まず下の数字を見てほしい。テスラ(TSLA)の株価は10月16日、寄り付き前の取引で約5%上がった。15日夜に新型スポーツカー「ロードスター」をお披露目したためだ。ところがニューヨーク時間10時01分(日本時間23時01分)には367.76ドル、前日比1.47%高まで上げ幅を縮めている。いずれも取引時間中の値である。
空中で向きを変え、スペースXの技術を使った噴射装置で他の車を飛び越える。見せ場は派手だったが、生産開始は2028年で価格も示されなかった。株価は前日まで5日続落しており、10月21日の7〜9月期決算を前にした戻りの一場面にすぎない可能性がある。本稿では、今のテスラ株を4枚の図で読む。
図1:5日続落のあとの反発——200日線の下にいる
テスラの終値(2026年8月3日〜10月15日)
読み方:10月9日から15日まで5日続落し、ロードスター発表前に5.3%下げていた。200日平均(388.49ドル)はこの期間の高値圏とほぼ重なる。出所:Yahoo!ファイナンスの日足終値。
株価は10月9日の382.70ドルから15日の362.44ドルまで、5営業日続けて下げた。下げ幅は5.3%。16日の反発はこの下げの一部を戻したにすぎない。年初来では、2025年末の449.72ドルから2割近く安い水準にある。
移動平均線との位置関係も確認しておく。15日終値時点の20日平均は370.81ドル、50日平均は358.76ドル、200日平均は388.49ドル。株価は50日平均の上、20日平均と200日平均の下にいる。上昇基調に戻ったと言うには、少なくとも200日平均の回復が要る。14日間の相対力指数(RSI)は46.5で、売られすぎでも買われすぎでもない。
図2:ロードスターは何を見せ、何を見せなかったか
ロードスター発表会で示されたこと・示されなかったこと
読み方:性能の数字は出たが、売上と利益につながる価格と台数は示されなかった。株価の反応が続かなかったのはこのためとみる。出所:ロイター、TechCrunch。
ロイター通信によると、発表会は15日、テキサス州マクレガーにあるスペースXの試験場で開かれた。テスラの車両技術責任者ラース・モラビー氏は、時速0から60マイル(約97キロ)までの加速が1秒未満、最高速度は時速230マイル(約370キロ)超と説明した。航続距離は300マイル(約480キロ)超で、2017年にイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が約束した距離の半分に届かない。予約金は「パフォーマンス」が5万ドル、噴射装置付きの「スラスト」が25万ドル、「ロケット」は招待制とされる。
市場の評価は割れた。米ディープウォーター・アセット・マネジメントのジーン・マンスター氏はX(旧ツイッター)で「既存の自動車メーカーを恥じ入らせる以外に商業的価値のない、技術の見せびらかしだ」と書いた。米イートロのジョシュ・ギルバート氏はロイターに、投資家にとっては発表会で見たものより利益率とキャッシュフローの数字のほうがはるかに重いと語っている。寄り付き前の5%高がしぼんだ理由は、この2つの発言に尽きる。
図3:本当の試験は10月21日——販売台数は予想を上回った
テスラの7〜9月期の販売台数(万台)
読み方:販売は予想を約2万4,500台上回ったが、前年同期より2.1%少ない。出所:テスラのSEC提出資料、市場予想はエレクトレック報道。
決算の手がかりは出ている。テスラが10月2日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した資料によると、7〜9月期の販売台数は48万6,532台、生産台数は46万4,391台、蓄電池の設置は13.7ギガワット時だった。テスラ自身が集計したアナリスト24人の予想平均は46万1,974台で、販売は約2万4,500台上回ったと米電気自動車専門メディアのエレクトレックが報じている。ただし前年同期の49万7,099台と比べると2.1%減である。
決算は21日の米国市場の取引終了後に発表され、日本時間22日6時30分からマスク氏らの説明会がある。1株利益の市場予想は0.44〜0.45ドル前後、売上高は278億〜279億ドル前後と、調査会社によって幅がある。4〜6月期は1株利益0.33ドルで、予想の0.50ドルに届かなかったと報じられている。今回も利益率が焦点になる。テスラは9月29日、総額300億ドルの新たな融資枠の契約もSECに届け出ている。
図4:注目の水準
テスラ株の注目水準(10月16日時点)
読み方:200日平均と10月9日の高値388.56ドルがほぼ重なる。ここを終値で抜けるか、345.88ドルを割るかが分かれ目。出所:Yahoo!ファイナンスのデータから本誌が計算。
上値の目安は2つある。10月9日の高値388.56ドルと、ほぼ同じ位置にある200日平均の388.49ドルだ。ここを終値で抜ければ、7月から続く戻りが新しい段階に入る。下値は9月30日の安値345.88ドル。そこを割ると、8月下旬の安値圏342〜345ドルまで支えが薄い。
アナリストの目線は現在値の少し上にある。調査サイトのストックアナリシスによると、16日にJPモルガンが「中立」で目標株価415ドル、15日にバークレイズが「中立」で370ドルとした。44人の目標株価の平均は397.83ドル。強気の目標を掲げる社でも、多くは決算待ちの姿勢である。
決算までのシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌) | 21日終値までの想定 | 条件 |
|---|---|---|---|
| もみ合い | 50% | 355〜380ドル | ロードスターの話題が一巡し、決算待ちで売買が細る |
| 戻り継続 | 25% | 380〜390ドル(200日平均を試す) | ナスダックの半導体株安が止まり、販売の上振れが再評価される |
| 下値試し | 25% | 345ドル前後 | AI関連株の売りが広がり、ハイテク株全体が下げる |
本誌の見立てでは、決算前の数日はもみ合いが本線だ。理由は2つある。ロードスターは2028年まで売上にならず、株価を持ち上げ続ける材料ではない。そして16日の米国市場では、半導体株を中心にAI関連株が売られ、ナスダック総合指数は0.7%安で始まっている。テスラだけが上がり続けるには、地合いが悪い。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認すること | 目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 終値で200日平均(388.49ドル)を上回ったか | 上回れば戻りが本物 | 2025年12月の高値から続く下落基調の終わり |
| 9月30日の安値345.88ドルを割ったか | 割れば撤退の目安 | 戻りの失敗。342〜345ドルまで支えが薄い |
| 決算の自動車部門の粗利益率 | 前期からの改善幅 | 値下げの影響がどこまで続いているか |
| ロボタクシーと人型ロボットの日程 | 具体的な時期が出るか | 株価の期待を支える本当の柱 |
来週の決算全体の見取り図は来週の注目決算6社に、7〜9月期の販売台数の読み方はテスラの販売台数を検証した記事にまとめた。
主な参照
- 7〜9月期の生産・販売台数と決算発表日(2026年10月2日提出)/米証券取引委員会(テスラの提出資料)
- 新たな融資枠の契約(2026年9月29日提出)/米証券取引委員会
- ロードスターの発表、性能、予約金、アナリストの発言/ロイター(Investing.com掲載)、TechCrunch
- 販売台数の市場予想(テスラ集計)/Electrek
- 寄り付き前の値動き/Yahoo!ファイナンス(Investing.com配信)
- アナリストの格付けと目標株価/StockAnalysis
- 株価(日足)/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月16日23時01分(日本時間)。367.76ドルと前日比1.47%高は米国市場の取引時間中の値で、終値ではない。過去の株価、移動平均、RSIは10月15日までの終値から本誌が計算した。寄り付き前の約5%高は報道ベース。販売台数の市場予想、1株利益と売上高の市場予想、アナリストの目標株価は報じられている内容や集計サイトの値で、提供元によって差がある。ロードスターの性能と予約金はテスラの発表として報じられた内容で、本誌は同社の資料で直接確認できていない。シナリオの確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















