2025年7月31日の引け後、東京エレクトロンは今期の業績予想を引き下げた。当期利益の見通しは5,660億円から4,440億円へ。翌8月1日、株価は一時ストップ安まで売られ、終値は2万2,405円、前日比18.02%安で引けた。その3カ月後の10月29日、今度はアドバンテストが上方修正と増配、自社株買いを携えてストップ高を演じ、終値は22.07%高の2万2,120円だった。同じ半導体装置株の決算が、3カ月の間に逆向きの「20%」を2度刻んだのである。
1年後のきょう、10月22日。東京の半導体株は再び決算を前に大きく売られた。東京エレクトロン(8035)は6.99%安の9,450円、アドバンテスト(6857)は6.01%安の3万2,370円、SCREENホールディングス(7735)は8.83%安の1万1,770円、信越化学工業(4063)は1.33%安の5,804円である(いずれも10月22日の終値)。日経平均は1,713円40銭安の6万2,907円84銭で引けた。来週、この4社が相次いで決算を出す。本稿は過去28回の決算で株価がどう反応したかを鏡にして、来週の値動きの幅と向きを見積もる。
来週の決算日程——4社が5営業日に集中する
日程はいずれも各社のIRカレンダーで確認した。信越化学が先陣を切り、アドバンテストが続き、30日に東京エレクトロンとSCREENが同じ日に並ぶ。その前に、きょう22日16時にはディスコが4〜9月期の決算を発表する予定で、来週の4社に先立つ最初の試金石になる。ディスコの結果は本稿の執筆時点では確認していない。
| 発表日 | 銘柄 | 発表時刻 | 10月22日終値 | 前日比 | 10月の高値(終値)からの下落率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10月22日(木) | ディスコ(6146) | 16:00予定 | 51,230円 | −4.37% | — |
| 10月27日(火) | 信越化学工業(4063) | 15:30予定 | 5,804円 | −1.33% | −8.2%(10月6日 6,321円) |
| 10月28日(水) | アドバンテスト(6857) | 15:30予定 | 32,370円 | −6.01% | −22.7%(10月6日 41,850円) |
| 10月30日(金) | 東京エレクトロン(8035) | 時刻の記載なし | 9,450円 | −6.99% | −26.2%(10月6日 12,805円) |
| 10月30日(金) | SCREENホールディングス(7735) | 15:35予定 | 11,770円 | −8.83% | −28.9%(10月9日 16,545円) |
注目すべきは右端の列である。前工程の装置を作る東京エレクトロンとSCREENは、10月の高値から4分の1以上を失った状態で決算を迎える。検査装置のアドバンテストも2割強下げた。一方、ウエハー素材の信越化学は1割も下げていない。同じ「半導体株」でも、決算を迎える位置はまるで違う。
2025年夏と2026年秋——対照表
冒頭の2つの場面と、いまを並べてみる。歴史は繰り返さないが韻を踏む。どこが韻で、どこが違う旋律かを先に整理しておく。
| 論点 | 当時(2025年7〜10月) | 現在(2026年10月) | 同じか違うか |
|---|---|---|---|
| 決算前の株価 | 東京エレクトロンは決算前1カ月で+0.7%とほぼ横ばい。アドバンテストは+25.7%と上昇していた | 4社とも10月の高値から8〜29%下落した位置 | 違う(今回は売られた後) |
| 米国の同業の決算 | — | ラムリサーチは売上高82.2億ドルで会社予想(81億ドル±4億ドル)を上回り、10〜12月期も86億ドル±4億ドルと示したが、時間外取引では7.4%安 | 違う(好決算でも売られる地合い) |
| 反応の大きさ | 東京エレクトロン−17.83%、アドバンテスト+21.57%(決算をまたぐ2営業日) | 過去28回のうち16回が±5%を超えた | 同じ(大きく動く前提は変わらない) |
| 材料の中身 | 東京エレクトロンは先端ロジック顧客の投資見直しと中国の成熟品投資の縮小を理由に下方修正 | ラムリサーチの売上高に占める中国比率は35% | 韻を踏む(顧客の投資計画と中国が焦点) |
| 売買単位の金額 | 東京エレクトロンの100株は約224万円(2025年8月1日終値) | 株式分割後の100株は94万5,000円 | 違う(個人の参加しやすさ) |
当時、その後に起きたこと——28回の決算反応
次の図は、4社が直近に出した決算(アドバンテスト6回、東京エレクトロン8回、信越化学7回、SCREEN7回)について、決算発表日の前日終値から発表翌営業日の終値までの騰落率を並べたものだ。発表が取引時間中か引け後かは社や時期によって異なるため、どちらでも反応を取りこぼさないよう2営業日で測った。
決算をまたぐ2営業日の騰落率(4社・直近28回)
読み方:棒1本が1回の決算。発表日の前日終値から発表翌営業日の終値までの騰落率で、濃い棒は±5%を超えた回。28回中16回が5%を超えて動き、上昇は13回だった。出所:Yahoo Financeの日足終値(分割調整済み)から本誌計算、決算日は各社IRカレンダー。
図から読み取れることは三つある。第一に、動きが大きい。28回のうち16回、率にして57%が5%を超えて動いた。第二に、向きは銘柄で偏っている。アドバンテストは6回中4回、東京エレクトロンは8回中5回が上昇したが、信越化学とSCREENはそれぞれ7回中2回しか上げていない。第三に、極端な一回が平均を引っ張る。SCREENの2026年7月(−26.20%)、アドバンテストの2025年10月(+21.57%)、東京エレクトロンの2025年7月(−17.83%)である。
当時の「その後」も確認しておく。東京エレクトロンは2025年8月1日の終値(分割後換算で4,481円)から、きょうの9,450円まで2.1倍になった。ストップ安の日に投げた投資家は、その後の上昇を取り逃がしたことになる。アドバンテストもストップ高の終値2万2,120円から、きょうの3万2,370円まで46%上げた。決算の一日の反応が、その後の数カ月の方向を決めたわけではなかった。この点はすでにキオクシアとアドバンテストの売られすぎを7月の底と比べた記事でも触れたが、本稿は決算当日の値幅に絞って見ている。
歴史の頻度から見た確率——本誌の試算
過去の反応の頻度を、そのまま来週の確率の目安に置き換えたのが次の表である。オプション市場から逆算した予想変動率ではない。日本の個別株オプションは取引が薄く、個人投資家が見られる形で公表された数値もないため、ここでは過去の実績の頻度で代用した。100株を持つ場合の金額は、平均的な値幅をきょうの終値に当てはめたものだ。
| 銘柄 | 対象回数 | 上昇した回数 | ±5%超の回数 | 平均の値幅(絶対値) | 100株あたりの平均的な値幅 |
|---|---|---|---|---|---|
| アドバンテスト | 6回 | 4回(67%) | 3回(50%) | 7.05% | 約22.8万円 |
| 東京エレクトロン | 8回 | 5回(63%) | 4回(50%) | 5.64% | 約5.3万円 |
| 信越化学工業 | 7回 | 2回(29%) | 4回(57%) | 7.46% | 約4.3万円 |
| SCREEN HD | 7回 | 2回(29%) | 5回(71%) | 9.51% | 約11.2万円 |
| 4社合計 | 28回 | 13回(46%) | 16回(57%) | — | — |
この表を確率として読む。来週、4社のどれかが決算をまたいで5%を超えて動く確率は、過去の頻度からすれば1社あたり5〜7割だ。4社のうち少なくとも1社が5%超動く可能性は、各社が独立に動くと仮定すれば9割を超える。ただし半導体株は同じ材料で一緒に動きやすく、独立の仮定は甘い。実際には「4社がそろって大きく動くか、そろって静かか」に寄る分、この9割は割り引いて見るべきだ。
「今回は違う」論を検証する——売られた後なら安心か
決算前に大きく売られた銘柄は、悪材料が織り込み済みで、決算後は上げやすい——相場でよく聞く理屈である。今回の4社のうち3社がまさにこの位置にいる。では歴史はこの理屈を支持するか。
過去の28回から、決算前1カ月(20営業日)の株価データがそろわない東京エレクトロンの2024年11月を除いた27回で調べた。決算前1カ月に株価が下げていた9回のうち、決算をまたいで上げたのは3回だけだった。上げていた18回では10回が上昇している。少なくともこの4社の直近の歴史では、「売られた後だから安心」という理屈は成り立っていない。むしろ決算前の勢いがそのまま続く例のほうが多かった。アドバンテストの2025年10月は、決算前1カ月で25.7%上げたうえでのストップ高である。
公平のために言えば、9回という標本は小さく、偶然の偏りを否定できない。下げていた9回のうち上昇した3回(アドバンテスト2026年7月の+9.51%、東京エレクトロン2026年7月の+11.00%、信越化学2025年4月の+9.94%)は、どれも上げ幅が大きかった。売られた後の決算は、外れれば一段安、当たれば大きな戻しという、振れの大きい賭けになりやすい。これが今回の局面に最も近い歴史の姿である。
今回固有の違いもある。きのう決算を出した米ラムリサーチは、売上高82億2,000万ドル、1株利益2ドル20セント(調整後)と自らの見通しを上回り、10〜12月期の売上高も86億ドル±4億ドルと示した。それでも時間外取引では、通常取引の終値260.81ドルから241.48ドル(米東部時間21日19時59分)まで7.4%下げ、東京の前工程装置株にも売りが広がった。好決算というだけでは足りず、市場はその先の受注や顧客の投資計画を問うている。2025年7月の東京エレクトロンを沈めたのも、足元の数字ではなく先行きの見通しだった。この点は韻を踏んでいる。
歴史が示す3つの教訓
教訓1:値幅は「大きい」が初期設定である。4社の決算は半分以上の確率で5%を超えて動いた。100株の金額に直すと、アドバンテストなら平均で約22.8万円の振れになる。決算をまたいで持つかどうかは、方向の予想より先に、この振れに耐えられる建て玉かどうかで決めるべきだ。
教訓2:銘柄ごとの癖は残る。検査装置のアドバンテストと前工程の東京エレクトロンは上昇が多く、素材の信越化学と洗浄装置のSCREENは下落が多かった。理由を断定できる材料は見つからなかった。SCREENは直近7回のうち5回で5%を超えて動き、そのうち3回が下落だった。癖が続くかどうかは、各社が示す下期の見通しで決まる。
教訓3:一日の反応は、その後の数カ月を決めない。ストップ安の東京エレクトロンはその後2.1倍、ストップ高のアドバンテストもその後46%上げた。決算の翌日に慌てて動くより、示された見通しを数字で確かめてから判断しても、取り逃がすものは多くなかった。
本誌の見立てと、今回固有の監視点
過去の頻度に、今回の地合い(ラムリサーチが好決算でも売られたこと、3社が高値から2割以上下げた位置にあること)を加味した本誌の見立ては次のとおりだ。決算をまたぐ2営業日で上昇する確率は、アドバンテスト55%、東京エレクトロン50%、信越化学35%、SCREEN35%とみる。過去の頻度より上昇の確率を一段低めにしたのは、売られた後の決算で上げた例が9回中3回にとどまるためである。±5%を超えて動く確率は、過去の頻度どおりアドバンテストと東京エレクトロンが5割、信越化学が6割弱、SCREENが7割とみる。これは本誌の主観を含む試算であり、売買の推奨ではない。
見立てを覆す条件も書いておく。きょう16時のディスコが市場の想定を上回る見通しを示し、あすの東京で装置株が買い戻されるなら、地合いの評価を改めて上昇確率を引き上げる。逆に、来週27日の信越化学の決算でウエハーの需要に慎重な見方が出れば、28日のアドバンテスト、30日の東京エレクトロンとSCREENへ売りが連鎖する筋書きの確率が上がる。直近の米テック決算の動きは米テック5社の決算番付、けさの東京の寄り付きは寄り付き1時間のまとめにまとめている。
- 10月22日16時:ディスコの4〜9月期決算。来週4社の最初の試金石
- 10月27日15時30分:信越化学の4〜9月期決算。ウエハー需要の見方
- 10月28日15時30分:アドバンテストの4〜9月期決算。テスター需要と通期見通し
- 10月30日:東京エレクトロン(時刻未定)とSCREEN(15時35分)。前工程装置の受注と中国向けの比率
主な参照
- アドバンテストのIRカレンダー(2026年度第2四半期決算は10月28日15時30分)/アドバンテスト
- 東京エレクトロンのIRカレンダー(2027年3月期第2四半期決算は10月30日予定)と過去の決算発表日/東京エレクトロン
- 信越化学工業のIRカレンダー(10月27日15時30分)/信越化学工業
- SCREENホールディングスのIRカレンダー(10月30日15時35分)/SCREENホールディングス
- ディスコのIRカレンダー(10月22日16時)/ディスコ
- ラムリサーチの2026年9月期(7〜9月)決算と10〜12月期見通し/米証券取引委員会(ラムリサーチ提出資料)
- 東京エレクトロンの2025年8月1日の急落と下方修正の内容/PayPay証券
- アドバンテストの2025年10月29日のストップ高と上方修正の内容/PayPay証券
- 10月22日の終値(日経平均、各銘柄)/株探
- ラムリサーチ株の通常取引の終値と時間外の値段/Yahoo Finance(LRCX)
- 過去の日足終値(分割調整済み)/Yahoo Finance
データ基準日:2026年10月22日の東京市場の終値(15時30分)。決算発表日は各社のIRカレンダー(同日閲覧)にもとづき、変更される場合がある。過去の反応は、決算発表日の前日終値から発表翌営業日の終値までの騰落率で、Yahoo Financeの分割調整済み日足から本誌が計算した。東京エレクトロンの過去の株価は9月29日付の1対5の株式分割を調整した値である。ラムリサーチ株の時間外の値段はYahoo Financeの5分足の最終値(米東部時間21日19時59分)で、取引時間外の数値であり終値ではない。ディスコの決算は本稿の執筆時点で確認していない。確率は過去の頻度に本誌の判断を加えた試算であり、オプション市場から算出した値ではなく、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。アイキャッチ写真:Windell Oskay(Flickr、CC BY 2.0)。













