金曜の東京は、大引けの32分前に材料を一つ受け取って、ほとんど値をつけないまま3連休に入った。日経アジアが14時58分(日本時間)に配信した独自記事で、アップルがiPhone 18 ProとPro Maxの部品発注を減らしたという。売上高の23.2%をアップル1社に頼るアルプスアルパイン(6770)は、0.45%高の2,218円で引けた。筆者はこの終値を、まだ材料を消化していない値とみている。
テープ:ニューヨークは先に2.5%売った
報道の中身から押さえておく。ロイターが伝えた日経アジアの内容では、10月分の部品発注が当初の要請より少なくとも15%減った。対象はiPhone 18 ProとPro Maxの2機種である。ある幹部は2機種とも15〜20%の削減だと話したという。アップルは9月上旬から出荷に慎重になっており、需要が鈍ったのは8月下旬から10月にかけてだとされる。理由はメモリーの値上がりだ。部品代が上がり、販売価格を上げた結果、買い手の足が鈍った。アップルはロイターの取材に答えておらず、ロイターも報道内容を独自に確かめていない。
東京より先に反応したのは本体だ。米国時間9日の寄り付き前、アップル株は1.9%安で取引された(米東部時間5時15分時点、ヤフー・ファイナンス)。寄り付き後も戻りは鈍く、米東部時間9時51分時点で前日終値340.42ドル比2.49%安の331.96ドルだった。取引時間中の値であり、終値ではない。ここで売られた分を、東京の部品株はまだ払っていない。
9日の東京で電子部品株が安かったのは事実だ。村田製作所(6981)は3.59%安の7,970円、TDK(6762)は2.54%安の3,268円で引けた。ただ日本経済新聞の大引けの記事は、下げの理由に米ハイテク株安とOpenAIの売上をめぐる英紙報道を挙げており、アップルには触れていない。日経平均は11円19銭安の6万9,030円92銭で、TOPIXは0.33%高だった。報道が出た時点で残りは32分しかなかった。この日の部品株の下げを、アップルの減産と結びつける材料は今のところない。
需給の解剖:アップル依存を開示している2社
「アップル関連株」と呼ばれる日本株は多い。だが、アップル向けの売上を数字で出している会社は少ない。2026年3月期の有価証券報告書で確かめると、はっきり書いているのは2社だけだ。アルプスアルパインはアップル向けが2,366億2,500万円で、売上高の23.2%を占める。前の期は23.1%だった。ミネベアミツミ(6479)は1,885億1,000万円で11.3%。前の期の15.6%から下がり、最大の顧客は任天堂(12.5%)に入れ替わった。
村田製作所と太陽誘電(6976)は、売上の10%を超える顧客はいないと開示している。TDKは1社の顧客グループ向けに4,664億500万円を計上しており、筆者の計算では売上高の約18.6%にあたる。ただ、その顧客の名前は書かれていない。それがアップルだと言える根拠は、筆者の手元にはない。
| 銘柄(コード) | アップル向けの開示 | 10月9日終値(円) | 前日比 | 52週高値からの距離 |
|---|---|---|---|---|
| アルプスアルパイン(6770) | 売上高の23.2%(社名を開示) | 2,218 | +0.45% | −7.4% |
| ミネベアミツミ(6479) | 売上高の11.3%(社名を開示) | 3,650 | −0.82% | −31.2% |
| TDK(6762) | 社名を伏せた1顧客で約18.6% | 3,268 | −2.54% | −24.3% |
| 村田製作所(6981) | 10%超の顧客なし | 7,970 | −3.59% | −38.2% |
| 太陽誘電(6976) | 10%超の顧客なし | 11,135 | +1.64% | −53.7% |
| ソニーグループ(6758) | 未確認 | 3,814 | +2.91% | −20.1% |
この表で目を引くのは右端だ。アップル依存を最もはっきり開示しているアルプスアルパインが、52週高値から7.4%しか離れていない。6月から7月に高値をつけた村田製作所や太陽誘電は、すでに4〜5割削られている。逆に言えば、削られていない銘柄ほど、悪い知らせを受け止めたときの値幅は大きくなりやすい。筆者が火曜の寄りでまず見るのは、そこだ。
アルプスアルパインの9日の出来高は182万9,200株だった。前日の158万8,600株より多いが、9月8日に8.29%下げた日の283万4,500株には遠い。この株は1日に8%を吐く売りを、つい1カ月前に経験している。今回はまだそういう投げが出ていない。ここが筆者の読みの土台である。
水準の地図:アルプスアルパイン
アルプスアルパイン(6770)の水準の地図(円)
読み方:青が10月9日の終値、橙が筆者の線(上は撤退線、下は最初の節)、灰色は過去の高値・安値。2,178円を割ると、2,069.5円まで日足の節が少ない。出所:stockanalysis.comの日足(東京証券取引所)。
上は10月1日の終値2,270.5円が直近の戻り高値で、その上に9月1日の日中高値2,347.5円、2月26日の52週高値2,395.5円が並ぶ。下はまず9日の日中安値2,178円だ。ここを割れると、9月8日に8.29%下げてつけた安値2,069.5円まで、目立った節はない。7月17日の2,006円がこの3カ月の底になる。
筆者の見立て:火曜はアップル依存株の戻り売り
筆者は弱気だ。火曜の寄りでアップル依存を開示している銘柄、とりわけアルプスアルパインには売りが先に出るとみている。戻ったところは売り場と考える。根拠は3つある。
1つ目は値上げの幅だ。iPhone 18 Proの米国価格は1,199ドルからで、17 Proの1,099ドルから100ドル、率にして9.1%上がった。日本では21万9,800円からで、17 Proの17万9,800円から4万円、22.2%の値上げになる。Pro Maxも19万4,800円から23万9,800円へ4万5,000円上がった。米国で1割の値上げで需要が鈍ったのなら、2割を超えた日本ではさらに売れにくいとみるのが自然だろう。
2つ目は、値上げの原因が当面消えないことだ。調査会社トレンドフォースは9月30日、10〜12月期の契約価格について、汎用DRAMは前の四半期比10〜15%、NAND型フラッシュメモリーは15〜20%上がるとの見通しを出した。7〜9月期も汎用DRAMで13〜18%の上昇を見込んでいた。部品代の上昇が続くかぎり、アップルが価格を戻す理由は見当たらない。
3つ目は日柄だ。東京は12日がスポーツの日で休みになる。火曜の寄りまでに、ニューヨークは金曜と月曜の2日分を取引する。金曜の寄り前に売られたアップル株の分を、東京の部品株は火曜の寄りでまとめて払うことになる。
ただ、反対側の材料も軽くはない。日経アジアによれば、今年は通常モデルのiPhone 18が2027年春に回り、秋の新機種がそろわなかったことが需要の弱さに響いた可能性がある。その場合、問題は需要の天井ではなく時期のずれになる。11月以降も削減が続くかどうかは分かっていない。10月23日には折りたたみの「iPhone Duo」も店頭に並ぶ。iPhone Duo発表と日本の部品株の記事で見たとおり、発表翌日の9月10日に村田製作所は5.57%上げた。この日はTSMCの月次売上も重なり、アップル単独の効果とは切り分けられなかったが、新機種の材料に部品株が素直に反応する地合いではある。「まだはもうなり」で、悪材料が出た翌営業日にもう底だった、という展開も十分ありうる。
逆になったら:2,270.5円を終値で抜けば降りる
アルプスアルパインが火曜以降に終値で2,270.5円を上回ったら、筆者の見立ては外れだ。10月1日の戻り高値を越えるということは、減産報道を買い手が吸収したということになる。その場合は売りを手じまう。下は2,178円を割り込めば、2,069.5円までの空白を試しにいくとみる。同じ物差しで、村田製作所は8日終値の8,267円、TDKは8日終値の3,353円を終値で回復するかどうかを見る。
同じ日のアップル関連の選び方は、9月のアップル関連日本株の番付で、取引関係の確かさを軸に整理した。そちらで横綱に置いたTDKと村田製作所は、開示上はアップル1社への依存を数字で示していない。今回のような報道で値幅が出やすいのは、むしろ依存を開示している側だ。
明日からの監視リスト
| 日時(日本時間) | 何を見るか | 筆者の線 |
|---|---|---|
| 10月10日朝 | アップル株の9日終値 | 前日終値340.42ドルから2%超の下げで引けるか |
| 10月13日9時 | 東京の3連休明けの寄り。アルプスアルパイン、ミネベアミツミ、TDK、村田製作所 | アルプスアルパインは2,178円を割るか |
| 10月13日 | アップルの発表イベント(米国時間) | Proの需要を補う材料が出るか |
| 10月16日21時 | iPhone Duoの予約開始 | 発売は10月23日 |
| 11月3日朝 | アップルの7〜9月期決算(米国時間2日) | 10〜12月期のiPhone売上の見通し |
主な参照
- iPhone 18 Proの部品発注削減(2026年10月9日14時58分、日本時間)/日経アジア、削減幅と各社のコメントはロイター配信記事、9to5Mac、MacRumors
- アップル株の寄り付き前の値動き(米東部時間5時15分)/ヤフー・ファイナンス
- iPhone 18 Proの価格と発売日/アップル(米国)、アップル(日本)、前年モデルは2025年の発表
- アップル向け売上高の開示/アルプスアルパイン有価証券報告書、ミネベアミツミ有価証券報告書、TDK有価証券報告書
- アップルのサプライヤーリスト(2023会計年度版)/アップル
- メモリー契約価格の見通し/トレンドフォース(9月30日)、同(7月3日)
- 10月9日の東京市場の大引け/日本経済新聞
- 日足の株価・出来高/stockanalysis.com
- アップルの発表イベント(10月13日)/ケータイWatch
- スポーツの日(10月12日)/内閣府
データ基準日:2026年10月9日。日本株は東京証券取引所の10月9日終値、アップル株は米東部時間9時51分時点の取引時間中の値で、終値ではない。部品発注の削減は日経アジアが関係者の話として報じたもので、アップルは確認していない。削減幅は「少なくとも15%」が報道の中心で、「15〜20%」は1人の幹部の話として伝えられた。10月9日の日本の電子部品株の値動きを、この報道と結びつける報道は確認できていない。TDKの顧客グループがアップルであるかは開示されていない。筆者の見立てと撤退線は個人の相場観であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。















