米中間選挙の開票が進んだ4日の東京時間、ポンドドルは200日移動平均線を上に抜けた。日本時間15時47分(ロンドン時間6時47分)で1ポンド=1.3460ドル、3日の終値1.3410ドルから0.37%高。日中高値は1.3479ドルまであった。ただしこの上げはポンドの手柄ではない。民主党が上下両院を握るとの報道を受けてドルが全面安になった、その余波である。そして英国の利上げ判断は明日、11月5日の日本時間21時に出る。
筆者は11月2日の前回の見通しで、利上げはほぼ織り込み済みで、鍵は投票の割れ方だと書いた。その見方は変えない。この2日間で変わったのは2点ある。一つはドル側の地合いで、ドル指数は1カ月ぶりの安値まで下げた。もう一つは水準で、ポンドドルは10月下旬から何度も跳ね返されてきた1.34台半ばを抜けてきた。以下、明日の夜に向けた水準と、筆者の見立てを書いておく。
テープ:ポンドはドル安に乗っただけ
今日の値動きを、通貨ごとに並べてみるとはっきりする。ロイター(インベスティング・ドットコム経由、4日)によると、ドル指数は0.6%安の101.27まで下げ、1カ月ぶりの安値を付けた。米10年債利回りは約5bp低下して4.915%。ユーロドルは1.1258ドル、ドル円は157.92円だった。ロイターは、AI規制の強化と議会のねじれへの警戒から、トレーダーが2027年の米利上げ予想を減らしたと伝えている。
この中でポンドの上げ幅は0.3〜0.4%で、ユーロドルの上げ(3日終値比で約0.4%)とほぼ同じだ。英国発の材料は今日、何も出ていない。正直、ポンドを買いにきた向きは少ない。ドルを売った資金が、流れのついでにポンドにも回った、という絵である。だから、ここからの値動きは二つの力の綱引きになる。米国発のドル売りが続くか。そして明日のイングランド銀行(英中銀、BOE)が、ポンド買いの理由を足すのか、それとも削るのか。
ポンドドルの水準の地図(2026年11月4日)
読み方:現値は200日線(1.3426ドル)のすぐ上にいる。終値で50日線(1.3373ドル)を割れば見立ては撤回。上は8月21日の1.3675ドルまで目立った戻り高値がない。出所:Yahoo!ファイナンスの日足から本誌計算。現値は日本時間11月4日15時47分の取引時間中の気配値。
需給:利上げは「買われ済み」の材料
まず事実を確認する。BOEの政策金利は現在3.75%で、2025年12月の利下げ以来据え置かれている。前回9月17日の会合は6対3の据え置きで、グリーン、マン、ピルの3委員が4.00%への利上げを主張した。今回の11月5日は四半期ごとの金融政策報告(MPR)を伴う会合で、発表はロンドン時間12時(日本時間21時)、ベイリー総裁の会見は12時30分(同21時30分)からだ。
ロイターが11月2日に伝えたエコノミスト調査では、大勢が4.00%への利上げを予想している。実現すれば2023年8月以来の利上げになる。投票は7対2で、ディングラ、テイラーの2委員が据え置きにとどまる、というのが中心的な見方だ。同じ記事は、市場が2027年にさらに3〜4回、合計で4.75〜5.0%までの利上げを織り込んでいるとし、BOEがその見方に釘を刺す可能性があると指摘している。
相場師の目で言い直すとこうなる。利上げそのものは、もう値段に入っている。予測市場のポリマーケットでも、0.25%利上げの確率は9割を超えて推移している(これは金利スワップの織り込みではなく、あくまで賭けの値段である)。材料が出尽くしたときに上がるのは、事前に売っていた側が買い戻すときだけだ。ポンドの場合、そこまで売り込まれた形跡はない。10月14日の安値1.3139ドルから、すでに2.4%戻している。
利上げの理由そのものは強い。英国統計局(ONS)が10月21日に発表した9月の消費者物価指数は前年比3.5%で、8月の3.1%から加速した。サービス価格は3.7%、食品とエネルギーを除くコアは2.8%。上昇の主因は自動車燃料で、前年比29.8%高だった。BOE自身も9月の議事要旨で、10〜12月期の物価上昇率を3¾%程度、2027年1〜3月期には4%をやや上回るとみていた。中東発の原油高が、英国の物価を押し上げている構図である。
一方で、景気の側は弱い。6〜8月の失業率は4.7%、定期給与の伸びは前年比3.7%まで鈍った。8月の給与支払い対象の雇用者数は前年比11.1万人減。8月の国内総生産(GDP)は前月比0.1%増にとどまる。物価は上がるが、賃金と雇用は冷えている。この組み合わせで利上げを重ねるのは、BOEにとっても気の重い選択だろう。筆者が「利上げの後の言葉」を重く見るのは、このためだ。
水準の地図:1.3426ドルが今夜の分水嶺
Yahoo!ファイナンスの日足から本誌が計算した移動平均は、今日の値を含めて20日線が1.3323ドル、50日線が1.3373ドル、100日線が1.3389ドル、200日線が1.3426ドルである。現値はこの4本すべての上にいる。ただし50日線はまだ200日線の下で、いわゆるゴールデンクロスは起きていない。上昇トレンドへの転換が確定したと言うには、まだ早い。
戻り売りの壁としては、10月30日の高値1.3434ドルと11月2日の高値1.3450ドルがあった。今日の1.3479ドルはその両方を超えた。抜けた壁は支えに変わるのが相場の常で、200日線の1.3426ドルから1.3450ドルの帯が、明日の夜に試される最初の押し目になる。上は8月21日の高値1.3675ドルまで、目立った戻り高値がない。その先は1月29日の年初来高値1.3847ドルである。
下は、50日線の1.3373ドル、10月28日の押し安値1.3273ドル、10月14日の安値1.3139ドルの順になる。日柄で見ると、10月14日の安値から3週間で2.4%の戻り。急ぎすぎた上げではないが、イベントを前に新規の買いが入る値位置でもない。
筆者の見立て:強気、ただし押し目待ち
結論から言う。筆者は今後1〜2週間のポンドドルを強気でみる。目標は1.3550ドル、その次が1.3675ドルだ。ただし明日の発表直後に飛びつくつもりはない。根拠は三つある。
一つ目は、主役がドル側にあること。米連邦準備理事会(FRB)は10月28日に政策金利を3.75〜4.00%で据え置いたが、クックとハマックの2人が0.25%の利上げを主張する、タカ派寄りの割れ方だった。その米国で議会のねじれが確定し、2027年の利上げ予想が削られ始めた。米金利の上値が重くなるなら、ドルの戻りも鈍い。二つ目は、英国の物価が少なくとも年明けまでは上振れ方向にあることで、BOEが利上げの扉を完全に閉じる理由がない。三つ目は水準で、200日線を抜けた後の戻り高値がしばらくない。
明日の発表のシナリオは、筆者の主観で次のように置く。本線(確率55%)は7対2前後の利上げに、追加利上げの期待をけん制する言葉が付く「ハト派的な利上げ」。この場合、発表直後にポンドは売られ、1.3426〜1.3450ドルの帯を試すとみる。そこが押し目になる。対抗(30%)は8対1以上の利上げで、けん制も弱いケース。1.3550ドルが一気に視野に入る。残る15%は据え置き、または5対4のような僅差で、ポンドは1.34ドルを割り込み、50日線の1.3373ドルを試すだろう。
11月5日BOE会合のシナリオと確率(筆者の主観、%)
読み方:利上げ自体は織り込み済みで、値動きを決めるのは投票の割れ方と追加利上げへのけん制の有無とみる。確率は筆者の主観で、市場の織り込みではない。
逆になったら:撤退線は1.3373ドル
見立てが外れたときの線も先に決めておく。終値で50日線の1.3373ドルを割り込んだら、強気の見立ては撤回する。200日線の上抜けがだましだったことになり、10月28日の安値1.3273ドルまでの下げを覚悟すべき局面になる。逆に、ドル円の側から見ている読者にとっては、ポンド円の動きも同じ構図だ。ポンド円は日本時間15時47分で212.72円、200日線は212.90円にある。ポンドドルが上でもポンド円は200日線の手前で止まっており、こちらはまだ抜けていない。
もう一つの注意は、英国の財政だ。10月28日の秋季予算は財政規律を守る内容と受け止められ、英10年債利回りはその後に低下した。ただ、財政余地が縮んだとの指摘もある。仮に明日のBOEが景気の弱さを強く訴え、同時に長期金利が上がるような展開になれば、それは2022年秋のような「悪い金利上昇」の匂いがする。そのときポンドは金利が上がっても売られる。筆者はその確率を低くみているが、ゼロではない。
明日からの監視リスト
今週は英国と米国の材料が2晩続けて夜に集中する。日本時間で動ける時間を事前に押さえておきたい。ロンドンやニューヨークの発表時刻を手元の時間に直すなら、タイムゾーン変換ツールが手早い。米国は11月1日に冬時間へ移っており、米東部時間に14時間を足すと日本時間になる。
| 日本時間 | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 11月5日(木)21:00 | BOE政策金利・議事要旨・金融政策報告 | 投票の割れ方(7対2が中心予想)、追加利上げへのけん制の有無 |
| 11月5日(木)21:30 | ベイリー総裁の記者会見 | 2027年の利上げ織り込み(4.75〜5.0%)への言及 |
| 11月5日(木)22:30 | 米新規失業保険申請件数 | 雇用統計の前哨戦 |
| 11月6日(金)22:30 | 米10月雇用統計 | ドル売りが続くかどうかの本番 |
| 12月9日(水)米東部時間 | FOMC(8〜9日、経済見通し付き) | 12月利上げの有無 |
ドル側の見方は、今日のドル円見通しとユーロドル見通しにも書いた。中間選挙が市場全体に何をもたらしたかはこちらの記事で扱っている。
主な参照
- 政策金利3.75%と次回会合日(11月5日)/イングランド銀行、会合日程と金融政策報告の公表月/イングランド銀行
- 9月会合の投票(6対3)と物価見通し/イングランド銀行
- エコノミスト調査(4.00%への利上げ、7対2予想、2027年の織り込み)と発表時刻/ロイター(ビジネス・レコーダー転載)
- 9月の消費者物価指数/英国統計局、雇用統計/英国統計局、月次GDP/英国統計局
- 4日のドル指数・米10年債利回り・主要通貨/ロイター(インベスティング・ドットコム転載)
- 10月28日のFOMC声明と投票/米連邦準備理事会、FOMC日程/米連邦準備理事会
- 米雇用統計の公表日程/米労働統計局
- ポンドドル・ポンド円の日足と移動平均の計算元/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年11月4日、日本時間15時47分(ロンドン時間6時47分)の取引時間中の気配値。終値ではない。過去の高値・安値・移動平均はYahoo!ファイナンスの日足(ロンドン時間基準)から本誌が計算したもので、情報ベンダーにより数値に差が出ることがある。ドル指数・米10年債利回りなどはロイターが4日に報じた取引時間中の値。エコノミスト調査の対象人数と、金利スワップ市場での今回会合の織り込み確率は確認できていない。予測市場の確率は金利市場の織り込みとは別物である。英国の財政余地の縮小は報じられている見方で、英予算責任局の資料では確認していない。中間選挙の結果は報道機関の当確判定にもとづき、開票は続いている。シナリオの確率と目標水準は筆者の主観であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













