られた。いまの市場が値段を付けているのは、過去の四半期ではなく、会社が示す次の数字である。
なぜ円はほとんど動かなかったのか
今朝いちばん説明が要るのはドル円である。予想の3倍という雇用統計に対し、動いたのはわずか0.08円だった。普通なら、米金利が上がれば日米の金利差が開き、円は売られる。今回それが起きていない。
理由は日本側にある。9月17日から18日の日銀会合で0.25%の利上げがほぼ完全に織り込まれている。米国が9月16日に上げても、日本が18日に上げれば金利差の拡大は打ち消される。市場は片側だけでなく、両側を同時に見ている。米国の統計が円安に直結しない理由がここにある。
もうひとつ、統計の中身も効いている可能性がある。増えた16万2000人のうち、飲食サービスが5万9000人、地方自治体の学校職員が4万2000人で、この二つで6割を占めた。一方で賃金の高い情報産業は2万3000人減っている。平均時給の伸びも前年比3.1%にとどまった。総数は強いが、賃金インフレを煽る中身ではない。為替市場はそこを見て、反応を抑えたとも読める。
債券市場の形も同じ方向を指している。2年債が5.5bp上がる一方、30年債は0.1bp下げた。短い年限だけが動くのは、目先の利上げを織り込む動きであって、長期のインフレ懸念ではない。金が2.41%安と大きく売られたのも、当面の金利上昇に素直に反応した形である。株式先物が小幅安にとどまり、恐怖指数が14台と低いのは、この統計を「景気は悪くないが過熱でもない」と受け止めた市場の答えだろう。
きょうの見どころ
- 2年債利回りが4.40%を超えるか。超えれば2025年1月の高値を更新し、9月利上げの織り込みが一段進む
- ドル円が156円台を回復するか。予想3倍の雇用統計で0.08円しか動いていない。日銀の利上げ観測が円を支えている構図が続くかどうか
- 金の下げ止まり。2.41%安は大きい。4,400ドルを割るなら、金利上昇を本気で織り込みにいったことになる
- デルが530ドル台に乗せるか。52週高値を抜けた直後は値動きが速くなりやすい
- 週明けの東京。9月4日の日経平均は1.26%高の6万5020円で、雇用統計の6時間前に引けている。この数字を織り込む最初の場は9月7日月曜になる
来週の日程も置いておく。9月15日から16日に米連邦公開市場委員会(ドットプロット公表)、17日から18日に日銀金融政策決定会合。雇用統計はFOMC前の最後の主要指標だった。統計の中身と修正については別稿で分解した。
主な参照
- 雇用統計の原文(2026年8月分)/米労働省労働統計局
- ブロードコムの決算と市場反応/Yahoo Finance
- FOMC日程/米連邦準備制度理事会、金融政策決定会合日程/日本銀行
- 株価・先物・債券利回り・為替・商品/CNBC
データ基準日:2026年9月4日、米東部時間9時18分前後(日本時間22時18分前後)。株価の前日比は9月3日終値との比較。本記事は寄り付き前時点の情報にもとづく速報であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。寄り付き後の値動きは記載の水準から大きく変わることがある。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













