10月23日、東京市場の前場(午前の取引)の番付を発表する。東の横綱は住友林業、5.49%高で窓を開けて上昇した。西の序二段に落ちたのは百五銀行、8.52%安だ。京葉銀行、筑波銀行、栃木銀行、富山第一銀行がそろって8%台の下げで続き、地方銀行株が下位を占めた。8時30分に出た9月の全国消費者物価指数(CPI)は、コア指数が前年同月比2.1%上昇と2%台に戻った。それでも、利上げで稼ぐはずの銀行株が売られ、金利低下で得をする不動産株が買われた。
理由は一つに絞れる。物価が2%台に戻っても、市場は10月29〜30日の日銀会合での連続利上げを見込んでいない。テレビ東京は22日夜、日銀が政策金利を1.25%程度に据え置く見通しだと報じた。国内の長期金利も低下が続いている。日経平均株価は前場を1,168円14銭安の6万1,739円70銭、TOPIXは72.80ポイント安の3,924.70で終えた。以下、数字はすべて前場の終値(11時30分)で、前日比は22日の終値との比較である。
前場の前日比(10月23日11時30分、%)
読み方:緑は金利の低下で得をする不動産株、赤は利上げで得をする銀行株である。下に行くほど国内の預金・貸出の比重が大きい地方銀行が並ぶ。出所:ヤフー・ファイナンス(前場終値、10月22日の終値との比較)。
番付表:金利の向きで勝敗が分かれた
| 番付 | 銘柄 | 前場終値 | 前日比 | 年初来高値からの下落率 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | 住友林業(1911) | 1,288円 | +5.49% | −31.3%(2月18日の1,874円) | ◎ |
| 東の大関 | 三菱地所(8802) | 3,906円 | +3.50% | −27.8%(2月26日の5,407円) | ○ |
| 東の関脇 | 住友不動産(8830) | 3,355円 | +3.39% | −37.4%(2月26日の5,358円) | ○ |
| — | (以下、負け側) | ||||
| 西の幕下 | りそなホールディングス(8308) | 2,050円 | −7.24% | −21.7%(10月6日の2,618円) | × |
| 西の三段目 | 筑波銀行(8338) | 582円 | −8.35% | −34.3%(10月7日の886円) | × |
| 西の序二段 | 百五銀行(8368) | 1,911円 | −8.52% | −30.5%(10月6日の2,750円) | × |
この表で見てほしいのは右から2列目だ。勝った不動産株も、年初来高値からはまだ3〜4割安い。一方、負けた地銀株の高値は10月6〜7日で、わずか2週間あまり前である。百五銀行と筑波銀行は、その高値から3割以上を失った。勝ち組はこれまでの負けを少し取り戻したにすぎず、負け組は直近の勝ちをまとめて吐き出している。今朝の取組は、その流れが一段と進んだ一番だった。
西の序二段・地方銀行株:×
百五銀行(8.52%安)、京葉銀行(8.39%安)、筑波銀行(8.35%安)、栃木銀行(8.25%安)、富山第一銀行(8.23%安)。いずれも東証プライム市場の値下がり率で上位に並んだ。千葉銀行は6.24%安、横浜フィナンシャルグループは6.16%安、ふくおかフィナンシャルグループは5.99%安と、大手地銀も軒並み崩れた。
地銀株は、日銀の利上げで最も得をする業種とされてきた。預金を多く抱え、貸出金利が上がれば利ざや(貸出金利と預金金利の差)が広がるからだ。その期待が最も高まったのが10月初めである。10月5日には、日銀が10月の展望リポートで基調的な物価上昇率が2%に達したと示す可能性があると報じられた(本誌10月6日の記事)。地銀株の年初来高値が10月6〜7日に集中しているのは、この期待の頂点と重なる。
その後、植田和男総裁は10月6日のあいさつで「到達」の言葉を使わなかった。そして22日夜には、10月は据え置きとの報道が出た。株探(MINKABU PRESS)は前場の銀行株の下げについて、連続利上げが見送られると伝わるなかで利ざや拡大の期待が後退し、買い持ちを減らす売りが優勢になったと伝えている。判定は×。期待で買われた分が、期待の後退でそのまま売られた。
西の幕下・メガバンクとりそな:×
りそなホールディングスが7.24%安の2,050円、みずほフィナンシャルグループが5.46%安の7,242円、三菱UFJフィナンシャル・グループが5.13%安の3,200円、三井住友フィナンシャルグループが4.82%安の3,018円だった。国内の預金と貸出の比重が大きいりそなが、3メガより深く下げている。利上げの恩恵を受ける度合いの差が、そのまま下げ幅の差になった形だ。
同じ朝、時事通信は3メガバンクが日米合意に基づく対米投融資の第3弾に参画しない方向で最終調整していると報じた。米グローバルファウンドリーズの半導体工場の建設事業(最大210億ドル)で、融資はドル建てになる。邦銀だけで巨額のドルを集めるのは難しく、ドル買いが円安を招く懸念もあるという。代わりに国際協力銀行(JBIC)と外国銀行が資金を出す。この報道は銀行の収益を直接左右する話ではない。ただ、円相場には円高方向の材料として受け止められた。判定は×。時価総額の大きい3メガの下げは、TOPIXを押し下げる役回りになった。
東の横綱・住友林業:◎
5.49%高の1,288円。前日の終値から窓を開けて始まり、高値は9時38分の1,292円50銭だった。株探は、米長期金利が5%を下回る水準まで下がったことで、米国の住宅事業の先行きへの懸念が和らいだと伝えている。住友林業は米国で戸建て住宅の事業を大きく展開している。米国の住宅ローン金利が下がれば、買い手が戻りやすい。日本の金利ではなく、米国の金利で勝った一番である。
ただし土台は低い。10月15日には年初来安値の1,155円を付けている。今朝の上昇でも、2月の高値1,874円にはまだ31%届かない。判定は◎だが、これは今朝の一番だけの話だ。番付を上げるには、米金利の低下が続くことが条件になる。
東の大関・関脇・大手不動産株:○
三菱地所が3.50%高の3,906円、住友不動産が3.39%高の3,355円、三井不動産が2.71%高の1,589円50銭。不動産会社は借入が多く、金利が上がると利払いが重くなる。逆に金利が下がる局面では買われやすい。株探は、国内の長期金利が一時2カ月半ぶりに2.800%を下回ったことと、10月の連続利上げが見送られる公算が大きいことを、買いの材料に挙げている。
3社とも10月に年初来安値を付けたばかりだ。三井不動産は10月9日に1,400円、住友不動産は10月8日に3,017円、三菱地所は10月14日に3,398円である。利上げ観測が強かった時期に売り込まれ、観測が後退した今、買い戻されている。判定は○。勝ち越しではあるが、まだ下位からの戻りである。
国債金利の変化(10月7日→22日、ベーシスポイント)
読み方:日銀の政策金利に近い1〜2年はほとんど動かず、5年より長い年限が大きく下がった。「利上げをやめる」ではなく「次を急がない」という読みと、世界的な長期金利の低下が重なった形である。10年は3.111%→2.914%。出所:財務省「国債金利情報」、1bp=0.01%。
殊勲賞・国債利回り:場所の流れを決めた
今朝の勝敗を決めたのは、株ではなく債券だった。財務省が公表する国債金利(10年)は10月7日の3.111%を頂点に下がり始め、22日には2.914%となった。2週間で19.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の低下である。5年は同じ期間に2.437%から2.304%へ13.3bp下がった。一方、日銀の政策金利の影響を最も受けやすい2年は1.951%から1.914%への3.7bpにとどまる。
この形には意味がある。短い年限の金利があまり動かず、長い年限ほど大きく下がった。これは「日銀がすぐに利上げをやめる」という読みではない。「次の利上げは急がない」という読みと、世界的な長期金利の低下が重なった形だ。22日のニューヨーク市場では、AI関連企業の過剰投資と信用不安への警戒からナスダック総合指数が2.60%下げ、米10年債利回りは5%を下回った。日本の長期金利もこれに引っ張られた。判定は、土俵の外から勝負を決めた殊勲賞である。
2つの「長期金利」について。財務省の国債金利は、各年限の利回りを市場の気配から計算した値で、前日の終値にあたる。報道でいう「長期金利」は、直近に発行された10年国債1銘柄の取引利回りを指すことが多い。両者は計算の方法が違うため、同じ日でも水準に差が出る。本稿では、推移を追うときは財務省の値を、今朝の水準は報道の値を使った。
敢闘賞・コアコアCPI:強かったが、土俵に上がれなかった
総務省が8時30分に公表した9月の全国CPIは、総合が前年同月比2.1%上昇(8月は1.9%)、生鮮食品を除く総合(コア)が2.1%上昇(同1.7%)だった。目を引いたのは、生鮮食品とエネルギーを除く総合(いわゆるコアコア)である。8月の1.9%から2.4%へ、0.5ポイント跳ねた。季節調整済みの前月比も0.5%上昇と、2025年9月以降で最も大きい。
中身を見ると、上昇幅の拡大には特殊な要因も混じっている。総務省は、コアの上昇幅が0.4ポイント広がった要因として、宿泊料と水道料(それぞれ0.07ポイント)、生鮮食品を除く食料(0.04ポイント)などを挙げた。一方でコメなどの穀類は5.0%下落、私立高校の授業料は73.2%下落と、政策や在庫の事情で下がる品目もある。
それでも市場は動かなかった。コアの2.1%は、本誌が前日の予想記事で紹介した市場予想(QUICK調べ、中央値2.1%)どおりだったからだ。コアコアの強さは、10月の利上げを促すほどの驚きにはならなかった。判定は敢闘賞。数字は強かったが、勝敗には関わらなかった。12月会合に向けた材料としては、記録に残す価値がある。
技能賞・損害保険株:金融株なのに逆行高
同じ金融でも、損害保険株は違う動きをした。MS&ADインシュアランスグループホールディングスは9時12分に年初来高値の5,333円を付け、前場は0.81%高の5,247円で終えた。保険会社は保険料を長く運用するため、金利上昇の恩恵を受ける面はある。ただ銀行ほど政策金利に直結せず、相場が荒れると守りの銘柄として買われやすい。判定は○。金利の番付から外れて、別の土俵で勝った技能賞である。
来場所の注目取組
番付が次に動くのは、来週の2つの中央銀行会合だ。日銀の会合は10月29〜30日で、30日に展望リポートと総裁会見がある。その前に米連邦公開市場委員会(FOMC)が10月27〜28日に開かれ、結果は日本時間29日未明に出る。
| 日付(日本時間) | 取組 | 銀行株にとっての見どころ | 不動産株にとっての見どころ |
|---|---|---|---|
| 10月29日(木)未明 | FOMCの結果 | 米長期金利が戻れば国内金利も下げ止まりやすい | 米金利の低下が続けば住友林業などに追い風 |
| 10月30日(金) | 日銀の決定と展望リポート | 据え置きでも、基調物価2%到達の判断と12月の示唆が出れば買い戻しの材料 | 12月利上げが強く示唆されれば戻りが鈍る |
| 10月30日(金)午後 | 植田総裁の会見 | 「急がない」の表現が強まれば、もう一段の売り | 同じ表現なら金利低下で買い |
本誌の番付編成会議の結論はこうだ。今朝の地銀株の急落は、業績の悪化ではなく、10月利上げへの期待がはがれた結果である。だから、次の利上げの時期が見えた瞬間に、売られ方と同じ速さで買い戻される可能性がある。逆に、30日の会見で12月の利上げにも慎重な言葉が出れば、10月6〜7日の高値はしばらく遠い。今朝のドル円の動きはこちらの記事で、寄り付き直後の値動きはこちらで扱っている。
主な参照
- 2026年9月分の全国消費者物価指数(総合・コア・コアコア、寄与度)/総務省統計局
- 前場の株価(各銘柄、日経平均、TOPIX)/ヤフー・ファイナンス
- 銀行株・不動産株・住友林業の値動きの背景、長期金利の2.800%割れ/株探(MINKABU PRESS)
- 前場の値下がり率ランキング/株探
- 日銀が10月会合で政策金利を据え置く見通し/テレビ東京(WBS)
- 3メガバンクが対米投融資の第3弾に参画せず/時事通信
- 国債金利(年限別、10月1日〜22日)/財務省
- 9月18日の金融政策決定(政策金利1.25%程度、賛成7反対2)/日本銀行
- 金融政策決定会合の日程(10月29〜30日、展望リポート)/日本銀行
- FOMCの日程(10月27〜28日)/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月23日の東京市場の前場終値(11時30分)。株価は取引時間中の値で、大引けの終値ではない。後場の値動きによって順位や下落率は変わる。年初来高値・安値は取引時間中の値。国債金利は財務省が公表する前日までの値で、23日の「長期金利の2.800%割れ」は株探の報道にもとづく。日銀の10月据え置きは報道にもとづく見通しで、決定は30日の会合で行われる。市場予想(QUICK調べ)は本誌10月22日の記事による。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















