木曜の東京で157円50銭を割ったところで、ドル買いの損切りがまとめて出た。そこで買い向かった向きは、夜のニューヨークで156円69銭まで掘られ、今朝は歯噛みしているだろう。ドル円の22日の四本値は、始値158円14銭、高値158円25銭、安値156円69銭、終値156円77銭(みんかぶ集計)。1日で1円56銭の値幅は、ここ1カ月の膠着からすれば別の相場である。安値は9月30日以来、約3週間ぶりの水準だ。
そして今朝8時30分、9月の全国消費者物価指数(CPI)が出た。生鮮食品を除くコア指数は前年同月比2.1%上昇と、市場予想どおり8月の1.7%から2%台へ戻った。目を引いたのは、生鮮食品とエネルギーを除く「コアコア」である。8月の1.9%から2.4%へ跳ねた(総務省)。ガソリンや電気の補助で隠れていた物価の地力が、表に出てきた形だ。ドル円は発表後も156円台半ばで推移し、8時40分時点で156円53銭だった。結論から書くと、筆者は円高方向の見立てを一段強める。
筆者の見立て:ドル円は戻り売りの局面に入ったとみている。今後1〜2週間は155円30銭〜157円70銭を想定し、下値の目標は9月4日の安値155円27銭とする。今後1カ月の本線は154円50銭〜158円00銭の下寄りのレンジで、確率は50%。撤退線は日足の終値で50日線157円66銭を上回ったときだ。
テープ:誰が投げ、誰が買ったか
22日の値動きを順に追う。東京の朝はまだ158円台にいた。崩れたのは昼からだ。米テスラと米ラムリサーチの決算をきっかけにした株安がアジアに広がり、日経平均は一時1,700円を超える下げになった。円は安全とされる通貨として買われ、ドル円は15時台に157円06銭まで下げた。ロイターは、1カ月のレンジの下限とみられていた157円50銭を割ったところで損切りを巻き込んだとの声を伝えている。
ニューヨークに入っても流れは変わらなかった。ナスダック総合指数は2.60%安、S&P500種株価指数は1.21%安。みんかぶによると、ドル円は米国債やスイスフランと並んで円が買われるなかで一時156円台に下げた。米10年債利回りは約1カ月ぶりに5%を割り込んでいる。株安、金利低下、円高。円高の3点がそろった日だった。
正直、レンジの下限を割ってからの値動きは素直だった。157円ちょうどは、あおぞら銀行の諸我晃氏が「割れればもう一段安になりかねない」と挙げていた節目で、その通りになった。安値からの戻りは8銭しかない。引け際まで買い戻しが入らなかったということだ。
需給:ドル買いの残りがまだ重い
相場の燃料は持ち高の偏りである。外為どっとコムによると、同社の個人投資家のドル円の建玉は22日時点で54%が買い(ドル買い・円売り)だった。1カ月の膠着の間、158円台の下では買い、159円に近づくと売るという往復で稼いできた向きが多い。その買いの半分近くが、いまは含み損を抱えている計算になる。
オプション市場も動き始めた。みんかぶが伝えた22日16時12分時点の予想変動率は、1週間物が7.48%、1カ月物が7.56%。短い期間ほど上がっているのは、目先の値動きに備える買いが入っている証拠である。1カ月物の7.56%を素直に当てはめると、今後1カ月の値幅の目安は上下におよそ3円40銭になる。156円77銭を中心に置けば、153円30銭前後から160円20銭前後までが「よくある範囲」だ。
ただ、持ち高の偏りは片方向にしか効かない。買いが投げ終われば、売る材料は急に減る。だから下値の目標は欲張らずに置く。筆者が155円27銭を目先のめどにするのはこのためだ。
ドル円の水準の地図(円)
読み方:青が22日の終値、橙が筆者の目標と撤退線、灰色が過去の安値と移動平均。上の3本の移動平均はすべて現在値の上にあり、下には9月に付けた安値が階段のように並ぶ。出所:みんかぶ(22日の四本値)、ヤフー・ファイナンスの日足(10月21日まで)から筆者が計算。
水準の地図:上は移動平均の天井、下は9月の足跡
上から見ていく。200日移動平均が158円55銭、20日線が158円01銭、50日線が157円66銭(いずれも21日までのヤフー・ファイナンスの日足から筆者が計算した概算)。3本とも現在値の上にある。きのうまで下値の支えだった50日線は、今度は戻りの天井に変わった。戻り売りを狙うなら、この157円60銭〜158円00銭の帯が売り場になる。
下は9月の足跡をたどる。まず22日の安値156円69銭、次に9月30日の安値156円35銭。その下に9月4日の安値155円27銭がある。みんかぶのニューヨーク概況には、155円を割り込めば市場の関心が160円から150円方向へ移りうるとの見方も載っていた。さらに下は9月7日の154円04銭、そして9月8日の152円87銭である。9月の初めに一気に円高が進んだときの足跡が、そのまま下値の階段になっている。
筆者の見立て:戻り売り、根拠は3つ
見立てを言い切る。ドル円は戻り売りだ。根拠は3つある。
一つ目はテクニカルの形である。10月5日から21日まで続いた157円41銭〜158円94銭のレンジを下に抜け、3本の移動平均をすべて下回った。レンジを抜けた相場は、抜けた方向にレンジの幅(約1円53銭)程度は走ることが多い。157円41銭から1円53銭引くと155円88銭、9月30日の安値の下である。
二つ目は米国の金利である。米10年債利回りが5%を割り、FRBの利上げ観測も後退した。CMEフェドウォッチの10月の利上げ確率は、米キトコの集計で16%、コインデスクが伝えた22日午前の時点では8%にとどまる。ドルを支えてきた「米金利5%」の看板が外れかけている。
三つ目は日銀である。けさのCPIで、日銀が10月29〜30日の会合で物価目標2%の「到達」を判断する土台は固まった。コアは2.1%、季節調整済みの前月比は0.5%上昇。コアコアの2.4%は、本サイトの予習記事が「物価の地力が表に出た」と読む目安に置いた2.3%を超えた。9月18日の利上げに反対した浅田委員は「足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回るなか」と理由を述べていたが、その前提はけさ崩れた。10月は据え置きが本線でも、30日の植田総裁の会見で12月の利上げに含みが残る確率は上がった。円を買う理由が、株安という心理だけでなく、政策の側にもできたということだ。
逆の材料も書いておく。日米の長期金利差は縮んだとはいえ、まだ2ポイントを超える。FRBの12月の利上げ確率は86%と高い(ロイター)。株が切り返せば、円は真っ先に売り戻される。22日の円高に、新しい政策の材料は一つもなかった。この点は肝に銘じておきたい。
| 今後1カ月のシナリオ | 確率(筆者) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 本線:下寄りのレンジ | 50% | 154円50銭〜158円00銭 | 株安は一服するが戻りは鈍い。日銀は30日に据え置き、12月の利上げに含みを残す |
| 円高の加速:155円割れ | 25% | 152円80銭〜155円00銭 | 日米の株安が続く。FOMCが利上げ打ち止めをにおわせ、米金利がさらに低下 |
| 円安への戻り:レンジ回帰 | 25% | 157円70銭〜159円50銭 | 半導体株が切り返す。FOMCが12月の利上げを強く示唆し、日銀は時期をぼかす |
逆になったら:撤退線は157円66銭
相場に絶対はない。日足の終値で50日線157円66銭を上回ったら、筆者は戻り売りの見立てを捨てる。そこはレンジの中に戻ったことを意味し、下抜けは「だまし」だったことになるからだ。さらに200日線158円55銭を終値で超えれば、円安シナリオに切り替える。
FXで取引する人は、来週の会合の発表直後に値が飛びやすい点に注意してほしい。発表の前後は売値と買値の差が広がり、節目を一瞬だけ抜けてすぐ戻る動きも多い。レバレッジを抑え、損切りの水準を先に決めておくのが基本である。外貨預金や旅行の両替なら、一度に全額を換えず、数回に分けるのがレートの振れを和らげる現実的な方法だ。これは売買の推奨ではない。取引の基本は本サイトのFX解説ページにまとめている。
監視リスト
| 日時(日本時間) | 見るもの | 筆者の着眼点 |
|---|---|---|
| 23日 9:00〜 | 日経平均の寄り付き | 株が戻らなければ円買いは続く |
| 23日 22:45 | 米10月のPMI速報値 | 強ければ米金利の戻りでドルが買い戻される |
| 24日 未明 | ムーディーズの仏格付け見直し | 欧州の不安が円買いを呼ぶか |
| 29日 3:00 | FOMCの結果発表 | 12月の利上げへの言及の強さ |
| 29日 21:30 | 米9月のPCE物価指数、7〜9月期GDP | 物価の加速が確認されるか |
| 30日 8:30 | 東京都区部10月のCPI | 全国の先行指標 |
| 30日 昼〜午後 | 日銀の結果発表、展望リポート、総裁会見 | 2%到達の判断と、12月への含み |
きのうの夕方の時点での見方はこちらの記事に、CPIの中身の予習は全国CPIの予習記事にまとめた。
主な参照
- 9月の全国消費者物価指数/総務省統計局
- 22日のドル円の四本値、ニューヨーク市場の概況、通貨オプションの予想変動率/みんかぶ
- 東京市場の損切りと157円の節目(諸我氏の発言)/ロイター
- 個人投資家の建玉/外為どっとコム
- ドル円の日足(移動平均と過去の安値の計算に使用)/ヤフー・ファイナンス
- 米株価指数の終値/ヤフー・ファイナンス
- FRBの利上げ確率、米金利/Kitco、CoinDesk
- 金融政策決定会合の日程/日本銀行、FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月23日午前8時50分(日本時間)。22日の四本値はみんかぶの集計による。現在値は取引時間中の気配値で、終値ではない。移動平均と過去の高値・安値は、ヤフー・ファイナンスの日足(10月21日まで)から筆者が計算した概算で、情報源によって数銭の差が出る。予想変動率は22日16時12分時点の参考値。利上げ確率は集計の時点で異なり、出典ごとに記した。個人投資家の建玉は特定の業者の顧客に限った数字である。シナリオの確率とレンジは筆者の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















