ドル円は22日朝、158円16銭(日本時間7時52分)で取引されている。21日は日銀の氷見野副総裁が国会で「基調的な物価は2%に近づいている」と述べ、共同通信などは日銀が10月29〜30日の会合で物価目標2%の「到達」を判断する方向だと報じた。それでもドル円は158円台を離れない。まず下の1枚を見てほしい。
本記事の結論を先に書く。今後1カ月の基本シナリオは156円40銭〜159円40銭のもみ合いで、確率は50%とみる。日銀が「到達」を判断しても、政策金利の据え置きが報じられている以上、それだけで円高の流れは生まれにくい。分かれ目は23日朝の全国消費者物価指数(CPI)と、30日の日銀の展望リポートが12月の利上げをどこまで示すかである。
ドル円はどこで止まっているのか
ドル円の節目(円)
読み方:青が現在値、橙が本誌が重視する節目、灰色が過去の高値・安値と50日線。現在値は200日線と50日線の間、幅1円弱の帯にある。移動平均はヤフー・ファイナンスの日足終値(10月21日まで)から本誌が計算した概算。
図は日足終値から本誌が計算した移動平均と、直近の高値・安値を並べたものである。10月の終値はすべて200日移動平均(158円56銭)を下回っており、最も高かった20日の終値も158円52銭にとどまった。上には100日線の159円43銭、さらに9月2日の高値160円38銭が控える。下は50日線の157円68銭、9月30日の安値156円40銭が支えになっている。
つまりドル円は、200日線の少し下で上値を抑えられ、50日線の少し上で下値を支えられている。幅にして1円に満たない。値動きが細った相場は、材料が出たときに一方向へ走りやすい。その材料が、これからの9日間に集中している。前日の値動きと撤退線はこちらの記事で扱った。
日銀の「2%到達」判断は円高材料になるか
報道を整理する。共同通信は21日、日銀が10月会合で物価上昇率2%の到達を判断する見通しで、政策金利は1.25%程度で据え置く公算が大きいと伝えた。産経新聞も同じ趣旨を報じている。日銀は9月18日に政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げたばかりである。植田総裁は16日、基調的な物価上昇率が2%に「かなり近づいている」と述べていた。
21日には氷見野副総裁が衆議院財務金融委員会で、中長期の予想物価上昇率の上昇を踏まえると基調物価は2%に近づいていると答弁した。利上げ後も緩和的な金融環境は維持されているとし、緩和の調整が遅れれば景気の悪化につながりうるとの考えも示したと報じられた。追加利上げに前向きな発言と読める。それでも21日の円相場の反応は薄かった。
理由は単純である。「到達」の判断は、すでに相場に織り込まれつつある。市場が知りたいのは、到達を判断したあと、次の利上げがいつになるかだ。日銀の前田元理事は12月に1.5%、来春に1.75%への利上げを予想するとブルームバーグに語ったと伝えられる。30日の総裁会見で12月の利上げに含みを持たせれば円高、時期をぼかせば円安というのが、本誌の読み方である。
なぜ日米の金利差だけでは決まらないのか
米財務省によると、21日の米10年債利回りは5.13%だった。日本の新発10年国債利回りは同日夕方に2.880%前後と報じられている。差はおよそ2.25ポイントで、ドルを持つ優位はなお大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を0.25ポイント引き上げて3.75〜4.00%とし、次の会合は10月27〜28日である。
金利差が円安を支える一方で、上値には政府の為替介入が立ちはだかる。財務省は7月30日から8月26日までに15兆3,993億円の円買い介入を実施し、1回の公表期間としては過去最大と報じられた。7月31日には日米の協調介入も行われたと、片山財務相が8月3日に認めている。その後の8月27日から9月28日まで、介入はゼロだった。
財務省の円買い介入額(兆円)
読み方:今年の介入は2回の山があり、7〜8月は15兆円を超えた。8月下旬以降は介入が出ていない。出所:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」、時事通信。
介入の直前、ドル円は163円台にあった。7月23日に付けた163円98銭は約39年8カ月ぶりの円安水準である。介入後は155円台まで下げた。いまの158円台は、そこから半分ほど戻った位置にある。三村財務官は16日、「常に金融市場の状況を注視している」と述べたと報じられた。160円台に近づけば、警戒の発言が強まる可能性が高い。介入の駆け引きはこちらの番付で詳しく扱った。
これからの9日間:何がいつ出るのか
これからの9日間(日本時間)
読み方:1週間で日米の会合と米国の重要指標が重なる。ドル円の幅1円弱の膠着は、このどこかで崩れる可能性が高い。出所:日本銀行、米連邦準備制度理事会、米商務省経済分析局、みんかぶFX。日銀の発表時刻は決まっておらず、目安である。
最初の山は23日8時30分の全国CPIである。QUICKの集計では、生鮮食品を除くコア指数の上昇率の予想中央値は前年同月比2.1%(予想の幅は2.0〜2.3%)。8月の1.7%から加速し、2.0%を超えれば昨年12月以来となる。2.3%以上の上振れなら日銀の12月利上げ観測が強まり円高、2.0%以下なら「到達」判断の根拠が揺らぎ円安に振れやすい。
来週は日米の会合が続く。FRBの結果発表は日本時間29日午前3時。同じ29日の21時30分には米国の7〜9月期国内総生産(GDP)速報値と9月の個人消費支出(PCE)物価指数が出る。そして30日に日銀の結果と展望リポート、植田総裁の会見がある。1週間で3つの山を越える日程で、どこかで相場は動く。
今後1カ月のシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 基本:もみ合い | 50% | 156円40銭〜159円40銭 | CPIは予想どおり。日銀は「到達」を判断して据え置き、12月の利上げは明言せず |
| 円安:160円を試す | 25% | 159円40銭〜160円40銭 | CPIが2.0%以下。FRBが12月の利上げを示唆し、米金利が上昇 |
| 円高:155円台へ | 25% | 155円30銭〜156円40銭 | CPIが2.3%以上。総裁会見が12月の利上げに含みを残す |
読み方:円安シナリオの上限を160円40銭としたのは、9月2日の高値160円38銭の少し上で介入警戒が強まるとみるためである。円高シナリオの下限は8月3日の安値155円26銭に合わせた。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認すること | 円高を支持 | 円安を支持 |
|---|---|---|
| 日足の終値 | 50日線157円68銭を割って終える | 200日線158円56銭を上回って終える |
| 全国コアCPI(23日) | 2.3%以上 | 2.0%以下 |
| 日銀会見(30日) | 12月の利上げに含み | 「データ次第」で時期をぼかす |
| FRB(29日未明) | 12月の利上げに慎重 | 12月の利上げを示唆 |
| 当局の発言 | 財務相・財務官の警告が強まる | 沈黙が続く |
注意点も書いておく。指標の発表直後は値が飛びやすく、一時的に節目を抜けてもすぐ戻る「だまし」が多い。判断は日足の終値で行いたい。また会合の週はスプレッド(売値と買値の差)が広がりやすい。レバレッジを抑え、損切りの水準を先に決めておくことが基本になる。本誌の見立ての撤退線は、日足の終値で159円43銭(100日線)を上回った時点とする。そのときは基本シナリオを捨て、円安シナリオに切り替える。
植田総裁の「かなり」という一言の変化はこちらで読み解いた。FX取引の基本は本サイトのFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 金融政策決定会合の日程/日本銀行
- 日銀が2%到達を判断へ(10月21日)/共同通信(ヤフーニュース)
- 氷見野副総裁の国会答弁(10月21日)/みんかぶFX
- 全国CPIの市場予想(QUICK集計)/みんかぶFX
- FOMCの日程と9月の決定/米連邦準備制度理事会
- 米国債利回り(10月21日)/米財務省
- GDP・PCEの公表日程/米商務省経済分析局
- 外国為替平衡操作の実施状況/財務省、介入額の報道/時事通信
- 7月の円安水準と介入の経緯/国際通貨研究所
データ基準日:2026年10月22日(日本時間7時52分)。ドル円158円16銭は取引時間中の気配値で、終値ではない。移動平均(20日158円03銭・50日157円68銭・100日159円43銭・200日158円56銭)はヤフー・ファイナンスの日足終値を基に10月21日の取引までで本誌が計算した概算値で、算出元によって差が出る。米10年債利回り5.13%は米財務省の21日の数値、日本の10年債利回り2.880%は21日夕方の報道値である。日銀の会合内容(2%到達の判断・据え置き)は報道ベースで、日銀は公表していない。介入額は財務省の公表値に基づく報道による。シナリオの確率と撤退線は本誌の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















