【ニューヨーク=本紙】半導体大手の米エヌビディア(NASDAQ:NVDA)は20日(米国時間)の取引終了後、2027会計年度第1四半期(2026年2〜4月期)の決算を発表する。時価総額5.4兆ドルを超える同社の決算は、世界のAI投資サイクルの持続性を占う最大の指標と位置付けられており、市場関係者の注目度は極めて高い。
19日のニューヨーク市場でエヌビディア株は前日比約1.2%安の220.76ドル前後で推移。5月14日に付けた史上最高値236.54ドルからは約6.7%下落している。半導体関連株を組み入れたiShares Semiconductor ETF(SOXX)も3営業日連続で下落しており、決算を前にした警戒感が業界全体に広がっている。
過去5回の決算後株価は4回下落
注目すべきは、エヌビディアが過去6四半期連続で売上高市場予想を3〜4%上回ったにもかかわらず、直近5回の決算のうち4回で翌日の株価が下落している点だ。2026年2月の決算では予想を3.4%上回ったが株価は5.5%下落、2025年11月も予想を3.9%上回りながら3.2%安となった。
機関投資家の間では「想定内の好決算では買われない」との見方が定着しつつあり、ガイダンス(業績見通し)や経営陣のコメント内容が株価を左右する構図が鮮明になっている。
市場予想:売上高788億ドル、EPS1.77ドル
ウォール街のコンセンサス予想は売上高約788億ドル、非GAAPベースの1株当たり利益(EPS)1.77ドル。同社自身のガイダンス中央値780億ドルを約4億ドル上回る水準だ。データセンター部門の売上高は約730億ドルと予想されており、前年同期の538億ドル想定から大幅に拡大。全社売上高に占める比率は9割を超える見通しである。
前年同期比では売上高で約80%増、EPSで120%超の伸びが見込まれている。
ただし、株価により大きな影響を与えるのは次期(第2四半期)のガイダンスとみられる。市場は既に次期売上高約860億ドルを織り込んでおり、ホイスパー・ナンバー(非公式な楽観予想)は900億ドル近辺。870億ドル超なら強気シナリオの追認、850億ドル割れなら減速懸念の台頭となる公算が大きい。
焦点となる5つの論点
(1)粗利益率の維持
前四半期の非GAAPベース粗利益率は75.2%。最新アーキテクチャ「Blackwell(ブラックウェル)」の販売構成比拡大にもかかわらず高水準を維持した。会社側ガイダンスは引き続き75%前後を示唆しているが、73%を割り込めば価格決定力の低下が意識され、売り材料となる可能性が高い。
(2)BlackwellとRubinの世代交代
データセンター向け演算需要の約7割を既にBlackwellが占めており、前世代「Hopper(ホッパー)」からの移行はほぼ完了した。市場の関心は次世代品「GB300 Ultra」の量産出荷時期と、2026年下半期の立ち上げが予定される新アーキテクチャ「Rubin(ルービン)」の進捗にシフトしている。世代交代に伴う発注の一時停止が観測されれば、向こう2四半期の業績に影響を及ぼす可能性がある。
(3)中国向け輸出の行方
最大の不透明要因が中国事業である。2025年12月、トランプ政権はAIアクセラレータ「H200」の対中輸出を条件付きで承認。エヌビディアは中国売上高の15%を米財務省に納付する「マネージド・アクセス」方式の下で出荷を行う枠組みとなった(当初報道では25%、最終合意は15%)。
しかし承認から半年が経過した現在も、H200の対中売上高はほぼ計上されていない。米国側の輸出ライセンス審査の遅れ、中国顧客の様子見、華為技術(ファーウェイ)製品との競合などが背景にある。市場は現時点で中国売上高をほぼゼロと想定しており、ジェンスン・ファンCEOが具体的な出荷時期や金額に言及すればポジティブ・サプライズとなり得る。
(4)ハイパースケーラーの設備投資動向
米クラウド大手4社の2026年設備投資額は合計7000億ドル超とガイダンスが示されており、その大部分がエヌビディア、ブロードコム(カスタムシリコン)、TSMC(ファウンドリー)に流入する見通し。ただしアマゾン・ドット・コムの自社開発AI半導体「Trainium(トレイニアム)」の採用が一部開発者の間で広がりつつあり、グーグルもブラックストーンと提携した50億ドル規模のクラウド案件を発表するなど、顧客側の調達多様化の動きが進む。顧客集中度に関する経営陣のコメントが注視される。
(5)供給制約の解消度合い
TSMCの生産能力、先端パッケージング技術「CoWoS」の供給状況、フラッグシップGPUの納期動向についての言及も重要な材料となる。
著名ヘッジファンドが空売り、インサイダー売却も継続
弱気材料も増えている。元OpenAI研究者のレオポルド・アッシェンブレナー氏が設立したヘッジファンド「Situational Awareness(シチュエーショナル・アウェアネス)」が、エヌビディア株のプットオプション約15億6000万ドル相当、半導体ETF(SMH)関連のベアポジション20億ドル超を保有していることが規制当局への届出で明らかになった。ブロードコムやインテルへの空売りポジションも併せ持つ。AIの能力拡張を強気に論じてきた人物の運営するファンドが、最もその恩恵を受けるはずのエヌビディアを空売りしている点で市場の話題を呼んでいる。
加えて、エヌビディアの役員・幹部による株式売却も継続。過去3カ月間で約1億6370万ドル相当が売却され、買い付けは記録されていない。多くは事前設定の10b5-1取引計画に基づくものとみられるが、史上最高値圏での売却継続は弱気派の論拠の一つとなっている。
アナリストは強気維持、目標株価は最高380ドル
一方、ウォール街のアナリストは強気姿勢を維持している。ウォルフ・リサーチは今週、AIインフラ関連の最優先銘柄としてエヌビディアを再指名。一部証券会社は目標株価を300ドルに引き上げた。12カ月平均目標株価は約273ドル、最高380ドル、最低140ドルと、見方が大きく分かれていることがうかがえる。
ファンダメンタルズ面では、売上総利益率71%、営業利益率60%、自己資本利益率(ROE)100%超という卓越した収益性に加え、ソフトウェア基盤「CUDA(クーダ)」による参入障壁が依然として競合の追随を阻んでいる。エヌビディアは2030年までに年間3兆〜4兆ドル規模のAIインフラ投資が発生すると予測しており、カスタムシリコンへのシェア流出を考慮しても市場規模は十分に大きい。
オプション市場は6〜10%の変動を織り込み
オプション市場は決算後の株価変動率を上下6〜10%と織り込んでいる。30日インプライド・ボラティリティは40%台半ばと実現ボラティリティを大きく上回っており、決算発表直後の「IVクラッシュ(ボラティリティ急低下)」によりプレーンなオプション買いポジションは方向感を当てても損失となるリスクが高い。スプレッドやストラドル(両建て)を活用した戦略に資金が集中している。
注目ポイント
決算発表は20日米国時間午後の市場引け後。電話会議は東部時間午後5時(日本時間21日午前6時)開始予定。
ファン氏の冒頭発言の内容が初動を決めるとの見方が多い。過去の傾向では、BlackwellやRubinに言及した場合は株価が堅調に推移し、地政学や中国情勢から切り出した場合は売られやすかった。次期売上高ガイダンス、粗利益率見通し、中国売上高の具体的金額への言及——この3点を市場は注視している。
21日の取引で市場が下す判断は、AIインフラ相場が次の局面に進むのか、それともこの3カ月の調整局面が天井形成の始まりだったのかを示すことになる。











