10月20日火曜、米東部時間の午後4時01分。カリフォルニア州ロスガトスに本社を置くネットフリックス(NFLX)が、7〜9月期の株主向け書簡を米証券取引委員会に提出した。1株利益は0.87ドルで、LSEG集計の市場予想0.82ドルを上回った。それでも株価は時間外取引で5.85%安の64.67ドルまで沈み、過去1年の最安値を下回った。売られたのは過去の数字ではなく、次の四半期の見通しと、広告事業の約束だった。
この日の通常取引の終値は68.69ドル、前日比1.66%安である。決算前から買い手は慎重だった。そして書簡が公開されてからの2時間足らずで、株価はさらに4ドル落ちた。
午後4時01分、書簡は「予想どおり」から始まった
書簡の冒頭に並んだ数字は、悪くなかった。売上高は128億7,400万ドルで前年同期比11.8%増。会社が7月に示していた見通しどおりの着地だった。営業利益は44億5,900万ドルで37%増え、営業利益率は34.6%。前年同期の28.2%からも、会社自身の見通し33.2%からも上振れた。純利益は36億6,400万ドルで44%増である。
ただし会社は、利益率の上振れが「主に費用計上のタイミング」によるものだと自ら書き添えた。7〜9月期に出るはずだった費用の一部が、10〜12月期にずれるという意味である。上振れた利益の一部は、次の四半期から前借りした形になる。
そして、問題の段落が続いた。10〜12月期の見通しは、売上高134億4,200万ドル、営業利益率26.0%、1株利益0.67ドル。LSEG集計の市場予想は1株利益0.73ドル、純利益30億7,000万ドルだった。会社見通しの純利益は27億8,700万ドルで、予想に約2億8,000万ドル届かない。会社は、この利益率に人員削減の費用として約1.2ポイント分が含まれていると説明している。
| 項目 | 7〜9月期の実績 | 10〜12月期の会社見通し | 比較の相手 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 128億7,400万ドル(+11.8%) | 134億4,200万ドル(+11.5%) | 7〜9月期は会社見通しどおり |
| 営業利益率 | 34.6% | 26.0%(人員削減費用 約1.2ポイントを含む) | 7〜9月期の会社見通しは33.2% |
| 1株利益 | 0.87ドル | 0.67ドル | 市場予想は0.82ドル(7〜9月期)、0.73ドル(10〜12月期) |
| 2026年の広告収入 | 約27億ドル(7月時点の見通しは約30億ドル) | 会社見通しの引き下げ | |
| 2026年の売上高 | 511億ドル(7月時点は510億〜514億ドル) | 旧レンジの中央値を0.2%下回る | |
| 2026年のフリーキャッシュフロー | 約120億ドル(7月時点は約125億ドル) | 10〜12月期の不動産取引が主因 | |
もう1つの段落が、売りに拍車をかけた。2026年の広告収入の見通しが、約30億ドルから約27億ドルへ下がったのである。7月の書簡で会社は、これを前年からの「おおよそ倍増」と表現していた。今回の書簡は、一部の広告商品の機能の展開が「想定よりやや遅れた」ことを理由に挙げた。一方で、会員からの収入は会社の想定を上回ったという。つまり広告の不足を会員収入が埋めた格好で、通年の売上高は511億ドルとほぼ据え置きになった。
巻き戻し——決算前の1週間に起きたこと
市場がこの日の書簡を神経質に読んだのには、理由がある。決算の6日前から、ネットフリックスの社内は大きく揺れていた。
決算までの7日間(日付は米国時間)
読み方:決算の6日前から、人員削減とコンテンツ部門トップ2人の交代が続いた。出所:ネットフリックスの発表と株主向け書簡、AP通信、ロイター、What’s on Netflix。株価はGoogle Financeの時間外の気配値。
10月14日水曜、共同最高経営責任者(CEO)のテッド・サランドスとグレッグ・ピーターズが社員に宛てたメモで、約1,000人の人員削減が伝えられた。全社員約1万6,000人の約6%にあたる。翌15日には、2023年1月からコンテンツ部門を率いてきた最高コンテンツ責任者(CCO)のベラ・バジャリアの退任と、後任にピーター・ライスを起用する人事が発表された。ライスはウォルト・ディズニー・テレビジョンの会長を務めた人物で、その前はフォックスにいた。10月26日から、ドラマ、ノンフィクション、映画、ライブイベントを世界で統括する。
週明けの19日には、2024年4月から映画部門を率いてきたダン・リンの退任も確認された。後任が決まるまで、映画もライスが見る。決算の前日に、コンテンツの最高責任者と映画の責任者が2人とも入れ替わったことになる。
さらにさかのぼれば、株価の下げはこの1週間よりずっと長い。2025年10月21日の終値124.14ドルから、2026年10月20日の終値68.69ドルまでで約45%安。年初来でも26.7%安である。今年前半には、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収をめぐる争奪戦があり、ネットフリックスは2月に提案を取り下げた。報道によれば、勝ったのはエリソン家が率いるスカイダンス・パラマウント陣営だった。取り下げが伝わった2月27日、株価は13.77%上げている。買収をあきらめたことが歓迎された日を除けば、この1年の株価はほぼ一方向だった。
サランドスの「もっとうまくやれた」
決算発表から1時間44分後の米太平洋時間午後1時45分、日本時間では21日午前5時45分に、恒例の決算説明動画が始まった。画面に並んだのはピーターズ、サランドス、最高財務責任者のスペンサー・ニューマン、そして財務部門のスペンサー・ワンである。
ロイター通信によれば、サランドスはこう述べた。「もっとうまくやれたことは分かっている」。そして「米国では、より良い実行が必要だ」とも語った。ただ、戦略の根本的な転換は必要ないという立場は崩さなかった。人事の刷新は、戦略ではなく実行の問題への手当てだというわけである。
会社側には、言い分を裏づける材料もあった。7〜9月期の自社株買いは6,390万株、48億ドルで、四半期として過去最大だった。買い付け枠は223億ドル残っている。希薄化後の株式数は41億9,500万株で、1年前の43億4,000万株から3%あまり減った。同じ四半期のフリーキャッシュフローは28億8,400万ドルである。稼いだ現金を上回る額で自社株を買ったことになる。解約率は前年より改善し、会社の想定よりも良かったと書簡は記している。
一方で、慎重派が指摘する数字もはっきりしている。売上高の伸び11.8%は、4〜6月期の13.4%から鈍った。ロイターは、ここ3年近くで最も遅い伸びだと伝えた。そして10〜12月期の見通しは11.5%増で、減速が続くことを会社自身が示した形になる。
同じ頃、東京では
書簡には、日本の読者が目を留める一文があった。日本発のドラマ「プラスティック・ビューティー」が1,200万回の視聴を集め、「日本で最も視聴されたシリーズになる勢いだ」というのである。地域別の売上高を見ると、日本を含むアジア太平洋は15億3,700万ドルで12%増。伸び率では中南米の17%増に次ぐ。米国・カナダは56億2,800万ドルで11%増、欧州・中東・アフリカは41億700万ドルで11%増だった。
サランドスが「より良い実行」を求めたのは、米国についてだった。売上高の4割強を占める米国・カナダで伸びが鈍れば、アジアがいくら伸びても全体は持ち上がりにくい。日本の作品が記録を作ったことは、この日の株価を支える材料にはならなかった。
数字が出た瞬間——4四半期続けて売られた株
決算前、オプション市場は大きな値動きを見込んでいた。CNBCは20日正午(米東部時間)の時点で、オプション価格が決算後に上下約9%の値動きを織り込んでいると伝えた。2022年7〜9月期の決算以来の大きさだという。時間外の5.85%安は、その幅の内側に収まっている。
決算翌日の株価騰落率(%)
読み方:直近4回の決算は、いずれも翌日に下げた。2026年10月は20日の時間外取引の気配値(米東部時間18時48分)で、21日の終値ではない。出所:stockanalysis.comの日足終値から本誌計算、時間外はGoogle Finance。
過去の決算を並べると、この日の下げは繰り返しの一部に見えてくる。2025年10月の決算翌日は10.07%安、2026年1月は2.18%安、4月は9.72%安、7月は7.26%安。4四半期続けて、決算の翌日に下げている。今回の時間外の下げが21日の通常取引でも残れば、5四半期連続になる。
時間外の64.67ドルは、過去52週の取引時間中の安値65.08ドル(7月17日)を下回る水準である。終値ベースの52週安値は10月2日の67.06ドルだった。21日の通常取引でこの水準を下回って引ければ、ほぼ1年ぶりの安値更新になる。
エピローグ——ライスの初出社と、残された問い
次の場面は、すでに日付が決まっている。10月26日、ライスが最高コンテンツ責任者として着任する。映画部門の新しい責任者の名前は、まだ発表されていない。11月には米プロフットボールNFLの感謝祭前夜の試合が、12月25日にはクリスマスの2試合が配信される。ボクシングのフューリー対ジョシュアもこの四半期に組まれている。
広告の物語は、来年に持ち越された。広告付きプランは2027年に15カ国で新たに始まり、その第1弾は3月、欧州・中東・アフリカの9カ国とコロンビア、ペルー、ニュージーランドになる。今年27億ドルにとどまる広告収入が、ここからどこまで積み上がるか。その最初の答えは、2027年1月中旬と見込まれる次の決算で示される。
残された問いは単純だ。人を入れ替え、1,000人を減らし、過去最大の自社株買いを続ける会社が、売上高の伸びを再び上向かせられるか。20日の時間外取引は、少なくとも現時点ではその問いに懐疑的な答えを出した。決算前の論点の整理は前日のプレビュー記事に、7月の決算で52週安値を付けた経緯は4〜6月期決算の記事にまとめている。
主な参照
- 2026年7〜9月期の株主向け書簡(実績、10〜12月期と通期の見通し、広告収入、自社株買い、地域別売上高、日本の作品の記述)/米証券取引委員会(2026年10月20日提出)
- 2026年4〜6月期の株主向け書簡(7月時点の見通し)/米証券取引委員会(2026年7月16日提出)
- ピーター・ライスの最高コンテンツ責任者就任/ネットフリックス
- 市場予想(LSEG)、サランドス共同CEOの発言、売上高の伸びの評価、時間外の株価/ロイター(MarketScreener掲載、2026年10月20日)
- 人員削減と経営陣の交代、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収提案の取り下げ/AP通信(2026年10月20日)、What’s on Netflix
- オプション市場が織り込んだ値動き/CNBC(2026年10月20日)
- 株価の日足と過去の決算翌日の騰落率/stockanalysis.com(本誌計算)、時間外の株価/Google Finance
データ基準日:2026年10月20日の米国市場の終値(68.69ドル)と、同日米東部時間18時48分(日本時間21日7時48分)時点の時間外取引の気配値(64.67ドル)。時間外の値は取引時間中の気配であり終値ではなく、21日の通常取引で大きく変わる可能性がある。過去の決算翌日の騰落率は、決算発表の前日終値と翌日終値から本誌が計算した。株価は2025年の株式分割を反映した値である。オプション市場が織り込んだ値動きは報道時点の推計で、算出の方法や満期によって差がある。約1,000人という人員削減の規模は報道によるもので、会社の書簡は人数を示していない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















